8-5.
「あ!」「?」
俺に介添えされて自室に入った咲紗は、何かに気付いて声を上げた。
指差すベッドに並ぶ枕がふたつ。咲紗のと俺の。
「心ばかりの物を置いておきやした。お励み下せぇ! では、御免なすって
グフフッ」
「……」
玲奈、随分とキャラが変質したな。何を置いたって?
訝る視線の先、ヘッドボードにふたつの小さな紙袋。
座らせた咲紗と中身を改めた。
「う!」
二人して同じ叫びが漏れた。手にしたのはコンドーム。
「咲紗、これ」
「そんなの必要ありません! 玲奈~!」
咲紗が怒った。まずい。
「咲紗、傷に悪いから。落ち着いて」
「……、まったく、あんにゃろめ」
別の袋から物を手した。
「これ、紙パンツ? おむつ? 赤ちゃんプレイで、お楽しみ、しろってか?」
「ち、違います……。いや、違わなくて……。あれ? 随分マニアックなのご存知ですね」
「うっ」
「それはですね、その……、えっと、私が――、私が」
言い淀む咲紗は頬を赤らめ俯く。なるほど、確かにそれは言い辛いだろうな。
「咲紗、誰にも絶対言わないって約束するから安心して」
「? ――はい」
「咲紗が穿いて赤ちゃんプレイでバブ~って」
「そんな訳ないでしょう!」
「えっ おかしいな……」
お怒りモードから復帰した咲紗の声が急に小さくなった。
「それは――あの……。トイレ、間に合わないと、漏れちゃう――――」
それはデリケートな問題だった。
「ちゃんと答えて。排尿障害があるの?」
「ないです。ただ、一人でトイレに向かうのは時間が掛かりますので、あれば
安心――」
「これから毎晩隣に寝るよ。トイレに行きたくなったら起こして。どうせ俺寝相悪いし」
「いえ、そんな、玲嗣さんのご負担に」
「風呂で見ているんだからトイレくらい見られたって恥ず」
「入浴と排泄は全然違うんです。崖と一緒にデリカシーも崩れましたか?」
咲紗はぷいっと顔を背けた。耳が少し赤い。
そんな咲紗を見ながら思う。
俺、デリカシー、ないの?




