表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言霊怪奇譚  作者: Mr.M
四章 時は金なり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/55

第48話 木の葉を隠すなら森の中

事務所を出た私は

『波多第一ビル』の前に

とまっていたタクシーに乗り込んだ。

行き先を告げて

シートに背を預けたところで、

バッグの中のスマホが鳴った。

源之介からのメッセージだった。

私は添付されたファイルを開いて

それに目を落とした。


やがてタクシーは

大通りに面した校門の前でとまった。

タクシーを降りると熱気が体を撫でた。

私はつい顔をしかめた。

時計を見ると16時を回っていた。

『明星学園』の校門から

制服を着た生徒達が

続々と出てくるのが見えた。

その中の1人の女子生徒に目を奪われた。

肩の下まで伸びた黒髪。

丸い縁なし眼鏡の奥には、

少し吊り上がった二重の瞳。

小ぶりで整った鼻筋に、

形の良い薄い唇。

透き通るような白い肌。

女の私から見ても

溜息が出るほどの美人だった。

そのスタイルの良さは

制服の上からでも

目を見張るものがあった。


「お聞きしたいことがあるんですが」

私は少女に声を掛けた。

少女が私を見て首を傾げた。

「突然ごめんなさい。

 怪しい者ではないんです」

私が名刺を差し出すと、

少女はそれを手に取った。

「ルナ・プレーナ・・?

 椋鳥京花さん・・ですか?」

「この学校に

 三宝院崇さんという生徒が

 在籍されているはずなんですが、

 ご存じですか?」

「崇・・ですか?」

少女が眉をひそめた。

私は無言で頷いた。

「崇は・・クラスメイトですけど。

 あっ。

 丁度今、校舎から出てきました」

少女の指さす方に目を向けると、

校舎の出入口に、

1人の生徒の姿があった。


黒髪のおかっぱ頭。

目は細く黒目がちで、

まっすぐに据わっている。

高くも低くもない鼻は主張もほどほどに、

顔の中で静かに均衡を保っていた。

小さな口は薄い唇が

キッと閉じられている。

色白ですっきりとした輪郭。

その顔立ちはまるでこけしのようだった。


「あの・・崇にどんな用が?」

ふいに少女が口を開いた。

「個人的なことで少しお話がありまして」

「個人的な・・話ですか?」

少女の視線が私の全身をサッと撫でた。

少女の瞳の奥に、

嫉妬にも似た感情が滲んでいるのが

わかった。

「・・気になりますか?」

私は少し意地悪く問い返した。

「別に・・。

 私には関係ありませんから」

少女はそう言い捨てると、

くるりと背を向けて走り去った。


私は校舎の方へ視線を戻した。

先ほどの少年が怪訝な表情で

こちらへ歩いてくるのが見えた。

「三宝院崇さん」

私が呼び掛けると少年は足をとめた。

「今、明日美と話してましたよね?」

少年の目には警戒の色が浮かんでいた。

「ええ。

 あなたのことを聞いていました。

 そうですか・・彼女が。

 砧明日美さんだったのですね」

源之介から送られてきた

ファイルの内容が、

頭をよぎった。

砧明日美。

三宝院崇の恋人。

三宝院は彼女を手に入れるために

上京英雄を殺した可能性がある。

岩倉亮と西陣大作については

その動機を誤魔化すため。

それが源之介の推理だった。

備考欄に書かれていた文字は

『木の葉を隠すなら森の中』


「僕に・・何か用ですか?」

少年が眉をひそめた。

「少し前に。

 櫓源之介という人が

 訪ねてきませんでしたか?

 私と彼は、

 一緒に仕事をしているのですが」

「あっ・・」

少年がハッと息を呑んだ。

「源之介は今、

 別件で手が離せないので、

 私が代わりに

 話を伺いにきました」

そう言って私は頭を下げてから

名刺を出した。

「できれば。

 場所を移して話せませんか?」

私は出来るだけ自然に微笑んだ。

少年の顔に僅かな緊張が浮かんでいた。

少年がゆっくりと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ