5-4.
「白鳥の事なんだけど」
呼び出されて一言言われた切り黙ったままの乙女。
対外的に白鳥さんの彼女になっている私と、人気のない校舎の裏で一対一。
喧嘩するでもないから恋愛絡みだろうと何となく分かる。
そして予想通りに言われた。白鳥を、譲ってほしいと。
私は乙女に聞いた。白鳥さんはどう思っているか、確認したのかと。
乙女は首を横に振る。矢張りそうだろうと思った通りだった。
私は条件をひとつ突き付けた。
「白鳥さんに望まれている間は、私から関係を終わらせる言動は一切しません。
今まで通り中立に振舞いますので、自分の手で掴み取って下さい」
吊り上がった眉が力を失った乙女は項垂れてしまった。
矢張りまだ子供だ、手が掛かるものだと自分に言い聞かせると、慰めになるか分からないまま告げた。
「白鳥さんから別れてくれと言われたら、離した手で彼の背中を貴女に向けて
押します」
「その後、咲紗はどうするの? 私達の関係も変わるの?」
ああ、面倒だ。
「私に対する乙女の気持ちがどう変わるかは分かりませんが、私は何も変わらず
元に戻って、皆と友達であり続けたいと願います。そして学生としての日々を淡々と過ごします」
「玲嗣はもう、玲奈の彼氏――」
「玲嗣さんと私は昔も今も恋人ではありません。単なる親戚です」
あぁ、子供の恋愛は何と面倒なのだろう。
これ以上話しても時間の無駄だと思った私は、話を断ち切るつもりで告げた。
「乙女は私より女らしい。白鳥さんをきっと幸せに出来ます。頑張って下さい」
それを聞いた乙女が近付いて来ると思春期の女の子らしい柔らかい身体に
包まれた。
なぜハグするのかは分からないでいると、両手を握られた。
「有難う、咲紗。私、頑張るね」
笑顔のまま手を振り、走り去る乙女を見送ったのは、私達六人が誰一人として脱落する事なく二年次の応用課程に進み、全員が同じクラスになった数日後の事。
「彼女の座、譲ったのかな? 乙女、笑顔で帰ったよ」
「藤森さん、日本ではその昔、こう言うのを出歯亀って言ったんだよ」
玲嗣さんと玲奈が隠れて覗き見しているのは分かっていた。
内緒話も聞こえている。
私は気付かない振りでその場から離れた。




