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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
四章 時は金なり

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第52話 一文字との出会い③

「そ、それは・・まさか」

私はテーブルの上の彫像を見つめたまま、

その場に立ち尽くしていた。

「・・あなたの物ですか?」

私は改めて腰を下ろして、

一文字の顔を正面から見た。

その時。

結女がグラスを2つ運んできた。

「お待たせしました。

 キューバ・リブレとマンハッタンです」

一文字がグラスを手に取って掲げた。

「話の続きは乾杯の後にしよう」

私はグラスを持って

一文字のそれに軽く合わせた。

一文字がにこりと微笑んだ。

「こいつは俺のお守りさ」

私は視線をそらしてグラスに口をつけた。

「その呪物・・いえお守りは・・」

「おっと。

 その前に1つ忠告しておく。

 俺との会話中、

 嘘を吐くのはやめるんだ。

 さもなくば・・死ぬぞ」

グラスをテーブルに置いた一文字が

静かに口を開いた。

グラスを握る手に力が入った。


「・・それが。

 その呪物・・いえお守りの、

 呪いの力ですか」

「ククク。

 呪い・・ね。

 確かに。

 そういう考え方もできるか。

 どちらにしても。

 美人が死ぬ姿を目の前で見たくはない」

一文字が片目を瞑った。

私はもう一度グラスに口をつけて、

唇を湿らせた。

そして。

そっとグラスを置いた。

「・・あなたの目的は何ですか?

 どうして探偵の方が

 私達のことを調べてるんですか?

 あなたは何を知ってるんですか?

 誰かに頼まれたんですか?

 その呪物は

 どこで手に入れたんですか?」

一文字は「ククク」と笑うと、

グラスを呷った。

「そんなに色々と聞かれても、

 一度に答えられないぜ」

それから。

ゆっくりと口を開いた。

「御堂関白が

 莫大な財産を手に入れたのは、

 このお守り・・いや、

 君に言わせると呪物か、

 その力のおかげだろ?」

私はハッと息を呑んだ。

微かに震える手をテーブルの下に隠し、

グッと握りしめた。

「さらに。

 驚くべきことに。

 御堂関白は君と櫓源之介の同級生、

 いわゆる幼馴染だ。

 だが。

 今の御堂は・・。

 とても25歳の若者とは思えない。

 つまり。

 御堂は自分の時間と引き換えに、

 莫大な財産を手に入れた、

 そうだろう?

 そう考えると。

 奴の所持している呪物は

 『時は金なり』ってとこかな」

一文字はにやりと口元を歪めて、

さらに続けた。

「そうそう。

 俺が君達のことを調べたのは、

 誰かに頼まれたからじゃない。

 それに・・敵でもない。

 むしろ味方だ」

一文字はふたたび「ククク」と笑った。


「・・味方・・ですか?」

「ああ。

 君達が探してるのは、

 何らかの呪物だろう?

 だから。

 不可解な怪死事件を追っている。

 違うか?」

私はそれには答えずに、

グラスに口をつけた。

「俺もその呪物探しを手伝ってやろう。

 悪い話じゃないだろ?」

「・・目的は何ですか?

 理由もなく、

 協力するなどと言う人間を

 私は信用できません」

「ククク。

 可愛い顔をして、

 ずいぶんと疑り深いな。

 なるほど。

 いいだろう。

 俺の目的は金だ」

「お金・・ですか」

一文字はグラスを手に取ると、

グイッと呷った。

それから。

私を真っ直ぐに見て人差し指を立てた。

私は眉をひそめた。

「10億。

 10億円でどうだ?」

「えっ・・」

すぅっと肩の力が抜けた。

私は小さく息を吐いて、

そっとグラスに口を当てた。

コクコクと液体が喉を伝って胃に落ちた。

ふいに笑みがこぼれた。

「何がおかしいんだ?」

一文字の鋭い目が私を睨んでいた。

「いえ・・すみません。

 その程度の金額で

 いいのかと思いまして」

「その程度の金額か・・。

 それを聞いて安心した。

 人間、

 欲をかくと

 碌なことにはならないからな」

一文字が「ククク」と笑った。


「あなたのその言葉・・。

 完全に信用することはできません。

 他に狙いがあるのではないですか?」

「心配するな。

 俺の言葉ほど信用に足るものはない。

 なぜなら。

 俺は嘘を吐けないからな」

私は首を傾げた。

「御堂が自分の時間と引き換えに

 大金を得たように。

 俺は真実を述べることの代償として、

 人の嘘を咎めることができる。

 つまり。

 俺は誰に対しても、

 嘘を吐くことができない。

 もし。

 俺が偽りを述べたら。

 その瞬間・・俺は死ぬ」

私は黙って一文字を見つめた。

「どうだ?

 これで。

 俺が信用に足る人間だってことが

 わかっただろ?

 で。

 御堂が探している呪物は何だ?

 念を押すが。

 答えには気を付けろよ。

 美人が舌を噛み切って死ぬ姿は

 見たくないんでな」

そして一文字は

グラスに残った酒をクイッと飲み干した。

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