6-5.
画像が一時停止した。
先行者と後続者、周囲の全員の足が止まった。
コマ送りで俺達を向いた数十人。放たれた視線が一斉に刺さる。
時間はどれ程止まっていただろう。再生開始されると流れ出すいつもの光景。
「お幸せに~」「とっくに知ってたよ」「ご馳走様」「結婚式に呼んでくれ」「何を今更だな」 「いよっ、熱いぜ~」
騒然とする事もなく、皆好意的に励ましながら通り過ぎて行く。
こんな程度で助かったと思う俺は今更気付いた。俺達の仲は結構知られていたのかと。
「有難う、私の大切な玲嗣。苛める様な事してごめんね。さぁ、帰ろう」
俺に向けられた藤森さんの笑顔に違和があった。多分それは良くない違和感。
隣り合うと、ほんの少し肩の力を抜いて腕を下げた。それに合わせる様に手が上を向いてすっと迎えに……、こなかった。触れた指でもぎ取られる様に俺の手が取られ、指と指が組まれた。少し乱暴なのは何を表したいのだろうか。
強引に手を繋がれて歩き出すが、何か変だとすぐに気付いた。後をついて歩く音が聞こえない。
立ち止まり後ろを振り向けば、呆然と立ち尽くす咲紗の姿。
「玲嗣、行くよ」
同じ光景を見ただろう藤森さんが俺の手を引く。だが、何度手を引かれても俺の足は凍った様に動かない。そんな俺に業を煮やしたか、藤森さんが俺を試す文句を浴びせる。
「白鳥の彼女でしょ。なぜ玲嗣が戸惑うの?」
違う。
頭の中を過った心のままに、咲紗に近付こうと凍った足を踏み出した。
それを見て行かせまいと手を引く藤森さんは、なぜ行くのかと俺に問う。
「大切な人が困っている」
俺の手に更に力が籠められ、肩が抜けんばかりに引き寄せた藤森さんと
向きあった。
「行っても良いけど、後悔したくないからひとつだけはっきりして」
藤森さんの表情を見た途端、全身が悴んだ。
「咲紗に対して、恋愛感情はないよね?」
藤森さんの言葉が釘になると両足に打ち付けられた。
「恋愛感情はない。それよりも、いないと困る大切な人だ」
両足の釘を偽らざる気持ちで引き抜くと大切な人の元へ近付く。
一歩、また一歩近付く度に信じたくない光景がひとつ、またひとつ、目の当たりになる。
咲紗が後退りしている。
俺が近付くたび、咲紗は同じだけ離れる。
反発し合う磁石みたいに、俺達の距離は縮まらなかった。
「玲嗣、咲紗を借りるよ!」
俺と咲紗の間に割って入った多梨が断りを入れると手を引いてベンチに向かっている。
「玲嗣! 行くよ!」
動こうとしない犬のリードを引く様に手を引かれても、多梨と早乙女に付添われた咲紗を目で追い続けた。




