5-7.
「ちよっと、そこのかぁれしぃ。奇麗な娘さんがいますよ、寄ってらっしゃいな」
「また半乳だったら寄らないよ」
大丈夫だから、ボッたくらないから、ちょっとだけ、見ていってと、自家用客引きAIに呼ばれると、画像が投影されている。
『人気急上昇モデル 桜丘華子 彼氏と激熱ツーショット!』
煽る宣伝文句に続く映像を見れば、肩に手を回す男の上体に抱き付きながら相手を見上げて歩く映像。被写体の雰囲気が父に似ている気がするが、気がするだけなのは、画像が粗く輪郭もいまひとつだから。
「お家に来たお友達でしょ? ネットに載っていたこの記事、消した方が良いの
かな?」
「うん。事実確認が記載されていないから、フェイクと思うけど。消した方が
良いよ」
このゴシップ記事が独り歩きした際の悪影響を考えれば、配信停止と削除申立てをするのが望ましい。
ん? 母親AIが肩を窄めて身体をくねらせ、上目遣いで俺を見詰めている。
悪いウイルスに感染したか?
「玲嗣がぁ、ママを~、優~しく撫でてくれたらぁ、ぜぇんぶ消しちゃうんだけどなぁ~」
「出来るの?」
語尾を伸ばして交換条件をおねだりする母親AIが頷く。
伏せてから俺を捉えた視線にドキッとした。和泉玲子、既婚、二児の子持ち、俺の母親、享年四三歳、合成映像では一九歳。眉を僅かに寄せた少し困り顔の頬を染め、長い睫毛を通した大きな瞳が上目遣いで見詰める。うっとりする表情の瞳に流星群が通過する独りプラネタリウムな母。
何を期待しているんだ……。――あ、そうか。
「良くない映像は消して欲しいんだ。お願いします」
抱き包むポーズに呼応して腕の中の母に力を込めたのを検出したらしい。
母の上体がきゅっ、と撓った。
「あぁっ はあぁ~ん」
何たるけしからん吐息。声だけでも猥褻。教育上宜しくない。
そうであればもう一息だと、悪乗りが突っ走る。
頬に添えた片手を滑らせ何度も髪を梳き、現れた額にチュッとキスした。
「お願いします。ねっ?」
「! も、もぅ、らめえぇ~」
つむじから湯気を噴き上げ朦朧としている。無駄に芸が細かい。
準備出来たよ、に続き母親AIが言う。
「じゃあ、やるよ。せーのぉ、どーん!」
合成映像が数秒瞬いて戻った。我が家の照明もふっ、と瞬いたがすぐに戻った。
「ん~~~っ! ひっ ひっ ふうぅ~!」
息むのは分かる。だが、何を出産しようとしている?
ふっと力を抜いたか、いつもの表情に戻った。
「おーっし、跡形もなく消しておいたよ」
やったぞ感たっぷりの母がハンカチを取出して顔を拭って絞る。
滝の様に流れる液体。マジシャンの水芸か?
エロとお笑いに全振りする母親AI、今日も絶好調。




