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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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我慢の素質

 夢を諦めるのは、才能のせいではない。

 夢は旅のようなもの、歩き続けさえすれば、いつかはきっと行き着けるものなのだ。

 ……僕の大好きなロックバンド『GLAY』のリーダー、TAKUROさんの金言だ。


 夢に限らず、何を目指すにしても大切なことは歩き続けることだと、僕は思う。才能があっても、いや、どんなことでも小器用にこなせる才能があるからこそ、すぐに飽きてしまって続かない人たちを、僕はこれまで何人も見てきた。

 才能があることはすばらしいのだけど、才能があるからこそ根無し草で、なぜか僕みたいにアンテナの低い、流行に取り残されながら、いつまでもいつまでも一つのことを続けている人間のことを「うらやましい」とか言う人もいる。

 違うんだ。僕は、他にできることがないだけなんだ。そして得た自分の才能に対して、多少我慢強いだけなのである。


 夢を諦めるのは、才能のせいではない。

 夢を掴んでもいない僕はまだ、その言葉を実感することはできないけど、もしそれが本当だとすれば、夢に必要なのは才能よりも、『継続する力』だ。

 知り合いに企業家がいるのだが、「新しい人が入っても、続かなくて困る」と嘆いている。採用してもすぐに辞めてしまうらしい。根性がないのか?ゆとり教育が云々なのか?

 言っておくが、その企業家の性格に難はない。温厚で、寛容な部類に入る。


 仕事や自分の目標に対する向き合い方は、きっと戦前、高度成長期、バブル後でだいぶ違っているのだろう。僕はその原因を学校教育のあり方と、ゲームの普及、娯楽の多様化が担っていると思っているが、今日はその話は置いておいて、どのスタイルに身をおくにしても『継続する力』に欠ける人が、昨今増えていることは問題じゃないか?ということについて書く。

 なにせ僕も、本業でそれを感じている。続かない……というか、仕事や自分の目標の優先順位が、自分のライフワークにおいて随分と下位なのだ。

 「何かがあれば一番初めに切り捨てるものは何か」と問われれば、まず切り捨てられてしまうところに、仕事や自分の目標を置いている人が多い気がする。

 人の勝手で余計なお世話だが、それでは確かに仕事も続かないし夢も追えまい。


 そのこと自体はさっき言った教育のあり方や娯楽の変化云々も言えるけど、こと『継続する力』が欠けている原因を考えるとするならば、僕はひとえに、日本人が我慢をすることを忘れてしまったからだと思っている。

 暑ければすぐにクーラーをつける。腹が減れば24時間コンビニが開いている。物がほしければインターネットで注文したものが明日には届く。クレームがあれば必ず窓口がある。

 ストレスフリーな生活環境が、人間から我慢を取り去っていく。我慢することに慣れないから小さなことに我慢ができなくなる。

 我慢ができないから、継続つづかないのだ。


 我慢のランクの低下は本人は気付かない。社会も気付きにくい。

 例えば江戸時代に江戸からお伊勢参りに向かった人は当然徒歩だっただろう。しかし今、「歩け」といわれて「行ってきます!」と敬礼できる人なんているだろうか。車や電車が当たり前、でなければいく気力すらない……というのが普通なはずだ。

 人間にとって"アタリマエ"は我慢しなくていいものとなり、不満の対象にすらなる。

 それが……我慢しなくていい水準が今の日本であまりに高くなりすぎて、日本人は、何の我慢もできない動物になってしまったのではないだろうか。


 結果、多少の逆境に打ち勝てずに、何事も継続できないとすれば、夢だけではない。自分の人生自体が危うくはならないか。

 成熟しきった社会が、最終的に人間から気力を奪っている事実に……後戻りはできないのかもしれないけども……気付かなければいけない時期にきているのではないだろうか。

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