6-2.
二枚目の写真を家宝にすると狂喜していた白鳥と咲紗にも変化が現れていた。
「俺、咲紗ちゃんに嫌われているのかな」
「何があった?」
白鳥と武道練習場の隅で壁に凭れながら相談を持ち掛けられた。
「避けられているのかな。デートに誘っても何かと理由をつけて断られるのが
多いし」
「何かと忙しいのは間違いないよ」
白鳥は表情も声も自信喪失している。
俺は白鳥から戻した視線を女子達に向けた。
以前から観察していたある女子一人を注視しているる。
「普段通りに会話しているじゃないか」
「そりゃあそうだけど。でもさ――」
ニュートラルに見えて、もう一歩踏み込ませてくれない雰囲気。
それはまるでガラス越しに接しているみたいだ。
落ち込む白鳥が言うと溜息を吐いて項垂れた。
「いつ頃からだ?」
それは、藤森さんと俺のデートの頻度が減ってきた頃と一致した。
このままだとどこまでも落ち込みそうだと思い、事実の一部を告げた。
「咲紗からすれば、白鳥は客人扱いする程丁重に接すべき相手なんだよ」
「えっ、そうなの!」
光の射さぬ深海から急浮上した白鳥は成層圏を突破した。勢い余って天国まで行くなよ。
あまりの落差に苦笑しながら思い出した。
咲紗が俺に週末の予定を聞いてくる。在宅か単独行動だと分かると、百パーセント同じく在宅して、或いは同行する。今までそうだった様に俺を独りにする事はない。この為に白鳥との予定を調整しているのだと思う。
自宅にいるから俺に構わず白鳥と出掛けろと送り出した事もあった。
咲紗は何度も様子を窺う様にメッセージを寄越し、夕飯は何が良いですか?
など重要と思えない内容でTV電話を掛けると早めに帰宅する。そんな事では楽しめないし、失望感が勝ってしまうだろうに。
多分、白鳥が気を使っているのだろう。優し過ぎる彼は、初めての彼女との距離感と、押す引く加減が掴めていないと思う。
……俺も偉そうに人の事は言えないが。
咲紗に避けられている様に感じる本当の理由は別にあるのではないかと、地球の重力圏に帰還した白鳥が重々しく口を開いた。
咲紗ちゃんとこのままでいれたら良いなって思う。現状維持でゆっくり進み
たい。
告げた白鳥に咲紗はこう答えたそうだ。
「それは無理ですよ」
関係維持が無理なのかと訊ねても首を傾げ、無理の理由を聞いても黙って微笑んだまま、関係が進むのか終わるのかも、何も教えてくれなかったそうだ。
武道練習場の隅で意気消沈して再び海底へ沈もうとする白鳥の話を聞く俺は、視線で捉え続けているその子が俺とは視線を交えず何度もこちらを見ている事に気付いていた。
「あの子が白鳥に積極的になっている気がするが、どうなんだ?」
耳打ちすると白鳥があの子に視線を向けた。
「確かに買物付きあってとか、大した事ない用件で引っ張り出されている」
白鳥は咲紗に報告して同意を得ると、クラスメイトとして応じていると言う。
俺はあの子が白鳥と咲紗の関係を切り崩しに掛っていると見ている。
咲紗が彼女の座を譲るから自力で奪い取れと言った通りに。




