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軍服を脱いだら、お見合い相手が上官でした――冷徹な大将閣下は男装少尉を逃がさない(※溺愛されています)――  作者: 玖条 レイナ


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第十一話 カフェ・ノワールの秘密

「亜嵐少尉はオレですが――。

 オレになにかご用ですか……?」


 亜嵐は一歩後ずさる。


(なんだこの圧はっ……!

 白銀とは違う視線――。これが海軍大将!?)


「……思ったより可愛い顔をしているな」


「……はぁ!? かわっ――」


(軍人のオレに向かって、可愛いとかふざけてるのか!?)


「龍也はこういう顔が好みだったのか……」


「あの……、閣下が仰られている意味が分かりかねます……」


 清野の手が亜嵐の顔に近づく。

 指が顎に触れる直前――。


「俺のかわいい部下に無断で触れないでいただきたい――」


()()()――」


 空間が凍りつくような殺気。

 聞いたことがない冷徹な声。


 そこに現れたのは陸海大将・白銀 龍也その人だった。


「し、白銀……閣下……」


 白銀は亜嵐に視線を送ると、再度、清野を睨みつけた。


「海軍のお前がなぜここにいる?」


「……上機嫌の琥珀から電話があった」


「は? 姉上から?」


「陸軍に、“龍ヶ崎 亜嵐”という“面白い少尉”がいるから連れてこい……と」


(ん……? 今軽く流してたが、白銀が義兄上だの姉上だのと言わなかったか?)


(そういえば、白銀の姉の名前が“琥珀”って言ってたような――?) 


「…………どこから情報が漏れた? 龍一郎か!?」


「…………ご明察」


 清野は肩をすくめて見せた。

  

「くそっ、アイツ、姉上には甘いから……」


「ついでに聞いたが、今夜龍一郎の店でオムライスを食べるそうだな――」


「なっ! アイツ……!

 どこまでも口が軽い男だ!」


(ん? そうすると、琥珀の旦那は清野だと言っていたから――)


「清野って! 海軍大将・清野(セイノ)侯爵閣下のことだったのか!?」


 睨み合う男二人の間から、亜嵐の間の抜けた声が響く。


「あっ……」


 両手で口を押さえ、「しまった!」という表情の亜嵐に、陸軍と海軍の大将はお互いに顔を見合わせる。


「……なんだ、まだ言っていなかったのか?」


「見合いをしたのは昨日だ。

 見合い当日にそこまで言わん」


「……なるほどな、では話が早い。

 今夜のオムライス、我ら夫婦もご一緒させていただこうと」


「何を馬鹿なことを!」


「琥珀の発案だ。

 ……あの女、一度言い出しから何が何でもきかんからな――」


「…………っ…………」


「それは、お前が一番よく知ってるだろ?

 龍也……」


「…………くっ…………。

 不本意だが……、そういうことなら仕方ない――」


「亜嵐少尉、すまないが姉夫妻に付き合ってくれ――」


(なんだその陸軍海軍大将会議はぁぁぁぁあ!!!)        




✕✕✕


 清野は妻・琥珀を迎えに行くと言うので、亜嵐と白銀は二人で車に乗り込む。


「さっき言ってた“龍一郎の店”に行くのか?」


「ああ」


 白銀はハンドルを握りながら答える。


「オレ、()()()()()でいいのか?」


 白銀は亜嵐を一瞥する。


「そのままでいい。

 俺はどちらのお前でも構わん」 

 

「――それに、清野(あの馬鹿)のせいで予約した時間に遅れそうだ――」


(海軍大将を馬鹿呼ばわりか――)


(いや、白銀(コイツ)も陸軍大将だけど――!)


「…………その、龍一郎の店は遠いのか?」


「いや、すぐそこだ」


「お前も知ってる店だ――」


「オレも知ってる店……?」


 大通りから少し入った裏路地に白銀は車を駐車する。


「ん? ここって……」


「そうだ。昨日お前がクリームソーダを食べた店だ」


「く、くりーむそーだの店!!」


 亜嵐の菫色の瞳がキラッと煌めく。


「……今日もクリームソーダを頼むか? それともパフェにするか……?」


「ぱ、ぱふぇ……だと!?」


「なんだ? パフェは知らんのか?」


「ば、馬鹿にするな! ぱふぇくらい知ってる!

 こう……あいすとかくりーむとかがのってるアレだろ!!」


「まぁ、間違いではないな――」


「姉上も、ここのパフェをよく食べている。

 一緒に注文するといい」


「うっ……」


(“おむらいす”に“ぱふぇ”だと!?)


(今日、オレは死ぬのか!?)


 狼狽する亜嵐に白銀は頬を緩める。


「――行くぞ」


「あ、ああ」


 二人は龍一郎の店こと『カフェ・ノワール』に入店する。



 

 ――カラン、カラン、カラン。


 呼び鈴の音。


「はーい、待ってたよ」


 奥から飄々とした声が降り注ぐ。


 姿を現したのは長い黒髪に墨色の瞳を持つ青年。


「いらっしゃいませ。

 『カフェ・ノワール』にようこそ――」


 青年は頭上にシルクハットでも被っているかのように指先を前髪あたりで滑らせる。

 そして、そのまま見えないシルクハットをクルッと宙で回すと胸元に抱え込み、西洋の騎士が行うような完璧なお辞儀をしてみせた。


「……どうも、昨日のくりーむそーだ、美味しかったです」


 亜嵐も丁寧にお辞儀をする。

 そして、ハッと我に返る。


「しまった! オレ、昨日ここには()の格好で来てたから“はじめまして”だった!!」


(白銀と一緒だと、どうも調子が狂う――) 


「あははははは!

 噂通り面白いねぇ、キミ」


 黒髪の青年がお腹を抱えて笑う。


「う、噂!?」


 亜嵐が一歩後に飛び退く。

 飛び退いた亜嵐の両肩を掴み、白銀が耳元で囁く。


「……()、コイツの名前は刻藤(コクトウ) 龍一郎(リュウイチロウ)

 この喫茶店のマスターで、元軍人の情報屋だ――」


「情報屋……?

 ってか顔近すぎる!!」


 蘭は白銀を振り払う。


「あははは。

 そ! 俺は情報屋! だから()()()()()()()()の秘密なんかもなんでも知ってる」


「……なっ!」 


「それにしても、さすがの陸軍大将も()()()女の子には甘いんだね」


 刻藤は嬉しそうに墨色の目を細める。


「はぁ!? 惚れただぁ!? 何言ってんだ!

 コイツがオレに惚れてるわけないだろ!?

 コイツは軍で人一倍オレをしごいてるような鬼上官だぞ!!」


 蘭は息を荒げて刻藤に食いかかる。


「そうかな? じゃあなんで龍也はキミとお見合いなんかしたんだろうね――?」


「そんなん知るか!! 情報屋なんだろ!?

 それくらいの情報、仕入れとけよ!!」


 プリプリ怒る蘭を横目に、白銀は刻藤を睨みつける。


(でも、……確かになんで()()だったんだ――?) 


「蘭……。お前が俺のことをそんな風に思っていたなんて――」


「げぇ! つい本音がぁぁぁぁ!!」


 頭を抱えてしゃがみ込む蘭に、刻藤が目線を合わせる。


「あはははは! それじゃあ全然フォローになってないよ!」


「龍一郎。蘭から離れろ――」


 蘭の肩に手を置こうとする龍一郎に対して、すかさず牽制する白銀の冷たい声。


「はは。大将閣下は嫉妬深いことで――」


 刻藤は立ち上がり、奥のテーブルに視線を投げる。


「あそこの席で待っててよ。

 龍司と琥珀ちゃんももうすぐ来るからさ」


 刻藤がウィンクをして、二人をテーブルに案内する。


「今日は貸切だから、思いっきりハメを外していいからね、()ちゃん」




ご覧いただきありがとうございます!


新キャラが怒濤の勢いで登場する賑やかな回になりました。

個人的には蘭ちゃんの心の声の「なんだその陸軍海軍大将会議はぁぁぁぁあ!!!」が書いていてめちゃくちゃ気に入っています笑


カフェ・ノワールに舞台が移り、念願のご馳走オムライスとパフェ……。

そして次回、いよいよ白銀の姉・琥珀が登場です!

一体どうなってしまうのか、次回もお楽しみに!


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