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9-3.

「術後の定期検査は今日でお仕舞にしましょう」

「はい。お世話になりました」

 主治医から告げられた検査通院終了。

 心軽く廊下を歩く俺と対照的に、付き添う姉はぼやく。

「職場で玲嗣をお披露目、じゃなくて、付き添えなくなるなぁ~」

「そこ、喜ぶところじゃないか?」

「でもね、大変だったんだから。『一緒にいた顔面国宝、誰?』『どうやって知り合ったの?』『紹介して!』『年下彼氏?』って。果ては『どこのマッチングアプリですか?』なんて訊かれてさ」

「何か凄いな、看護師さんって。俺、歳下の高校生だよ」

「年下の彼とは何度も寝た仲なの、って答えたら、盛り上がる盛り上がる。もう、職場の話題攫ってさぁ!」

「それ、寝る前に絵本読んでもらっていた頃の添い寝な」


 退院の際に一通り挨拶したが、姉の職場でもあるから礼を欠くまいと、ICU、入院病棟、それぞれのナースステーションへ検査通院終了の挨拶に回った。

 最初に顔出しした途端にナースネットワークで拡散したらしい。

「あ~、私の彼氏の玲嗣君だぁ♡」

「おぃ、何言ってんだ、私のだ――、快復おめでとう御座いまぁ~す♡」

「看護師長、私、早退します。さぁ、デート行きましょ」

「私が深夜勤の時は、いつでも泊まりに来て下さいね♪」

 腕組んでツーショット撮影されるその隙にポケットへメモ用紙が突っ込まれる。

 規則違反と思えるお誘いがあった様な気もしたが、伺う先々いずれでも同じ事になって、ポケットは膨れ、モバイルは震え続ける。

 まるでピラニアの池に放り込まれた気分。


 寛容に見守っていた姉だったが、仕事を放り出して押し掛ける看護師と女子職員多数に取り囲まれた俺を見るや、こめかみに筋立てて、今にも噛み付きそうな恐ろしい視線で威嚇すると、手を掴んでその場から脱出した。

 騒ぎの元凶は自分だと分かっているのか、この姉は?


 俺のポケットからのカサカサ音に気付いた姉が中身を全部取り出す。

 そこにはモバイルのアドレス、電話番号を始めとしたあらゆる連絡手段の数々、そしてメッセージが書き添えられていた。

「なんでハートが三つも付いているのよ、これ!」「貴方専用ナースコールはこちら♡って何よ!?」「青少年健全育成条例違反でしょ!」「けしからん!」

 言うまでもなく姉が全部没収すると、言われるまま差し出したモバイルのメッセージ全件着信拒否&消去実行も当然に。

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