4-6.
「玲嗣さん」
一二月二四日土曜日午後。買い物帰りのいつもの道。
咲紗が繋いでいた手を引き、足を止めて俺を見る。大きな瞳でじーっと見る。
うん、今日も可愛い。
「ん、なに? どうかした?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「あ、そっか。ありがとう、咲紗」
無垢な笑顔と共に告げられた。
メリークリスマース! が主。玲嗣、お誕生日おめでとう! が従。
家族は大概おまけの様に言う。
でも咲紗だけは必ず対面して祝いの言葉をくれる。一〇月五日生まれの咲紗に俺も祝いの言葉と余計な言葉を掛けるのを忘れていない。
「咲紗は幾つになったの?」
いつもの答えは、歳上です。更に強請れば様々な怖い台詞を聞かされる。
でも、未だに正解は聞き出せていない。
「玲嗣、お誕生日、おっめでとおぉぉぉぉ! あーんど、メリークリスマァス!」
♪ジャジャン!♪
効果音と共に頭の天辺から爪先までフル装備のセクシーサンタが目の前に。
特殊な遺影の背景は暖炉の炎揺れるログハウスにクリスマスツリー。
御丁寧に調度品に飲物まで並んでいる。
ここまで凝っていると、とても遺影とは言えず、繁華街のデジタルサイネージと化していると思う。
ニマニマした表情でリズミカルに頭と上体を左右に揺らしては鼻歌を奏で、俺の反応を窺う一九歳当時の母の姿。無駄に高性能な母親AIを見て眩暈から額を押さえて耐えた俺は、楽しそうな姿をちらちらと覗き見ては冷静になって考えた。
故人、経産婦、母親。これらのバイアスを外したなら、我が母のこの姿、グラビアアイドルで売れるのではないか。腕も脚も細くて長いし、とある一箇所を除けばボディラインも完璧。
ここまで高精細な投影が出来るのかと感心する程、肌艶と肌理が再現された合成映像。だが、良識を自負する俺が懸念するとある一箇所。
それはゴールデンカノンを笑い飛ばす胸部大容量乳製品。
目の前で揺れ、波打ち、弾む。何とも罪深いこの物体は真偽いずれだろうか。
「玲嗣の誕生日の想い出になる様に、ママから精一杯のプレゼントコスよ」
そこからいつも通りピンク漫才が始まれば、ハプニングを装い両乳ポロリしやがった。
「あはははは。まぁ、これはサービスってことで。今お胸を積み込みするね」
「積み込み……。ダークピンクなプレゼント、ありがとう」




