4-10.
「私は輝子に望まれ生を受けたけど、結局捨てられた。玲嗣との関係は叶わないし叶えてはならない。渉との関係も隠し続けないとならないから確かなものにする事など出来ない」
険しい表情で私を睨んだ玲奈の湛えていたであろう感情が涙と共に溢れ出した。
「本当の私を求める人が誰一人いないって分かったんだよ! どうしてなの? 余りに勝手で酷い扱いだよ。私の事なんかどうでも良いの?」
いきり立つ玲奈だが、やっと感情を吐露して、何があったか、何を望んでいるか理解出来た。私は何も言わずに起こした上体を抱き寄せると頭を撫で続け、落ち着くのを待った。
「ねえ、必要とされなくなった私はどっか行っちゃって良いの? 知らない男の元に行っても良いの?」
「いずれ伴侶に相応しい誠実な男も現れる。普通の女性が歩むのと同じ道を」
「渉、貴方が責任取ってよ」
「な――」
「私が普通の女じゃないって、前世に縛られているって分かっているでしょう? 輝子と渉の二人、私をこの世に齎した二人は共同正犯だよ。渉が責任取ってよ」
言った切り、互いの視線を外さないまま沈黙の押し問答が続く。
いずれこうなるのは分かっていた。
決して褒められる方法ではなかったが、輝子の選択を認めて手を貸した責任は
私にある。
高校入学以降に玲奈は問題に直面すると予想した私は、その時が来たら解決法を実行するつもりでいた。それは周囲に混乱を招く事になるが、前段だけなら今告げられる。
「玲奈」
「なによ」
まだ怒りの表情が眉間に残る玲奈に告げた。
「学園の理事を退任するよ」
「! 良いの?」
「運営も軌道に乗った最近では殆ど関与していないから良い頃合いだ」
「じゃあ、これで私達、学校理事と生徒でなくなって、堂々と結婚出来るね!」
飛び付く玲奈の胸が柔らかく私の胸を圧迫する。
「話が飛躍し過ぎだ。結婚はしないよ」
「もおぉ~、照れ屋さんなんだから~。隠さなくても良いんだよ。ありがとう!」
歓喜のキスを見舞おうとした唇を避けるとバランスを崩した二人ともベッドに
倒れ込む。玲奈の上体に覆い被さる体勢の私。
まずい、これはドラマで良くあるキスへと流れるシチュエーション。
「貴方から押し倒すなんて、そんなに私とセックスしたかったのね」
キスじゃなかった。もう一歩どころでなく走り幅跳び並みに飛び越えてきた。
私の下から溶けそうな表情でいる玲奈。なぜか掛け声一発。
「あらよっと! はい、全裸♡」
玲奈の着衣全てが消えた。マジシャンか? どんな仕込みなんだ?
「タオルもティッシュもある。……最初だから、痛くない様に。優しくしてね♡」
「何もしないから朝までぐっすり寝なさい」
乙女の覚悟を無駄にしやがったな、などぶーぶー言いながらも喜んでじゃれ付いてくる玲奈が、拠り所を欲するのは当然だ。
私が生きている間は、玲奈が漂流しない様に舵を握り続ける必要がある。
ん?
「だぁから、脱がすんじゃないっ!」
ゲームを楽しむ様に、桜色の突起も露な乳製品を揺らしながら、脱衣の手が
止まった。
「素早く優しい脱衣は介護の練習なの!」
「それ、生々し過ぎるNGワードな」
油断せず、目を離してはいけない。




