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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
二章 同じ穴の狢

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32/72

第32話 同じ穴の狢

竜次は部屋に入ってくるなり、

アタシを見て露骨に顔をしかめた。

しかし。

それも一瞬のことで、

「久しぶりだな。

 来てたのか」

と何事もなかったかのように言った。

「2人で暮らすには随分と贅沢な所だね。

 家賃も高いだろ?

 さすが。

 人気ナンバーワンのホストは違うね。

 で。

 どうだったんだい?

 パチンコの方は」

「別に」

竜次はぶっきらぼうに答えると、

リビングのソファーに

ドンッと腰を下ろした。

どうやら機嫌が悪いのは、

アタシのせいだけではないようだ。


「それより、ジェラ。

 さっきは何を言いかけてたの?」

牡丹が目を瞬かせた。

「あっ・・ああ。

 アタシが竜次のことを

 好きだっていうのは、

 アンタの勘違いだよ。

 アタシは別に誰でも良かったんだよ。

 ま。

 体の相性は最高だったけど。

 そうだろ、竜次?」

「ふ、ふざけるなっ!

 俺はお前に騙されて嫌々・・」

「あら?

 その割に。

 何度もアタシの中で果てたくせに」

「いい加減にしろよ、てめえ!」

竜次が立ち上がってアタシを睨み付けた。

「竜次さん落ち着いて・・」

静かな牡丹の声が

窓を打つ雨音に混じって部屋に響いた。

「こ、こいつが

 デタラメなことを言うから・・」

「ううん。

 過去のことはもういいの。

 この先。

 竜次さんが私だけを見てくれれば・・」

「わ、わかってる。

 こんな女、

 ただ遊び半分で抱いただけだ。

 それをこいつが勘違いして・・。

 兎に角。

 俺はお前だけを愛し続けるよ、牡丹。

 絶対に裏切らねーから」

「あっははは。

 随分と牡丹の顔色を窺ってるのね。

 いつからそんな退屈な男に

 なったのさ?

 でもね。

 本心を偽っても長くは続かないよ」

「お前が何と言おうと、

 俺には牡丹しかいねーんだ。

 牡丹から離れるつもりはない」

「竜次さん・・」

牡丹が口に手を当てて

竜次の方を見つめていた。

その瞳が僅かに潤んでいた。

本当に反吐が出る。


「その麗しい愛が

 どこまで本物か

 アタシが試してあげるよ」

アタシは大きく息を吐き出してから

立ち上がった。

「ジェラ?

 どうしたの?」

「試すだと?」

アタシはポケットの中の呪物を

握りしめた。

「同じ穴の狢。

 アンタらには相応しい言葉だわ。

 ふっふふ。

 あーっはっはっは」

次の瞬間。

暗く湿った空気が

アタシの体を包み込んだ・・気がした。

『ザッザッザッ・・ザッザッザッ・・』

頭の中で雑音がした。

それは何かの足音のようだった。

小動物が野山を駆け回るような・・。

『サッサッサッ・・サッサッサッ・・』

その直後。

風の音が通り過ぎた。

背筋に冷たいものが走った。

『オナジ・・アナノ・・ムジナァ・・』

それらの音に紛れて、

低く擦れた声がした。

アタシは咄嗟に頭を振った。

気付けば。

体に纏わりついていた

湿った空気は消えていた。

頭の中の雑音も・・ない。


アタシは大きく息を吸い込んだ。

「ふっ・・ふふ。

 たった今。

 アタシはアンタらに呪いをかけた。

 アンタらは同じ穴の狢さ。

 一生離れることはできないのさ。

 もし。

 お互いの目の届かない場所に行けば。

 その時は・・死ぬよ」

牡丹と竜次が訝しげにアタシを見ていた。

アタシはそんな2人に構わず続けた。

「アタシに感謝しなさいよ。

 愛する人と、

 四六時中、

 一緒にいられるんだからさ。

 あーっはっはっは」

「は、はあぁ?

 何言ってんだよ、お前。

 頭がおかしくなったのか?」

竜次が顔を引きつらせた。

牡丹は呆気に取られたように、

アタシを見ていた。

「信じるかどうかは・・。

 アンタら次第。

 でもね。

 後悔しても遅いよ。

 その時には死んでるんだから。

 きゃっきゃっきゃ」

そしてアタシは

テーブルの上のカップを手に取って、

残ったコーヒーを流し込んだ。

アタシが空のカップをテーブルに置くと、

竜次がぼんやりと

そのカップを見つめていた。

馬鹿な男。

牡丹を選んだことを後悔しな。

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