第41話 同盟
鴉が啼いていた。
生温かい風が公園を通り抜けた。
「お前も・・呪われてる・・だと?
おいおいおい。
冗談は辞めろ。
お前はあの女の恋人だろ?
どこの世界に、
恋人に呪いをかける馬鹿がいるんだよ」
「ふんっ。
知るかよっ!
それにな。
恋人だと?
確かにそんな時期もあったけどな。
今や俺は・・奴隷だ。
あいつに見限られたら、
俺は死ぬ」
甘粕は吐き捨てるように言うと、
苛立たしげに髪を掻いた。
「へっ・・へっへっへ。
俺達は同じ立場ってことか。
へっへっへ」
ふいに浮橋が口を開けて笑った。
甘粕がそんな浮橋を冷めた目で見ていた。
「勘違いするなよ、おっさん。
俺とあんたの立場は全然違うんだよ。
俺は奴隷だが生き続けることができる。
だが。
あんたは来月には死ぬ運命だろ」
浮橋が口を開けたまま固まった。
「いいか、おっさん?
牡丹はあんたに
呪いについて話してないだろ?
つまり。
牡丹はあんたを生かすつもりはない
ってことだ」
いつの間にか。
公園を駆け回っていた子供達の姿が
消えてた。
日はまだ沈んでいなかった。
「チッ」
浮橋の舌打ちが
静かな公園内に響き渡った。
カァカァカァカァ
どこかで鴉が啼いた。
「仕方ねえ・・」
浮橋がぽつりと呟いた。
「今からお前ん家に行くぞ」
「あ?
どうしたんだ、おっさん?」
「殺るんだよ。
あの女を」
浮橋は「へへへ」と笑った。
「お前だって奴隷生活は御免だろ?
あの女を殺しちまえば、
呪いは解けるんだろ?」
甘粕が溜息を吐いた。
「そんな簡単な話じゃねーよ。
牡丹の呪いに関しちゃ、
そうはいかねーんだよ」
「何だと?」
「その逆だ。
牡丹が死んでしまえば。
俺達は2度と牡丹の経血を
手に入れることができねーんだ。
つまりだ。
遠くない将来・・死ぬ」
「な、何ぃぃぃぃぃぃぃ!」
浮橋の顔が奇妙に歪んだ。
カァカァカァカァ
どこかで鴉が啼いていた。
「く、くそがぁぁぁぁ!」
浮橋が怒りに任せて地面を蹴った。
「おっさん。
提案がある。
俺達は立場こそ違うが、
協力はできる、そうだろ?」
「協力だぁ?」
甘粕が小さく頷いた。
「そうだ。
俺は毎月、
牡丹の経血をあんたのために
手に入れてやる。
その代わり。
あんたはこの呪いの解呪方法を
探してくれ。
俺は家と仕事場の往復で、
自由がねーんだ」
眉間に皺を寄せたまま浮橋が腕を組んだ。
「・・そう言うことか。
確かに。
悪ぃ話じゃねえ・・。
つうか。
それ以外に方法はねえ・・か」
その時。
甘粕のスマホが鳴った。
「・・ああ。
ちょっと買い忘れた物があってさ。
・・ああ。
もう帰るよ。
・・ああ。
わかってる。
・・愛してるよ」
そして甘粕はスマホを切った。
「ご主人様か?」
甘粕は頷いた。
「すぐに帰らねーとマズい。
とりあえず。
おっさんの名前と連絡先を教えてくれ」
浮橋が白髪交じりの髪を
クシャっと掻いた。
「それがよぉ・・。
電話もスマホも持ってねえんだよ」
「はぁ?
一体どうやって生活してんだよ」
「んなこたぁどうでもいいだろ。
兎に角。
俺は浮橋っつうんだ。
そっちの連絡先を教えろ。
定期的にこっちから連絡するからよ」
鴉が啼いていた。




