03 護衛騎士
これは私を城から離すための追放?
それとも別の意味が…?
ルーシャの脳内は今にも爆発してしまいそうなほど、沢山の情報が錯綜した。
私が知るミエルタは、帝国最北端———敵国との国境沿いにある地域だということくらいだった。
公爵のあの反応を見るに、北部には私の知らない何かがあるらしい。
———何も知らない”名ばかりの皇女”
混乱する頭の中でふと昔聞いたその言葉が脳裏を掠めた。
手に汗が滲む。
私の困惑を悟られたくない。
…特に皇后には。
「承知いたしました。」
ルーシャは再び皇帝へ頭を下げ、ハッキリと伝えた。
そうよ。今までジーナ宮で大人しく生きるだけだったじゃない。
知らない地の何がそんなに怖いというの。
「皇女殿下……!?」
ルーシャの後ろにいる公爵は驚きの声をあげる。
そんなものは無視してルーシャは続けた。
「皇帝陛下直々の命令をを断る理由はございません。この帝国の為、私ルーシャ・ビア・タリアナはミエルタ城へと向かいます」
この荘厳な光の間で、天使のような甘く優しい声が静かに響いた。
「ジーク公爵」
皇帝が静かに名を呼ぶ。
「はい、陛下」
「後ほど、執務室へ来い」
その瞬間、公爵の表情が僅かに強張った。
「承知いたしました。」
皇后は目を細めるが、皇帝は何も言わない。
ただ玉座から静かにルーシャを見つめていた。
「我が帝国の皇女の案内御苦労だった。其方はもう去れ。」
何か言いたげな公爵も皇帝の前では何も言えず、言われるがままに光の間を出た。
「ルーシャよ、顔を上げろ」
父上の声に反応して、ルーシャはゆっくりと顔をあげる。
気のせいだろうか。
一切感情を見せなかった父が、少しばかり優しく微笑んでいるように見えた。
その表情に驚くルーシャだったが、すぐさまいつも通りの”皇女”へと表情を戻す。
「慣れない地は不安であろう。お前にはこれから新しい護衛騎士を任命する」
入れ、と言う父上の言葉の後、ルーシャの後ろの扉がゆっくりと開いた。
考えるよりも先に体が勝手に動いていた。




