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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
六章 情けは人の為ならず

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第65話 犯人

それから数日後の放課後。

校門を出たところで僕は名前を呼ばれた。

振り向くとそこには、

赤みを帯びた橙色の髪の長い女が

立っていた。

「む、椋鳥さん・・?」

「覚えていてくれて光栄です」

椋鳥はそう言うと小さく頭を下げた。

「ど、どうしたんですか?

 また何か・・」

僕は嫌な予感がした。

「砧明日美さんが

 亡くなったことについて。

 少しお話が・・」

どくん。

心臓が跳ねた。

「あ、明日美の・・」

僕は大きく息を吸い込んだ。

「い、一体何の話が・・」

「彼女を殺した人物について」

僕はハッと息を呑んだ。

「続きはこの前のお店でしましょう」

椋鳥が僅かに口元を綻ばせた。

それは

どこか見る者を不安にさせる笑顔だった。

僕は無意識のうちに頷いていた。


『桐壺亭 千代田町店』に入ると、

夕暮れの光が窓から差し込み、

店内を淡く染めていた。

僕達以外に客は1人しかいなかった。

くたびれた1人のサラリーマンが、

ドリンクを手に、

ただぼうっと外を眺めていた。

店の隅々まで

どこか気の抜けた空気が漂っていた。


「遠慮せずに好きな物を頼んで下さい」

テーブル席に着くなり、

椋鳥は前回と同じ台詞を口にした。

「家に帰ったら晩御飯があるので、

 飲み物だけにしておきます」

僕も前回と同じ言葉を返した。

結局。

僕はアイスコーヒーを、

彼女はオレンジジュースを注文した。


「・・それで。

 何の話があるんですか?」

注文した品を運んできたウエイターが

立ち去るのを待ってから、

僕は改めて口を開いた。

「その前に。

 あなたは呪物を目にしたことが

 あるのではないですか?

 そして。

 それは砧明日美さんの持ち物だった」

椋鳥の視線が僕に突き刺さった。

僕はごくりと唾を飲み込んだ。

「・・実は。

 明日美の部屋で、

 ウロボロスを模した

 怪しげな彫像を見たことがありました」

椋鳥が頷いた。

「砧明日美さんは、

 その呪物のために殺されたのです」

「こ、殺された・・?

 ど、どういうことですか?」

「呪物は所持者が死なない限り、

 その者の元から

 離れることはありません。

 不思議なことに。

 一時的に手元を離れても、

 ふたたび持ち主の元へと

 戻ってくるのです」

「そ、それじゃあ・・。

 明日美の呪物を奪うために・・」

椋鳥がふたたび頷いた。

「・・誰ですか。

 誰が・・明日美を殺したんですか!」

自然と声が大きくなった。

椋鳥は僕から視線を外すと、

ストローをグラスに挿して、

そっと口をつけた。

僕はただ黙ってその様子を見つめていた。


「一文字宗尊という探偵です」

椋鳥がゆっくりと顔を上げた。

その目が真っ直ぐ僕を捉えた。

「い、一文字・・宗尊・・」

椋鳥が静かに頷いた。

僕はグラスを手に取って、

ゴクゴクとアイスコーヒーを流し込んだ。

「どうしてそんな物のために・・。

 一体・・明日美の呪物には、

 どんな意味があったんですか・・」

僕は気持ちを落ち着けるために、

話題を変えた。

「砧明日美さんの呪物は、

 対価を支払うことによって、

 所持者の願いを叶えるという物です」

「願いを叶える・・呪物ですか。

 そんな物。

 本当に存在するんですか?」

「幼馴染のあなたなら、

 心当たりがあるのでは?

 父親の会社を救った対価は

 母親の命でした。

 類稀なる美貌の対価は妹の命です」

「ま、まさか・・!」

僕は言葉を失った。

「支払う対価は

 願いに釣り合ったものです。

 生徒会長選挙の時は

 自らの盗撮動画。

 そして・・。

 サッカー部のエースを

 彼氏にするために、

 彼女は薄汚い中年男に犯された。

 砧明日美はそうやって

 願いを叶えてきたのです」

「ちょ、ちょっと待って下さい。

 あ、頭が混乱して・・」

あの盗撮動画が・・願いの対価?

薄汚い中年男に犯された・・?

一体。

椋鳥は何を言ってるのか。

僕はグラスに残ったアイスコーヒーを

飲み干した。

心臓の鼓動が早くなっていた。

僕は大きく息を吐き出した。


「・・一文字という探偵のことを

 詳しく教えて下さい」

僕は努めて冷静を装って訊ねた。

「一文字の呪物は・・。

 『口は災いの元』と言います。

 彼の問いに嘘を吐けば。

 舌を抜かれて死ぬでしょう」

空のグラスを持った手が

僅かに震えていた。

僕は慌ててグラスから手を離すと、

ポケットに突っ込んだ。

僕の指が、

ツルツルとしてひんやりと冷たい

物に触れた。

僕はそれをそっと取り出して、

テーブルに置いた。

それを見た椋鳥の目が大きく見開かれた。

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