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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
一章 明日は明日の風が吹く

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19/53

第19話 同一犯

湿っぽい空気を孕んだ風が

僕の顔を舐めた。

櫓源之介と名乗った男が

僕を見つめたまま口を開いた。

「事件は2つ。

 1つは強盗殺人事件。

 もう1つは殺人および殺人未遂事件。

 これらは。

 同日同時刻に起こったものの、

 現場が離れているため、

 別々の事件だと考えられている。

 でも。

 私の見解では、

 これは同一犯による犯行だね」

「ど、同一犯ですか・・?」

「うん。

 そして。

 犯人については

 ある程度見当がついてるんだ」

その言葉に僕の心臓はどくんと跳ねた。

「だ、誰が・・犯人なんですか!」

すると櫓はフッと笑って髪をかき上げた。

「人を殺すほどの

 強い動機を持った人間が犯人だよ」

櫓は当たり前のことを

さも特別なことのように言った。

「何か心当たりはないかな?」

その時。

肇のことが頭に浮かんだ。

僕は慌ててその考えを振り払った。

「わかりません・・」

僕が首を振ると、

櫓は小さく溜息を吐いた。


「私の調査では。

 三宝院くん。

 君は上京くんが亡くなったことで、

 砧明日美さんと

 付き合うようになったんだよね」

僕はハッと息を呑んだ。

櫓の目が僕を真っ直ぐ捉えていた。

「ど、どうしてそれを・・」

僕と明日美のことは、

クラスメイトにすら

知られていないはずなのに。

「ははは。

 流石に若いね。

 毎日体力が有り余ってるようだ」

僕は顔が熱くなるのを感じた。

僕は櫓に悟られないように

そっと息を吸い込んだ。

心臓の鼓動が少しずつ静まっていった。

同時に。

櫓の言わんとすることが理解できた。

「ま、まさか。

 僕が明日美を手に入れるために、

 上京を殺したと言いたいんですか?

 もしそうだとしても。

 岩倉と西陣を

 狙う必要はないですよね?

 あなたはさっき言いました。

 2件は同一犯の仕業だと」

「あの2人に関しては、

 捜査を攪乱するため。

 上京くんを狙ったという動機を

 隠すため。

 運が良ければ、

 松葉肇くんに罪を擦り付けることが

 できると考えたんじゃないかな?」

そう言って櫓はにこりと微笑んだ。

この男は肇のイジメについても

知っている。

一体どうやって情報を集めたのか。

「証拠もないのに、

 変な言い掛かりはやめて下さい。

 そもそも。

 2つの事件は

 同時刻に起こったんです。

 10㎞も離れた場所で、

 一体どうすれば、

 そんなことができるんですか?

 僕には不可能です」

僕は櫓を睨み付けた。

しかし。

櫓はそんな僕の視線をものともせず、

涼しい顔をしていた。

「呪い・・かな」

そして櫓はさらりとそんなことを言った。

「呪い・・ですか?」

僕が首を傾げると櫓は真顔で頷いた。

僕は何も言えずに、

ただぼんやりと櫓を見つめていた。


「崇?」

その時。

背後から明日美の声がした。

「何してるの、こんなところで?」

そして明日美は櫓の方を見た。

「この方は?」

「えっ・・あ・・ああ・・その・・」

この話を明日美に聞かれるのはマズい。

僕は櫓の方を見て小さく首を振った。

櫓はこくりと頷いた。

「実は今、

 彼に道を尋ねていたんだよ。

 お陰で迷わずに済みそうだ。

 どうもありがとう」

そう言って櫓は僕に向かって

頭を下げてから、

ふと思い出したように続けた。

「そうそう。

 1つ忠告しておくよ。

 快楽に身を委ねるのは

 人として仕方がないけど、

 避妊だけは

 くれぐれも忘れないように」

それだけ言うと、

櫓は何事もなかったかのように

去っていった。

僕は慌てて明日美の方を見た。

明日美はキョトンとした表情で

櫓の背中を見送っていた。

「ね。

 何、あの人?」

「さ、さあ?

 何か変な人だったよ。

 そ、そんなことより。

 もう我慢ができないよ。

 早く家に帰ろう」

「もう・・。

 崇がそんなに精力旺盛だったなんて、

 思わなかったわ。

 これじゃ盛りのついた犬と一緒ね」

明日美は呆れたようにそう呟くと、

僕を置いてスタスタと歩き出した。

僕は慌てて明日美の後を追いかけた。

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