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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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だいじいれ

 姫(4)には、自分の私物を入れる棚がある。いくつか開けてセットすれば机にもなるシロモノで、ママが「自分のものは自分で管理しなさい」という思いを寄せて用意したものだ。魔王様(♀)も同様の棚を持っており、リビングの端に二つ、ひっそりとたたずんでいる。二人のお気に入りの棚だ。


 魔王様(♀)はとても几帳面でいらっしゃるので、私物はしっかりと管理され、整然と収納されているのだが、姫(4)はどちらかと言えば大雑把な性格なため、出した後、しまう場所が別になり、どこに何があるか分からなくなることがよくある。

 「あれはどこ? これはどこ?」と探すさまはまるで「ここはどこ? わたしはだれ?」と自問する異世界転生者のようだ。

 ある日のこと、とりあえず、その解決策として、

「何をどこに入れたか書いておけば?」

 という提案がされた。

 それはどこに入れたかを忘れないためでもあるし、それをすればどこに戻せばいいかを把握するのにも一役買うだろう。

「それは名案だわ!」

 ということで、姫(4)は意気揚々と折り紙とハサミを用意して、各棚に貼り付けるメモ用紙を作り始めた。……のだが……。


 棚は三つの引き出しと、三つの開き戸がある。それぞれ収納できるようになっているので、収納場所は六つという認識でいい。

 姫(4)はセロハンテープをつかって、その棚の一つ一つに折り紙の裏に書いたメモが見えるように貼り付けた。

 これで大丈夫。もう姫(4)の大事なおもちゃたちがどこにいったか分からなくなることもないだろう。私もそれを聞きつけて張り紙のされた棚を見せてもらった。

 そうしたら、六つ張り紙にはそれぞれ、象形文字のようなギリギリのひらがなで、こう書かれていた。


・だいじいれ

・ちょっとだいじいれ

・すごくだいじいれ

・すごくすごくだいじいれ

・だいじだいじいれ

・めっちゃちょっとだいじいれ


 ……

 …

 ……私は思わず、香ばしい気持ちで胸がいっぱいになった。


 いや、確かに大事なものを入れてるという気持ちで「分かるように」書いておいたのかもしれないが、こ、これでは……(苦笑)

 しかも『めっちゃちょっとだいじいれ』って、どの程度大事なんだ。そして『すごくすごくだいじいれ』と『だいじだいじいれ』はどっちが大事なんだ。

 てかこれでどこに何が入っているのか分かるのか?この張り紙で、姫(4)はもう物を探す人生にピリオドが打てるのか!?

 ……『だいじいれ』となった棚を、満足そうに眺めている姫(4)を見ながら、後ろで勝手にハラハラしている親父の図……(笑)。


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