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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
一章 明日は明日の風が吹く

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第17話 彫像

僕はベッドの上で大の字に転がっていた。

僕の右腕に頭を乗せた明日美が

小さく息を吐き出した。

「ね。

 岩倉くんと西陣くんのことだけど。

 2人を襲った犯人って、

 肇じゃないよね?」

ふいに明日美がそんなことを口にした。

「さすがにね。

 岩倉は何とかなっても、

 西陣をヤるのは無理だよ。

 肇が拳銃でも持ってたら

 話は別だろうけどさ」

その時ふと。

僕は深夜の『大黒神社』で、

丑の刻参りをしていた

肇の姿を思い出した。

僕は慌てて起き上がった。

「どうしたの?」

急に枕を失くした

明日美が不思議そうに目を瞬かせた。

「えっ・・い、いや・・別に」

僕は惚けてみせた。

だが。

頭の中には、

御神木に打ち付けられていた

あの3枚の人型の厚紙が、

鮮明に浮かんでいた。

そこに書かれた名前の3人が、

同日同時刻に襲われた。

これは偶然なのか?

それとも。

肇の呪いなのか・・?

僕は慌てて首を振った。

馬鹿馬鹿しい。

呪いなんて存在しない。


「ね。

 何か1つだけ願いが叶うとしたら。

 崇はどんなお願いをする?」

同じような話を

僕はつい最近、

肇の口から聞いたことを思い出した。

「何だよ・・急に」

それでも僕は明日美の質問に答えようと

頭を捻った。

そして。

僕はすでに願いが叶ったことを悟った。

「もう願いは叶った・・かな」

「え?

 何それ?」

明日美が笑った。

「い、いや・・別に何でもない」

僕は慌てて誤魔化した。

「ふーん。

 ま、いいけど」

そう言って明日美は起き上がった。

「シャワーを浴びてくるね」

そして明日美は部屋から出ていった。

僕は気怠い体に鞭打って

ベッドから出ると服を着た。


それから明日美の勉強机に座った。

机の上は綺麗に整理されていた。

僕は引き出しの1つを開けた。

奇妙なデザインの彫刻が目に留まった。

鈍い灰色をしたそれは、

自らの尻尾を噛んでいる

蛇の彫像だった。

その輪は僅かに歪んでいた。

どことなく禍々しく、

それでいて不気味だった。

大きさは掌に収まるほど。

ずっしりと重く、

ツルツルとしていて、

ひんやりと冷たかった。

それは石のようでもあり、

鉄のようでもあった。


これは・・。

ウロボロス?

たしか・・。

「循環性」

「永続性」

「無限性」

「完全性」

など。

その意味するものは広く、

多くの文化、宗教で用いられてきた。

どうして。

こんな趣味の悪い物を明日美が・・。

その答えが見つからないまま、

僕はそれを戻して引き出しを閉めた。

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