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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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「全然ダメでもいいじゃないか」

 自分語りを『ちょっときいて』など、いい加減にしろと思う場合は帰ってくれ。別に読まなくて結構。

 思ってることを書いておくと、後にネタになるかもしれんしな。

 今日は自分のために書いておく『ちょっときいて』……矛盾している。(苦笑)


 研鑽を積むという行為は途方もない。

 終わりなどというものはなく、追い込むほどに毎日がつらい。

 自分が伸びているという実感など、階段を上るほどに薄れていく。

 当然だ。0が1になる時は実感は無限大だ。1が2になる時だって、倍の手ごたえを感じる。

 しかし、10が11になる頃には1,1倍。100が101になる頃には1,01倍の実感しかないのだ。自分じゃ気づけるはずもない。


 そもそも。

 夢を追うという作業が途方もない。

 夢などを抱くから人は絶望するし、

 夢などを抱くから人は嫉妬するし、

 夢などを抱くから人は劣等感に苛まれる、人を傷つける、何かと人と比べ始めて窮屈に人生を生きなければならない。

 この前小田急線でおきたナイフの切りつけ事件の犯人だって、何かに希望を持って、それに至らない自分に絶望したことが事件の発端だったんじゃないか。

 始めから、たとえば自分のことをミミズのように思い、ミミズで満足できる人間なら、あのような動機で人は刺すまい。

 夢を持つから、希望を持つから、人は何かと戦わなければならなくなる。

 夢というものは、百害の元なんじゃないだろうか。


 しかしそれでも、夢を持て。

 人間はさ、動物と何が違うって、食う、寝る、遊ぶ、以外のことができる唯一の動物だ。

 それは愚かなことなのかもしれないが、しかしとりあえず、生きるために必要のないことができる特権を持っている。

 だからこそ、人間として生まれたからにはどれだけ無駄なことができるかってことを楽しまなきゃ、何のために人間に生まれてきたかってことになる。

 そりゃ、夢を見れば争いも起こる。嫉妬もすれば絶望もする。迷惑がかかることこの上ない。

 しかし、車に乗りゃ排気ガスが出る。都会でクーラーつければ都市の温度は2~3度上がる。野菜を食べるだって肉を食べるだって、厳密に言えば他の生命を奪いながら生きながらえているわけだろ。

 存在するだけで、何かに影響を与えるのが生命というものなのだ。

 それがどうしようもなく嫌だという人間は、どこかでひっそり暮らせばいいさ。だけど、一生懸命自分で走り尽くすために地球の酸素を余計に消費することさえ許されないのでは、人間として生まれてきた意味はない。


 つまり、自分で自分につばを吐くような行為にまで至らなければ、人間は夢くらい見ていいと思うんだ。

 絶望しようが嫉妬しようが(それで相手をぶん殴り始めなければ)それこそが人間らしさじゃないだろうか。だから、小田急の犯人は自分で自分につばしちゃったわけだが、人間らしく生きるのは他の動物にはない人間の特権なのである。

 人間に生まれたんだ。夢くらいは見ろと。いいたい。


 しかしつらい。

 そのために研鑽を積むことは、目の前に流れる大河に石を一つずつ放り投げて、川の一角に島を作るようなものだ。実際それが可能かも分からないのに、誰がそんなアホウなことをやり続けるのか。

 毎日同じ事を続けるのだ。大概飽きてるし、効果も期待できないのではモチベーションだって上がらない。

 やらなくても誰も何も咎めない。サボろうと思えばいくらでもサボれてしまう。

 気が付けば「あっちが痛いだの、今日は雨だの」と言い訳をして、「今日はやめるか」となってしまうわけだ。

 俺はそんな時、自分に言い聞かせることがある。

「全然ダメでもいいじゃないか」

 ……やってみて、全然調子が上がらないかもしれない。それでもいいじゃないか。

 全然ダメでもいい。やってみろ。そのステージに立つことが大切なのだ……と。

 ……すると不思議とやり始められるし、飽きてだるくてしょうがねぇと思っても、日課をこなし始めるものだ。

 つらいけどやり続ける。「全然ダメでもいいじゃないか」。……人生の無駄を楽しむのが、人間の特権なのだから。


 以上、自分語り、終わり。

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