6-4.
「ねえ、玲嗣。私達って彼氏彼女だよね?」
部活動が終わり、構内道路をゆるゆると歩く帰り道。
「そうだけど。何かあった?」
当然の事を今更聞かれる場合は、何か考えがあってのこと。
鈍いと称えられる俺でも、それ位は分かる様になった。
「玲嗣から、俺の彼女になって下さい、って言われていない」
一方的に彼女宣言した人物が今更要求してきた。
拗ねている、だけでは言い表せない、何とも複雑な表情で睨まれている。
確かに俺からは意思表示していない。
白鳥を寮へと見送った咲紗が小走りで俺達の後ろに着けると等間隔で
続いている。
「渋谷のスクランブル交差点のド真中に二人並んで、俺の彼女は藤森玲奈です! 愛しているぞ! って、絶叫してよ」
咲紗がいてもいなくても気しない、ストレートで具体的な藤森さんの要求。
「そんな恥ずかしい事する奴いないって」
「いるよ!」
バタバタと足音が聞こえると、部室の鍵を返しに行っていた早乙女と多梨が咲紗に話し掛ける声が聞こえた。
「いないよ。そんな恥ずかしい事したらSNSでゴシップとして拡散して、スポンサーや事務所に迷惑掛けるだろう?」
「構わないよ、そんなの。本当にやった人、私、見ていたんだよ」
尚も喰い下がりそうなので、その馬鹿カップルはどうなったかと愚痴る様に
訊ねた。
「聞いた話だと、色々困難があったそうだけど、結婚して、子供に恵まれて、
世界で一番幸せになったそうよ」
「ははは。まるでハッピーエンドのお伽噺じゃないか」
笑い飛ばした俺の爪先に衝撃が走った。
「バカ!」
踏まれた足から顔を上げれば、怒りを込めた視線が見据えて叱る。
「悲運のヒロインが素敵な男に見初められて幸せになったの。お伽噺みたいだけど事実なんだよ、本当に本当に幸せだったんだよ! 世界で一番!」
「そっか、そっか、分かったよ」
「本当なんだから信じてよ! 玲嗣のバカ!」
怒った藤森さんが振り回すバッグが俺の尻に命中してよろけた。
今日はやけに虫の居所が悪いなと思っていれば手をぐいと引かれた。
「交差点での絶叫はなしにしてあげる。その代わり、ここで、周りの全員に聞こえる大声で、彼氏彼女宣言して!」
広いグランドが見渡せる構内道路で足を止められ迫られた。
驚きの声すら出ずに反応も出来ない。俺達の後ろを振り返ると咲紗、早乙女、
多梨。その他部活終わりでぞろぞろと帰宅する在校生多数。唇を固く結びじっと俺を見詰める藤森さんは引かない構え。
恥ずかしさはあるが、いずれ言うつもりだったし、と腹を括った俺は後ろを向くと息を吸い込むと叫んだ。
「俺の彼女は藤森玲奈だ! SNSに晒すと社会的に抹殺されるぞ!」




