3-11.
玲奈の部屋に泊まると必ず起きる怪奇現象が再現される。
入口に現れた姿が消える。隣に添い寝している。パジャマ姿だった。一瞬で全裸。ベッドの外へ何かを放り投げる。私も全裸。瞬間移動、瞬間脱衣、そして全裸。玲奈はマジシャンだ。
「とっても楽しかった旅行の手配をしてくれて有難う。お金を使わせてごめん
なさい。出来なかった夜のお勤め、これより気合を入れてじっくり勤めさせて
頂きます」
身体を乗り上げて重なると、胸に凭れた玲奈が礼を告げる。最後の方、意味不明が混じっているぞ、と突っ込むが、良かったな、と頭を撫でた。
「心の垣根を取り払って、一緒にバカやって、内面も曝け出して夜更けまでお話ししたの。限られた一部だけど私についてお話して、誤解が解けて皆に近付けた気がする」
玲奈は私に対してギャグ先行が常だが、至って真面目な眼差しで報告を続けて
いる。
「皆をお友達って呼んで良いのかな? て聞いたら、何当然のこと言っているの、って言って貰えたの。私の初めてのお友達だよ、嬉しくて嬉しくて枕に顔埋めてキャーって叫んだよ!」
眠る前に興奮して大丈夫かと心配すれば、真顔になって告げた。
「皆と楽しい想い出が作れた。本当に本当に嬉しかったの。有難う、渉」
自然に顔を寄せていた玲奈が感謝のキスを仕掛けてきた。雰囲気に流されそうになったが、ぷいっ、と横を向くと頬に命中した。
「電話してきたモデルのアルバイトには驚いたけど、勉強の邪魔にならないか?」
告げた懸念については現地からの電話での約束通りに、成績は学年トップの現状に甘んじる事無く更に向上させる、活動は学校行事を欠かさないで休日に限る、宿泊なしで夜九時までに帰宅する。かなり厳しい条件を電話で約束した玲奈は改めて約束すると言った。
虚飾を剝いだ玲奈は純粋で賢い子だ。
その場の雰囲気や煌びやかなイメージ等一時の感情に流されて判断する子ではない。何を目論みモデルになろうとしているかは分からないが、策を描いていると思う。
「ギャルっこい格好も玲嗣に楽しんでもらったから、モデルの邪魔にならない様に戻すね」
マネジメント契約のイニシアティブはこちらにある事を条件に内諾したしっかり者の玲奈はビジネスネームまで決めていると言う。会社の顧問弁護士事務所がモデル事務所との契約書監修と、玲奈が未成年者の為、業務受託の際に代理人となる事も了解させている。
互いに全裸で密着したまま、なぜモデルになりたいのか、理由を訊ねた。
「世界が羨む恋人同士になるの。その為の手段がトップモデルになる事」
私には夢見るお嬢ちゃんの夢物語に聞こえた。
手段は良いとして、恋人になったその先、本当の目的が知りたい。
今こうして私と全裸で抱き合い、セックス紛いも仕掛けるのと、玲嗣と世界も羨むカップルになる事は、所謂二股を掛ける状態で、狙いが分からない。




