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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
二章 同じ穴の狢

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36/53

第36話 同一犯

浮橋が領家町にある

『アサヒ温泉』を出たのは、

日もやや傾き始めた頃だった。

橙色に染まった通りには、

昼の熱気がまだ残っていた。

浮橋は軽やかな足取りで、

タクシーに乗り込んだ。

「葛城町まで」

浮橋はぶっきらぼうにそう言って、

シートに背を埋めた。

ラジオからはニュースが流れていた。

『・・先月。

 山城町の城下運動広場で

 明星学園の生徒2人が、

 何者かに襲われた事件に関して、

 意識不明で病院に搬送されていた

 岩倉亮さんが、

 昨夜亡くなりました』


「物騒な世の中になりましたね。

 子供同士の喧嘩ですかね?」

タクシーがゆっくりと走り出すと、

運転手が口を開いた。

「最近のわけぇ奴らは

 加減をしらねえから、

 やりすぎちまったのかもな」

「ですかね。

 そういえば。

 この事件と同じ日に

 高江町の住宅に強盗が押し入って、

 高校生が殺されたって

 ニュースでやってましたけど。

 確かあれも・・。

 明星学園の生徒でしたね。

 2件が同じ時刻に起こったことから、

 同一犯じゃないかって

 どこかの週刊誌が書いてましたよ」

「へぇ。

 やけに詳しいな」

「一時期テレビで騒がれてましたからね。

 でも。

 高江から山城まで深夜とはいえ、

 車を飛ばしても

 20分はかかりますからね。

 さすがに不可能ですよ」

「不可能・・ねえ。

 そんなことができるとしたら。

 呪い・・かもな」

「へっ?

 呪いですか?」

運転手がミラー越しに

浮橋の方を覗き込んだ。

浮橋はぼんやりと窓の外を眺めていた。


「もしかして・・お客さん。

 刑事ですか?」

「はんっ。

 どうしてそう思うんだ?」

「刑事は捜査上の秘密を

 一般人に漏らせないでしょう?

 だから。

 呪いとか言って誤魔化した。

 違いますか?

 それと。

 あとは空気感ですかね。

 長年色んなお客さんを見てきたんで、

 何となくわかるんですよ。

 お客さんの空気、

 カタギとは思えないんで」

「刑事はカタギじゃねえのかよ?」

「ははっ。

 こんなことを言うと、

 怒られるかもしれませんけど。

 警察なんてのは、

 国家権力を盾にした

 ヤクザみたいなもんでしょう」

「へへへ。

 あんた。

 タクシーの運転手よりも、

 探偵の方が向いてるんじゃねえか?」

そう言うと浮橋は腕を組んで目を閉じた。

「・・悪ぃんだが。

 行先を変更してくれるか。

 舞鶴町に行ってくれ」

「へっ?

 ここからだと反対の方角ですが?」

「構わねえ。

 ちょっと急用を思い出してな」

「へいっ。

 畏まりました」

タクシーは次の交差点をUターンした。


やがて。

舞鶴町5番地にある

50階建てのタワーマンション、

『Royal Hills』

の前にタクシーはとまった。

「釣りはいらねえよ」

浮橋は1万円札を

運転手に渡してタクシーを降りた。

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