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9-5.

 院内のカフェでクールダウンした姉に、エキサイトした理由を聞いてみた。

「ナースだからダメ、病院職員だからダメ、じゃないの。慎重に選んで欲しい

だけなの」

 姉は言う。

 真面目に、真摯(しんし)に、ストレス溜まるきつい仕事に取り組む彼女達を尊敬している。特にナースは勤務時間が不規則で出会いも少ないから、見た事もない素敵な男子が現れたら、興味を持って接近するのは当然だと思う。彼女達に聞かれたから、うちの弟はそんな大したものじゃないよ、って教えてあげたそうだ。

「俺のこと? 何て?」

「家業と美形を差し引いたら、鈍くて、ボケてて、おっぱい星人の、よくいる高校生だよって」

 流石(さすが)実の姉。容赦なしの酷い評価だ。

「『同じくらいの弟がいて、慣れています』まあ、こんな返しはまだ良くてね、『鈍いのが良い! 豊胸手術、行ってきます!』なんて理解が難しい奴もいてさ、『レンタル彼氏、一時間一万円の課金で! 手数料進呈します!』って言われて。一時間一万円か……。悪くないな。なぁんてな! ははははは!」

 ……姉の目に札束が映った気がした。弟を売るなよ。


「玲嗣には彼女を良く見極めて欲しいの」

 あぁ、あれね、と言ったのは、何度も聞かされている台詞。

 和泉家の社会的立場、後継者、会社が持つ莫大な利権、国際的な謀略が云々、利用しようと近付いてくる者がどうのこうの、とか。

「他人へ接近する者には、必ず目的がある。迷惑なことを隠して接近する人も

いるの」

「今現在、そんなことを考えずに二人の女性と付き合っている。玲奈と咲紗を遠ざけないのはなぜ?」

 二股とは中々やるね~、と茶化して姉は言う。

「あの二人は自分の事より玲嗣の事を考えて行動しているから」

 頭上に疑問符を並べた俺を見た姉は、鈍いねぇ、と言うと理由を告げた。

「玲奈は私達に絶対害を与えないし、いずれ玲嗣から離れる。身寄りのない咲紗は私達への帰属意識が強くて忠実。どちらも家族と云う拠り所を求めているから」

 なぜ玲奈が離れる? どこに行く? 咲紗の身寄りがない? どういう事?

 俺の口から質問が溢れ出すと察したか、姉はいずれ本人に訊ねてみなさいと諭す様に告げると半睨みの笑顔になった。

 この表情になると、質問や反論はシャットアウトされて有耶無耶で終わるが、矢張りその通りになった。

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