8-9.
「咲紗はあの時、どっちを守ろうとしたのよ?」
炒め物を混ぜる手を休めない咲紗。
何の事?
返すのは合いの手程度の生返事。
「崖崩れに巻き込まれた時だよ」
そんな残酷な事聞くんだ。
また生返事をすると、手元から視線を外さないまま調味料を振りかけて軽く混ぜ、味見をする。
「よし、出来たよ」
お皿を並べると、フライパンを手にして咲紗の作った色鮮やかな野菜炒めを装う。ちょっと味見しただけでしゃきしゃきした歯ごたえも、味付けもプロ並みだと脱帽。
左手は何とか動かせるが、軽い物も持てず、細かい動きも出来ない咲紗。左脚には力が入らないから右脚だけで長時間立ち続けるのは苦しい筈。
「咲紗、後は私がやる。玲嗣を呼んできて」
「玲嗣さん、夕食です。下りてきて下さい」
二人で耳を欹てるが返事どころか物音ひとつしない。
「さっきの答え、教えてあげる」
咲紗が小さな溜息に次いで答えを告げた。
「白鳥さんを守ろうと、抱き付いた玲嗣さんを守ろうと、しただけ」
「何、そのはっきりしない答えは? 本当はどうなの?」
玲嗣が下りて来ないのを幸いに、際どい質疑応答を続けようとしている。
それは、咲紗の中での玲嗣の位置付けを知りたいから。
咲紗の答えは私の考えと同じ筈。
「家族を守ろうとするのは当然でしょ?」
外した答えが返ってきた。でも肝心の所がはっきりしないのでイラッとする。
「仮に私が和泉家の家族だとして、白鳥の代わりに私が」
「玲嗣さん、夕食ですよ!」
「って、まだ質問終わってないよ!」
「大体分かるんだよ、玲奈の考える事は」
「あぁ、腹立たしいな! 八つ当たりしながら玲嗣を起こしてくる!」
「ちょっと、当たり散らしたら駄目だよ、止めなさいって!」
咲紗の声援に送られ玲嗣の部屋に入る。
机に伏して寝ていた。まだ無理出来ないらしい。
このまま寝かせてあげたいが、いっぱい食べて体力付けて快復させないと。
「ぅ うっわあぁ~」
寝顔ですら顔面国宝過ぎる。ちょっかい掛けたいけど起こしに掛かる。
「玲嗣、晩御飯出来たよ。……ほら、起きて」chu!
呼び掛けると頬目掛け、わざと音のするキス。
気付いたか、のろのろと上体を起こし、寝惚け顔で私を見る。
「ん? ……かあさん?」
「仕方ないなぁ。ほぃ、半裸。ほぉら、お母さんのおっぱいだよ~。こっちも美味しいよ~。ミルク出ないけどぉ」
秒で上半身裸になった。窒息するまで胸を押し付ける目覚まし発動。




