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3-5.

 えぇい、邪魔だ、どけっ!

 口に出せたらどれだけ楽か。男共に囲まれて軟派されている。口汚く罵声を浴びせても良いが、すぐに拡散されてモデル業に影響が出るかも知れない。微笑むと誤解されるので、能面の如く表情を変えずに擦り抜ける。

 

 ふぅ、やっと……、いっけねぇ、遅れる。


 皆と合流しようと歩を進める。

 すると、スライディング正座を決めた不審者に進路を塞がれ脚が止まった。

「無理強いは絶対しません。六〇秒だけお時間下さい!」

 なんだよ、今日は障害物競走の日かよ、と呆れたが、何を喋るか一分だけ付き合う事にした。

「用~意、スタート! 一、二、三、四」

 カウントを始めた。すると喋る喋る、倍速再生かこいつは、と呆れる程話題を繰り出す。

「あぁ~」「うぅ~んとぉ」「どぉ~だろぉ」「分かんなぁ~い」

 真面に答える義務などない。脳内カウントダウンが忙しい。

「五八、五九、六〇! ここまで~。じゃあね、バイバイっ!」

「せめて! これを! お目通し下さい!」

 走って私を追い抜くと、足が縺れて転んだ。

 転んでもただでは起きぬを体現する不審者だったこいつが、でんぐり返しからパンフレットを突き出す。今日はビーチフラッグ大会だったのか。

「え~っ、六〇秒過ぎたよぉ」

「どこかの事務所と契約していますか? モデルさんですよね?」

「う~ん。事務所じゃないけど、専属だよ」

「え~っ そんなぁ」


「ここにいたんだ。ねぇ、どうかしたの?」

「玲――、ぷっ ぶわっははは! 狙った通り浜辺の女王だぁ! 完璧だよぉ~!」

 腹を抱えて笑った。涙目になったその先に美女、いや、私そっくりな女がいる。

 風に揺れるライトブラウンのロングヘアから覗く細い肩。東洋人の面立ちを備えつつも西洋系に見えるすっと通った鼻筋、二重瞼の長い睫毛が瞬く大きな瞳、ローズピンクの少し薄い唇。それらの絶妙な配置。首元まで隠すハイネックタンクトップを小振りながらしっかりと膨らませる胸元には煌めくネックレス。緩やかにウエストで括れた曲線は、ショートパンツとパレオを通して横と後ろへとの張り出しが大人の女そのもの。アンクレットとハイヒールが引立てる細い足首から、緩い曲線が真直ぐの脚を描く。


 容姿、骨格まで母親の遺伝子が反映されているのは凄いとしか言えない。

 違いは身長と胸と股間だけ。

 このモデルスカウトの目にはどの様に映っているだろう? 

「こちらはお姉様か妹さんですか?」

 ゲヒャヒャヒャヒャ!

 笑いが止まらない。プロのモデルスカウトに女性認定されたミス玲嗣の腕に抱き付くと言い放つ。

「私、この人の専属なの!」

「え? 百合っすか?」

 あぁ――、笑いが――、腹筋が攣る。

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