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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
序章 口は災いの元

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第4話 彫像

緩やかに伸びる土手の上。

夜の帳が落ちたそこは、

世界から切り離されたかのように

静まり返っていた。

今、

『弁天公園』

から1人の男が出てきて、

土手へと続く階段を、

一段ずつ、

ゆっくりと上がってきた。


手入れの行き届いていない

白髪交じりのボサボサの髪は、

脂で鈍くぎらついた光を放っていた。

短い眉の下の大きな一重の目は丸く、

尖った鼻と小さな唇が並ぶその顔立ちは、

どこか爬虫類を思わせた。

こけた頬に無精ひげが生えていて、

乾燥した肌は、

くすんだ色をしていた。

身に付けている茶色のジャージは

上下共に色褪せていて、

所々に小さな黒いシミが残っていた。

年の頃は40代半ば。

やや猫背気味の背中には

抜けきらない疲労が張りつき、

どこかくたびれて見えた。


男は土手に倒れている

レインウェアの男の許へ歩いていった。

月明かりが薄っすらと川面を

照らしていた。


男はその体を覗き込んだ。

動かないことを確認してから、

屈み込んで

レインウェアのポケットに

手を差し入れた。

しばらく探るように手を動かしていたが、

やがて動きが止まり、

男は手を引き抜いた。

その手には財布が握られていた。

男は中身を確かめ、

札束を抜き取った。

その時。

もう1つのポケットから

何かがぽとりと落ちた。


それは小さな石ころだった。

大きさは掌にすっぽりと収まる程度。

その色は周囲の闇よりも黒かった。

にもかかわらず。

その形は妙にはっきりと見えた。

それは人の肩より上の半身を

形取った奇妙な彫像だった。

顔は男か女か区別がつかなかった。

身体は正面を向いていたが、

首が捻じれて

その顔が背中の方を向いていた。


男はそれを手に取ると、

ジャージのポケットに入れた。

それから立ち上がり、

一度大きく背伸びをすると、

踵を返してその場を去った。

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