7-4.
「狭山曹長。現場へ進出し不明となった生徒を捜索、発見次第状態確認と応急処置を行え」
「現場進出、生徒の捜索、状態確認及び応急処置の実施、了解」
「空野准尉。生徒達を保護しながら出発地まで戻れ。状況急変時は臨機の対応を
行え」
「実施します」
「各自衛星携帯デバイスで本校非常連絡網に接続。私はここに残り関係者へ報告後、通信統制と救助支援を行う」
気が付けば集合していて大きな声で指示命令に復唱している教官達。
その表情は学校とはまるで違う。
学校での楽しいおじさん達と思っていたが、互いを階級で呼ぶ険しい表情のこの人達からは、お父さんと同じ職業軍人の雰囲気が強く漂う。
「わあぁぁ!」
難を逃れたと思っていた後続グループから悲鳴が上がる。
足元を濡らす程度だった山腹からの濁り水が、大量に吹き出して遊歩道を遮っている。駆け寄った空野助教が緩衝材にしたリュックサックは噴き出す泥水で飛ばされた。向けた背を盾にして噴流を往なし退路を確保すれば、脱出した男子生徒の数人もリュックを盾に二重三重の壁になり、残りの男子は女子の手を引き、肩を押し、脱出を急ぐ。
遊園地プールのアトラクションどころではない水量と水圧に身体を張り、飛ばされまいと立ち向かうのは、勉強だけが取り柄のヒョロい男ども。
彼らは命の危機に直面して覚悟を決めたか自発的に立ち向かっている。
「行け! 遠くへ! 離れろ!」
周囲の足元と崖、振り返って頭上を頻りに確認していた空野助教が叫ぶ。
「伏せろ!」
逃げ遅れた生徒に覆い被さると同時に、サッカーボール大の岩が空野助教を直撃した。
「空野さん!」
「構うな! 早く行け! 逃げるんだ!」
直撃の瞬間、ぐっ! と声を漏らすと生徒を押し出して逃がした空野助教の右腕は変に捻じれて下がったまま。庇った生徒が脱出したのを確認すると、残って補助していた男子生徒達に走り寄り、左手だけで勢い良く押し出して逃がすとこちらを向いて叫ぶ。
「多梨! 来るな! 戻れ!」
後に続こうとした私は声に押され後退した。
戻れと大きく左手を振る空野助教は姿勢を低くするとその場を離れ、避難した生徒達を更に遠ざけている。足の裏に伝わる振動を感じ取ると、空野助教と生徒達が今までいた路面が大量の泥水と共に崩落し、崖下へ消えた。
進路も退路も断たれた私。崖崩れに巻き込まれ姿を消した玲嗣、白鳥、咲紗。
救援に向かった狭山助教。傍に来てくれた渋宮教官。
……玲嗣達は、戻ってこない。
お父さん、助けて。――怖いよ。仲間が、いなくなっちゃったよ。




