第27話 腫れ物
6月に入って1週間が過ぎたある日。
開店前の準備で慌ただしい店内に、
退院して間もない牡丹が姿を見せた。
皆、
腫れ物に触るような様子で、
遠巻きに彼女を見ていた。
牡丹は支配人室へと向かい、
しばらくしてから戻ってきた。
そしてアタシに、
店を辞めることになったと
静かに告げた。
「これまで色々とありがとう、ジェラ」
「ここを辞めてどうするんだい?
他の子が何て言おうと、
無視してりゃいいんだよ」
「うん・・。
でも。
今の家を引っ越して、
彼と一緒に暮らすことになったの」
「はっあっあぁ?」
つい変な声が出た。
アタシは目を丸くした。
竜次からは何も聞かされていなかった。
「竜次さんが言ってくれたの。
もう私に寂しい想いをさせないって」
「へ、へぇ・・そ、そうかい。
よ、良かったじゃないか。
でも。
浮気相手のことはどうすんのさ?」
「うん。
そのことだけど。
もういいの。
過去に彼が浮気していたとしても。
それはただ魔が差しただけ。
毎日高級料理を食べてると、
たまには
安いジャンクフードが食べたくなる。
それが人間という生き物でしょ?
でも。
今後はそんなこともないと思うから。
彼は私以外の女性を
愛することはないって誓ってくれたの」
そう言って牡丹は微笑んだ。
店を出ていく牡丹の後姿を、
アタシは無言で睨み付けていた。
それからすぐに、
竜次へメッセージを送った。
だが。
翌日になっても、
竜次からの返信はなかった。
アタシは直接話そうと思い、
通話ボタンをタップした。
しかし。
呼び出し音が鳴り続けるだけで、
繋がることはなかった。
その翌日も連絡をしたが、
結果は同じだった。




