表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

1-4.

 式典が終わり、咲紗に手を引かれ先頭で大講堂から退出すると、お喋りしながら一年二組の教室、第一校舎の三階へ階段で向かう。

「見たら蹴りますからね」

 上り階段の下にいる者へスカートの中を見るなと言った事のない咲紗。

 その代わりに、いつも後ろ手で上着の裾を押さえているのは、腰の後ろに隠し武器があるからだと聞いている。何を忍ばせているかは怖くて聞けない。

 この学校の制服規則は、ブレザーの右前と左前、ズボンとスカート、シャツとブラウス、結び下げネクタイとリボン、ソックスとストッキング、ローファーとプレーントゥとスニーカー、いずれの組み合わせでも良い。性自認を含む性別による指定はなし。生徒の自主性に任せているそうだ。


 反対端の階段を上って遠回りした様で、教室に入ると皆がざわついている。座席表を確認しようと教室前面の大型ディスプレイを見れば大きく一行だけ。

「座席指定なし」

 ざわついていたのはこれが原因かと思いながら、さて、どこに座ろうかと教室を見渡す。

 咲紗は私の手を引き最後列に向かった。窓側には咲紗よりは大きいが小柄な女の子が座っているので、その隣の窓から二列目最後部に陣取ると、私はその隣の三列目に強制的に座らされた。


「となり、と~った! 永久カップルシート!」

 気配を感じさせずに新入生筆頭キス強奪犯が出現。

 隣の四列目に座り、机を付けると椅子ごと身体も擦り寄せてきた。

「怖がらなくていいからね。えっちなお店じゃないし」

 ふわりと心地良い香りを感じ取っただけなのに、なぜか泣きそうになったから言われたのか。

 右腕に伝わる柔らかな感触。私が持ち合わせない大容量乳製品に意識が奪われる。

 多分これがえっちなお店のサービスではないかと、反論すべきか考えている内に口から出た。

「こっ、こ、に、ち、は」

 挨拶が音飛びになった。

 左から能面越しに視線を放つ咲紗はいつものお小言を言いたいだろう。

「お立場を考えて振舞って頂きませんと」


「あの、隣、宜しいですか?」

 見るからに軟弱だが甘いマスクの男子が五列目の椅子に手を掛けふじもりさんに聞く。

「はいどうぞ」

 棒読みのお手本の様に抑揚なく答えたふじもりさん。

 私達を邪魔するなとの無言の圧を感じたか、女子達は散らばり、最後部の前席は全て男子で埋められ、無用な紛争は回避された。


「この列の一番後ろ、始業の号令を掛けて」

 チャイムが鳴ると、担任らしき人物が教室に入ってきて開口一番に告げた。

 突然だが仰せつかった私は、落ち着き払い号令を発する。

「起立」

 教室に声が響く。

「えっ?」

「あれ……?」

 咲紗とふじもりさんは正面を見ながら平然としているが、その他全員は立ち上がりながら一斉に私を振り向く。静まり返る教室に広がる戸惑い。構わず続ける。

「礼」

「ぅえっ?」

「嘘でしょ」

 顔を上げた頃には、教室の空気が変わっていた。

「着席」

「何だよおぉ……」

「あらあら」

 日本の伝統的教室文化、ごく普通の号令だが、全員が小声で騒ぎ始めたのは不思議だ。


 担任は随分と濃ゆい顔立ちでタブレットを操作しながら告げる。

「挨拶と同じクラスのメンバー紹介を兼ねて、最初の課題はこれだ」

 ホームルームなしで突然始まった。

 教室前面の大型ディスプレイに表示された字面を全員が食い入る様に読み込む。

「Introduce the other person. 相手をプレゼンせよ」

 ディスプレイの余白にルールが表示されると一斉にどよめきが広がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ