私、橘楓。 vol.092. 「へへ…、やりやがった。」
今まで平凡でも幸せに生活してきた家族にふいに訪れた不運。
夫の浮気がもたらした夫婦の亀裂、そして離婚。
それに追い打ちを掛けるように、母親の交通事故。
その交通事故を発端に姉が大学進学を諦め、
今まで付き合っていた彼氏とも喧嘩別れ、
そんな中で妹が懸命に家族を元の幸せな家族に戻すと言う物語。
その妹役を陽子が演じているのだった。
舞台が終わった途端にいきなり怒涛の拍手が湧き上がる。
その拍手の中で様々な声援が贈られたようだったが、
拍手に消されて良く聞こえない。
「凄~い拍手~!」
そう言いながら抱き合って喜ぶ楓と朱実。
「やった、やった陽子、やった~凄~い!智志~~!」
そう言って智志を見ると、
「…ん、うん。へへ…、やりやがった。」
そんな智志の肩を左から抱き締める大輔。
「すげえじゃん、陽子。」
「何…、智志~目~真赤っ。」
楓が笑いながら…。
「…ん、かかか、見惚れちゃって~この~!」
慎二が握り拳で智志の右手にコツン。
そんな光景を前の席で見ていた奥山と、そして陣内…、
「あなたたち…。えっ…???」
「お前等…???」
そして相磯が…、
「ふふふ…そういう事だったのね。」
会場を出て、仲良く歩く5人の生徒たちを見て相磯…、
「ほ~んとに、仲良しね~あなたたち…。ふふ…。」
その相磯の声を聞いていきなり顔を赤める楓と朱実。
「あっ…、あっ…、あ~!」
口ごもる楓に、朱実も…、
「えっ…、えっ…へへ…へ…。」
と、慎二の後ろ姿の腰の部分に人差し指で小突いて…。
「…ん…???どした~???」
その声で大輔も、後ろの楓に振り返る。
「ん…???楓…???」
「な~んでも…ない。」
奥山、
「さて…、じゃ…私たちはこの辺で…、相磯先生…、陣内先生…、ちょっと私に…付き合って下さいな。」




