3-4.
チェックインした女子四名は最上階にあるオーシャンビューのファミリースイート。シングルベッドが四つにリビング付き。実に素晴らしい部屋と眺めを堪能した男子二名は二階の部屋へ戻ると風景を望む。
「シティビューとは……、こう言う事か」
「林と畑、遠くに……疎らなシティが――確かに」
溜息と共に簡素なスタンダードツインのカーテンを閉めた。
リュックの中身を片付けようと手を差し入れる。弾力のある何かが触れて手が止まった。取り出したそれは、一緒に買物に出掛けた藤森さんが大絶賛の物体。
「これ……、全部藤森セレクトなんだよ。水着のアクセサリーだってさ。どう思う?」
テーブルに全部並べたそれらが何か分からない白鳥君は小首を傾げ、それぞれのアピール札を手に読み耽る。彼の肩が震え始めた。
「こ、こんなものまで。ぷ ぐふっ! タダでは済まないと思ったら、こう来たか!」
笑い出す白鳥君が憎らしいが、これが正常な反応。
翌日。浴室で装備を身に着け武装を終えた。決戦の時は来た。
大きく息を吸って吐き出しながら自分を落ちつけると姿を晒した。
途端、大爆笑。
「浜辺の――クイーンコンテスト優勝――どころじゃない」
げほげほ咽ている。
「地元の漁師さんが、豊漁を、祈願して――拝み始めて」
息継ぎが忙しそうだ。
「観光協会の人も来て、来年の海水浴ポスター、モデルに採用だ!」
息も絶え絶えの白鳥君が、涙を流しながら続ける。
「キャッチコピーは、彼女と夢の夏の海へ、隅に小さな文字で、この人は男です、って注釈つくやつ! おまけに背景のギャラリー、俺達!」
あ~、ダメだ、腹痛い、と転げ回っては床をバンバン叩いていた白鳥君。
手にした履物が震えている。
「これ履いてモンローウォークしろよ、何人ついてくるかな。ゲホゲホ! あぁ、苦しい」
息も絶え絶えでまだ言うか? 呼吸困難で死ぬぞ。
特大ビーチパラソルとビーチチェアを設営したと立て続けにモバイルにメッセージを飛ばしてくる女子ども。読みながら歩いている俺は急ぎたいが、慣れない履物で砂浜を歩くのがこれ程難しいとは思っていなかった。コケると大変だからとボディガード兼任の白鳥君がぴたりと付き添うが蛇行している。
「ねぇ、彼女。俺達と一緒しない?」
あぁ、また来た。今日三度目だよ。
口説き、言い寄り、ちょっかいを掛ける。
面倒なのでトーンを上げた裏声で言う。
「私の彼氏と一緒なの」
むぎゅっ、と胸を押し付ける。
「ぶはっ」
「声殺して笑うな! 俺も笑っちまう」
「無理 無理 無理、むりっ」
顔を背け小声で嘆く白鳥君から、笑いを堪える震えが伝わってくる。
あっさり諦めた彼らを目で追っていた白鳥君が言う。
「あと何回声掛けられるかな? 楽しみだあぁ」
笑い止まぬ白鳥君に掴まり、足の裏の砂を払い落としてハイヒールを
履いていた。
「まっま おねぇちゃ ちれ~」
「そうね、奇麗なお姉さんね」
甲高い声を向いた俺は、小さな女の子に見詰められていた。お世辞など言えない幼女からお姉ちゃん認定を頂いた俺。無垢な心を穢すまいと無言で微笑み手を振って見送った。
「玲嗣、何その聖母の微笑み? 一瞬、後光が見えたわ」
「喋ったら秒で母子にトラウマ浴びせるだろ? 必死な作り笑いだったんだよ!」




