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7-3.

 それでも立てないと見た玲嗣が自分の首から肩を白鳥の左脇の下に入れると右側のベルトを握って引く。せーの、と玲嗣の声掛けでタイミングを合わせた咲紗が

白鳥の腕を握って引く。

 ふらりと立ち上がった白鳥の右手を引く咲紗。

 肩を貸し、腰を突き上げる様に一歩一歩ゆっくりとこちらへ進む玲嗣。

 私達の誰もが緊迫した状況に(おのの)いて見守るしか出来ない。

「玲嗣! 今助けに」

「来るな!!」

 今まで聞いた事もない玲嗣の絶叫が玲奈の足を止めた。

 それでも飛び出すだろうと見た私は玲奈に抱き付いて拘束した。その時。


 みしっ ごっ ごごごっ

 人間の本能が命の危険を感じる重い響き。

 腹の深くまで揺すられるこれが山鳴りかも知れない。

 意識しないまま後退していた足元が風に吹かれる水面の様に波打ち始めた。

 ごーーっ

 飛び立つ鳥もない斜面の木々が上に下に跳ねる。大小の岩がラグビーボールの様に四方に跳ねると転げ去る。とっさに体を丸めて蹲った。


 どれ程の時間だったか、我が身の安全を祈っていれば、地鳴りも揺れも消えた。

 顔を上げれば跡形もないほど景色が変わっていた。

「いない……三人が いないよ」

「玲嗣! 玲嗣! どこなの!」

 ガラガラと未だ落石の音を残す斜面は抉れて遊歩道の跡形もない。

 私は崖下に視線を走らせると三人を探した。

「玲嗣! 玲嗣!!」

「藤森、下がれ! 下がるんだ!」

「いま助けに行くから! 待ってて!」

「行くな! 全員、来た道、戻れ! 今すぐ! 走れ! 走れ! 逃げろ!」

 私は目の前の光景が現実とは思えず、教官の大声に従うだけ。


「多梨! 藤森と早乙女を避難させろ!」

 玲奈も乙女も茫然として動こうとしない。

「乙女! 玲奈! 危ないから戻るよ。態勢立て直さないと」

 乙女の腕を引くと女の子達にぐいっと押し出して離れる様に託した。

 戻ると崖下に飛び込まんばかりの玲奈に伸ばした私の腕は恐ろしい力で

握られた。

「邪魔するな! 玲嗣を助けに行くんだ!」

 私は玲奈から放たれる狂気を跳ね除けようとした。

「二次遭難したらどうするの! 今の玲奈に何が出来るって言うの!」

 握られた腕の痛みに構わず、頬を叩く代わりに言葉を叩き付けた。

「何の知識も装備もなくて三人を助けるなんて出来ないの! このまま行ったらあんた死ぬんだよ! 冷静になりなよ!」

 私を睨んでいた瞳の業火を涙が流し去った。

 腕に込められていた力がふっと抜けた。

 譫言の様に玲嗣を呼び続ける玲奈を女の子達に託すと避難するのを見ている。

 動揺治まらぬ私は状況を理解した。姿の見えない玲嗣、白鳥、咲紗。


 三人が崖崩れに飲み込まれた。

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