4-2.
「会場の皆様、お待たせ致しました!」
あぁ、欠席裁判の公開処刑かよ。嵌められたなぁ。
土日二日間の学園祭初日。
一般公開の二日目はイメージが悪化しない真面目なプログラムだけ。
初日の今日は、学内と招待客だけなので、野放し状態の、バカ全開の日。
体育館資材庫に設けられた出演者控室の簡易間仕切りの一角。
「この中に衣装が二組入っている。予選用と決勝用だよ」
「決勝進出確定? 予選敗退が良いんだけど……」
藤森さんがダッフルバッグを床に置いた。
「ファイナリスト確定。大丈夫! 絶~対、優勝出来るから」
予選敗退で良いとの愚痴など聞き流し、バッグを開けて準備に掛かる。
「スタイリストさんと~♪ 相談して~♪ 玲嗣のドレス~♪ 選んだの♪
私♡」
スタイリストって聞こえた。ドレスって言っていた。
本職を介入させるなんて他の出演者の御迷惑ではないだろうか。
「はい! 最初はこれだよ」
突き出されたそれとは夏休み以来の再会。自分の位置付けでは大量殺戮兵器。
「そんで、決勝の勝負服はこれね!」
綺麗に畳まれたまま突き出されたニット。
「これって、何?」
手にしたまま眺めて固まっている俺から奪いながら広げると、
「ほぉら、素敵でしょ!」
正面背面と見せると、上体に宛がう。
「サイズ丁度良いね。さっすが私、良い仕事しているじゃないのよ」
藤森さんの親身なお世話の度に眩暈に襲われ、涙がじわりと滲む。
「よぉし、玲嗣、お着替えだよ。ばんざーいして、すっぽんぽんになるぞぉ~」
幼児扱いの俺はなぜか素直に従ってしまう。 はい、ばんざーい。
「あ……、一時退場して」
「良いじゃないのよ、見せたって」
上半身裸の俺、藤森さんを押し出して下半身も着衣すると、再入場させて
顔面迷彩開始。
「素材が良いから薄味で十分だ。うん、奇麗に盛り付け出来そう」
喜々としてメイクする藤森さんは料理人か?
「長い睫毛ねぇ。アイラインいらないか。視線だけこっち向けて。ひゃあぁ~♡ なに色っぽく流し目くれちゃってるのよぉ」 バシッ!
やってない。要望に応じただけなのに肩口を叩かれた。
「もぅ、十分びっじんだぁわぁぁ。ここからアクセで完全武装でしょ。今日の玲嗣になら負けを認めても惜しくないなぁ」
メイクが終わると立たされて、小道具の装着が始まった。
より一層進化したアクセサリーの数々でゴージャスにデコレートされる俺。
押さないで ぶははははは 見えた見えた ひゃ~素敵です
俺も藤森さんも気付いている。
丸聞こえの内緒話を交わしながら白鳥、多梨、早乙女、咲紗が覗いている事に。
「こら、覗くなら拝観料払え!」
藤森さんの一喝で複数の足音が遠ざかる。拝観って俺、仏像? 拝まれる?
「出来た! これで世界を相手に戦っても勝てるっ! 皆の為、御奉公して
こいっ!」
藤森さんに姿見の前に押し出されて、完全武装の自分と対面した。
装備がドレスとハイヒールって何だ? 敵を悩殺しろって?
黒い歴史を作って社会的に死ぬ。
……なのに俺、鏡の前でくるっとターンしたよな?
一番盛れる角度探しているよな。
あれっ、なんで俺、無意識に顎引いて目線作っている?
俺、被害者なんだぞ!




