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捨てられた令嬢は、嵐の魔力で自由を謳歌する  作者: たま


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4/5

4話 実家からの刺客は、とっても「軽かった」

数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。

拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。

4話 実家からの刺客は、とっても「軽かった」

平和な(?)学園生活を揺るがす影は、意外な場所から現れた。

放課後、私が購買部で「辺境直送・激辛干し肉」を買い占めていた時のことだ。

「……見つけたぞ、一族の恥晒しめ」

背後から声をかけてきたのは、実家のアルマード公爵家が飼っている暗部「影の牙」の面々だった。

彼らは父・公爵が「言うことを聞かない娘を連れ戻し、無理やり政略結婚させる」ために放った刺客。

全身を黒装束で包み、いかにも「裏稼業です」という空気を醸し出している。

「お父様も相変わらずね。こんな公衆の面前で、恥ずかしくないのかしら」

「黙れ! 公爵閣下の命により、その不遜な口を呪術で封じ……――」

刺客が不気味な呪いの呪文を唱えようとした、その時。

彼らの足元から、ボコボコと不吉な泥が噴き出した。

「なっ、なんだ!? 動けん!」

「お兄様?」

現れたのは、顔色の悪いディーンだった。彼は土魔法で刺客たちの足場を固め、そのままコンクリート詰めのように固定してしまった。

「ケイト、逃げろ! こいつらが使うのは『血の呪縛』だ。公爵家の血を引く者なら、抗うことは……」

「お兄様、胃薬飲みました? 顔色が土魔法と同じ色ですよ」

私は平然と刺客の一人に近づき、その額を指先でツンと突いた。

「この程度の呪術、辺境の冬に比べれば、冷たいかき氷を急いで食べた時の頭痛より軽いですよ」


「さて、お父様。娘に呪いを送るなんて、お行儀が悪いわ」

私は刺客が放とうとした「声を奪う呪い」を、人差し指一本で受け止めた。

指先でくるくると回る黒い霧。これが、アルマード公爵家に伝わる禁忌の呪術。

「ケイト! 触るな、それは術者にしか解けない――」

「お兄様、魔法には『等価交換』と『ベクトル』という概念があるのをご存知?」

私は風魔法で、その呪いの塊を極限まで圧縮した。

さらに、水魔法のレンズで太陽光を集め、呪いに「熱」というエネルギーを添加する。

「辺境流・挨拶の作法――『因果応報ブーメラン・デリバリー』!」

私が指をパチンと鳴らすと、黒い塊は音速を超え、王都の中心にある公爵邸へと飛んでいった。

狙いは正確。お父様が今まさに、豪華な椅子に座って「ケイトは今頃泣き叫んでいるだろう」とワインを飲んでいる、その口の中だ。


その数分後。

アルマード公爵邸では、大騒動が起きていた。

「……っ!? ……っ!!」

公爵は、自分の声が一切出ないことに気づき、顔を真っ赤にしてのたうち回っていた。

しかも、ただ声が出ないだけではない。

ケイトが「風」と「熱」を混ぜたせいで、彼が何かを喋ろうとするたびに、**口から派手な花火と『辺境バンザイ!』という爆音**が飛び出す呪いに書き換えられていたのだ。

「閣下! 何をおっしゃって……ドーン! パチパチパチ!(辺境バンザイ!)」

「あわわ、閣下が発火している!」

使用人たちが混乱する中、公爵は自らの呪いによって、一晩中「辺境の素晴らしさ」を爆音で夜空に打ち上げ続ける羽目になった。


学園の廊下。

刺客たちがシュールなオブジェとして中庭に飾られるのを眺めながら、ディーンは深いため息をついた。

「……ケイト。父上の呪いを、あんなふうに書き換えて送り返すなど、前代未聞だぞ」

「あら、お父様も寂しいかと思って、賑やかにして差し上げたんです。親孝行でしょう?」

「……もういい。私が間違っていた」

ディーンは、妹を守ろうと必死だった自分を笑うように、肩の力を抜いた。

この規格外の妹に、守りなど必要なかったのだ。

「お前は風だ。……どこまでも好きに飛んでいくがいい」

「ええ。でも、お兄様が飛べなくなったら、私が嵐で無理やり飛ばしてあげますからね」

「……それは、勘弁してくれ」

ようやく少しだけ笑った兄の横顔を見て、私は満足げに干し肉を噛み締めた。

辺境の風は、今日も絶好調。

王都の空を、少しだけ面白くしてあげようと思う。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

誤字脱字のご連絡ありがとうございます。

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