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1-3.

「クラス分けの掲示はあちらです」

 手を引き先導する連れの表情は分からない。

 身長差で艶々髪の天使の輪しか見えなくても、少し低くなった声で機嫌が斜めなのは分かる。

 襲撃してきた彼女を知りたい気持ち。遠ざかりたい気持ち。鬩ぎ合っている。

「あ、あった。私達二組ですよ。また一緒のクラスですね!」

 明るく軽くなった声色で私に向けるその笑顔。お世辞抜きで、いつ見ても連れは可愛い。

 でもその裏に何か隠していると私は疑う。

 中学から現在まで席替えの度、メンバー全員入れ替えの進級でも、連れは必ず同じクラスで私の傍にいる。凄い確率だと思う。

「良かった」

 嫌な事ではなく、連れがすぐ傍にいてくれる安堵から溜息と共に言葉も出た。

「離れると休み時間毎に様子を窺ったり、何かと心配だったりしますので。良かったです」

 安堵を言葉にした連れの名は咲紗(さしゃ)。物心ついた頃から一緒で、いつも傍にいてくれる。

 外では手を繋ぐ以外ベタベタするでもなく、何もなければ控え目で大人しい。

 今は輝かんばかりの笑顔を三四センチメートル下から私に向けている。

「あった、二組だ、同じクラスだ! やった~!」

 大声に振り向けば、人混みの中でキス強奪犯がぴょんぴょん飛び跳ねている。

 覗き込んだ咲紗はさっきまでの眩い笑顔を仕舞い、取り出した能面を装着したかのような硬い表情で黙って私を見る。そしてぼそぼそ声で言う。

「にやけているのか、困っているのか、はっきりしない表情ですね」


「新入生諸君、御入学おめでとう御座います」

 校長のよくある挨拶で始まった式典は、修学の厳しさを散りばめて新入生と父兄を震え上がらせると、在校生代表による歓迎の辞、これに対する新入生の答辞と続く。入学試験最高成績者が新入生筆頭として答辞を務めるのが習わしとの事で、少なからず心の準備をしていた私。今日になっても学校関係者から声が掛らない。

「新入生答辞。新入生筆頭、ふじもりれなさん」

「はい」

 甘く柔らかく、どこかで聞いた気がする澄んだ声が大講堂に響いた。

 一人の女子生徒が中央通路側最前列から立ち上がり、後方を向くと礼をする。

「あ」「えっ」

 背丈と顔貌からキス強奪犯と断定した私と咲紗が同時に声を出した。場内からのどよめきと、こそこそと漏れ聞こえる彼女のモデル名。騒めく場内に静粛を求める注意が響く。

 彼女は壇上で関係者へ一礼すると答辞を読み始めた。流れる様にネイティブな英語で。会場を静まらせたふじもりさんは読み終えると、日本語で同じ内容を読み上げた。

「以上で答辞と致します。新入生筆頭 ふじもり れな」

 英語、日本語とも完璧な答辞を終えると一礼し、回れ右から一旦停止した。

 檀上から素早く視線を走らせると慈愛の笑みで私を狙撃し、何食わぬ顔で降壇した。

 これは咲紗が毛嫌いするやつだと視線を向けた私は即座に顔を戻す。

 能面を被っていた様に見えたから。

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