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軍服を脱いだら、お見合い相手が上官でした――冷徹な大将閣下は男装少尉を逃がさない(※溺愛されています)――  作者: 玖条 レイナ


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第十八話 護衛対象は白銀閣下

「何か良いことあったんですか?」


 白銀が大将執務室に戻って来るやいなや、龍生は「じとーっ」と目を向ける。


「……いや、別に――」


「へぇ、そうですかぁ?

 同僚に絡まれてる亜嵐少尉を目撃して、仕事に手がつかなくなって訓練場まで行った誰かさんが上機嫌で帰ってきたんですよ?」


「――何もないわけ、ないよね?」


「………………」


「何食べてきたの?」


「――カレーライスだ」


「後は?」


「……俺は珈琲だ」


「……亜嵐少尉は?」


「………………フルーツポンチだ」


「ふーーーーーーーん」


「可愛かったんだ?」


「……………………」


「あ! 今、鼻の下が伸びた!」


「……そんな事はない」


「僕は龍也とずっと一緒にいるから分かる!」


「亜嵐少尉、それはさぞかし、キラキラしたお目々で食べたんでしょうね!」


「……稜。今日はやけに当たりが強いな……」


「そりゃそうさ! 大将閣下がお仕事そっちのけでデート(逢引)してたおかげで、仕事がたまりまくり!

 その溜まりにたまったお仕事を僕が片付けなくちゃいけなくなっちゃったんだよ!?」


「おかげで昼メシもまだ食べれてない……!」


「……そうか。それは悪いことをした」


「今からノワールに行ってくればいい。俺が許可しよう」


「もぅ〜〜〜! ――そうさせてもらいます!!」


 

 ――バタン!


 ドアが閉まる音。

 大将執務室は静まり返る。


(確かに稜には悪い事をした……)


(だが……)


 白銀はフルーツポンチを頬張る蘭を思い出す。


 菫色の瞳がキラキラと輝き、あのとろける様な笑顔を振りまく……。


(蘭……。お前はなんて罪深い女なんだ……)



✕✕✕


 

 ――ファン、ファファファ、ファン。

 

 十七時の課業終了を告げる喇叭の音が、黄昏色の空に響き渡る。


「よーし! やっと終わったー!」

  

 亜嵐は大部屋で「ん〜」と腕を上に上げて軽く伸びをする。


「亜嵐少尉いるー?」


 そこに現れたのは、ノワールでカレーライスとフルーツポンチを食べてきた上機嫌の龍生だった。


「龍生副官。どうされたんですか?」


「ちょっと亜嵐少尉にお願いがあって……」


(うわっ、またイヤな予感……!)


「一緒に来てくれる?」


「は、はい……」


 亜嵐は帰り支度をして龍生の後に続く。



「今日も龍ヶ崎少尉は龍生副官に連れられて行くぞ――」


「大将閣下関連かね?」


「やっぱりお気に入りは違うね〜」


「……昨夜もお楽しみだったのかな?」  


 同僚たちがニヤニヤ話し始める。


「ねぇねぇ、キミたちさ〜」


 すると、すかさず龍生が近づき、天使の笑顔を見せた。


「龍ヶ崎少尉のことで話してるヒマがあったらもっとしっかりお仕事しないとダメだよ?」


「この前なんて、報告書作るのに何日かかったの?」


「亜嵐少尉だったらそれくらいの報告書、半日で仕上げてくるよ?」


「キミたちが判子押すだけで作ったつもりになってる報告書、誰が見直してると思ってるの?」


「キミたち直属の上官である大尉()だよ?」   


「……ただでさえ白銀閣下の仕事も手伝わなきゃいけないのに、キミたちみたいな遊び半分でお仕事してる連中の面倒も見なくちゃいけないの」


「僕はそのおかげで昼食が遅れてこんな時間に……」


「あぁ、思い出しただけでも腹が立つ!」


「じゃあ、そんなワケだから仕事を頼むにしても信頼出来る部下に頼むのは当たり前!

 せいぜい、書類に不備がないように頑張ってね〜」


「さ、行こ! 亜嵐少尉!」


「え? あ、はい……」


 龍生に詰め寄られた同僚たちはポカンと開いた口が閉められないまま、龍生と亜嵐は大部屋を出た。


(龍生副官……。やっぱり只者じゃないな――)



✕✕✕



 龍生に案内されたのは陸軍庁舎の裏だった。

 そこに一台の馬車が停まっている。


「亜嵐少尉、これから()()()()の警護をお願いしたい」


「……警護、ですか?」


「うん、その御人はとても高貴なお方だから、くれぐれも粗相のないようにね――」


「は、はい!」


(急に護衛の仕事が入ったんだ。白銀との買い物はまた今度だな――)


「……その御人はあの馬車の中でキミを待ってる」


「早く行ってあげて」


「分かりました! 龍生副官」


「じゃあ僕はこれで。この後もやる事があるから――」


 亜嵐は龍生に敬礼をして馬車に向かった。


「……失礼いたします」


「本日、護衛の任を命じられました少尉・龍ヶ崎 亜嵐であります!

 どうぞよろしくお願いいたします」


 亜嵐が名乗りを上げると、馬車の扉が開く。


 馬車の中は上品な空間だった。

 黒い皮の椅子から亜嵐を見下ろす人物は――。



(……白銀、お前かよぉぉぉぉぉ!!!)


「待っていたぞ、亜嵐少尉。

 早く乗り込め――」


 白銀はいつもの軍服姿ではなく、グレージュのジャケットにベスト。それにスラックスを身につけていた。

 首元には濃紺のネクタイが締められている。


(うわぁ! いつもの軍服じゃない!) 


(けど、分かってた! 薄々は分かってた!)


(だって、龍生副官からのお願いって、だいたい白銀関連なんだろ!?)


(一瞬でも違う仕事かも? とか思ったオレが馬鹿だった!!!)


「……どうした? 亜嵐少尉」


 瑠璃色の瞳が細まる。


「――――――失礼します!!」


 亜嵐は肩を震わせながら馬車に乗り込む。


「そっちの椅子ではない、ここに座れ――」


 亜嵐が白銀と向かい合う形で座ろうとするが、白銀が自分の隣を指定する。


「……くっ!」


 亜嵐は言われるままに白銀の隣にドカンと座り込んだ。


「……こんな回りくどいことしなくても、オレは逃げませんよ」


 菫色の瞳が隣の御人を睨みつける。


「……車はどうしたんです?」


「車は稜に屋敷まで送らせることにした――」


「はぁ……」


(龍生副官が言ってた仕事って、それか……)    


「……出してくれ」


 白銀が御者に出発を促すと、馬車がガクンと揺れた。


「うわぁ」


 その揺れで、亜嵐の肩が白銀にぶつかる。


「し、失礼しました――」


「いや、構わない――」


 すると白銀は亜嵐の腰に手を回し、自分の身体に密着させる。


「どわぁ! 急に何しやがる!!」


「……この方が、安全だ――」 


(――――何が?)


 亜嵐が言葉を挟む暇もなく、馬車がガタガタと揺れる。


()。この馬車は白銀家の馬車だ。

 だからこの中では()でいろ――」


「は、はぁ!? 何言ってやがる!

 オレは今、亜嵐少尉なの! これからお前の護衛をするの!」


公私混同(こうしこんどう)されるのは困りますよ、閣下――」


「……そうか」


 白銀の薄い唇が上がる。


「そういうことに、しておこう――」


 馬車はガタガタと揺れ、揺れる度に亜嵐の腰に回された白銀の腕に力が入る。


(……えすこーと? してるつもりなのか……?)


(ますます意味が分からん!!)


 亜嵐は混乱したまま、馬車に揺られるのであった。




第18話をお読みいただきありがとうございました!


龍生副官、本当にお疲れ様でした……!笑

大将への鋭いツッコミから、大部屋での「天使の笑顔の正論パンチ」による同僚たちへの大無双、書いていて最高にスカッとしました!


しかし、そんな龍生の手引き(?)で乗り込んだ馬車の中には、グレージュのジャケットをスマートに着こなした私服姿の大将閣下が。

まさかの「お隣密着シート」で腰に手を回され、蘭ちゃんは「意味が分からん!」と大混乱ですが、大将の独占欲はもう止まりません。


次回、第19話「百貨店と嫉妬の味」


馬車はついに市街地の百貨店デパートへ到着しますが……その道中の馬車内、そして到着したデパートで、二人の糖度がとんでもないことになります!


次回、なんと蘭ちゃんの“あの部分”に、大将の唇が……!?


まさかの「大将直々の味見(甘噛み)」に声にならない悲鳴をあげる蘭ちゃん。さらに、デパートで蘭ちゃんが放った“ある一言”に大将がガチ嫉妬を爆発させ、薄暗い公衆電話ボックスの中に二人きりでギチギチに押し込まれるという超絶ピンチ(ご褒美)が待ち受けています!


「龍生よくやった!」「次回、あの部分に口がってどういうこと!?」「電話ボックス密着早く見たい!」と思ってくださったら、ぜひ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援ポチッとしていただけると嬉しいです!

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