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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
一章 明日は明日の風が吹く

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第10話 深夜の秘密

風呂から出ると時刻は23時を回っていた。

東側のカーテンの隙間から外を覗いた。

向かいの明日美の部屋は

カーテンが開いていたが、

その灯りは消えていた。

その時。

カラカラと自転車のチェーンの音がした。

僕は咄嗟に部屋の電気を消した。

そして再び、

カーテンの隙間から様子を窺った。

やがて。

部屋に灯りが点いた。

中へ入ってきた明日美は、

窓に近付くと素早くカーテンを閉めた。

それは一瞬だった。

閉まりきる直前、

視界に焼き付いた彼女の姿に、

僕は息を呑んだ。

髪は乱れ、

服が所々破れ、

汚れていた。

僕は呆然として、

その場から動くことができなかった。


丁度日付が変わった頃。

僕は服を着替えて部屋を出た。

階段を降りると、

1階の電気は消えていた。

僕は音を立てないように家を出ると、

自転車に跨って漕ぎ出した。


僕はたまに

こうして夜中に家を抜け出して、

夜の街を徘徊することがあった。

落ち込んだ時や悩んだ時。

そして。

心の中に溜まった何かを吐き出したい時。

この夜も僕は当てもなく

自転車を走らせていた。

頭の中は、

ついさっき目にした

明日美の姿でいっぱいだった。

あれは何だったのか。

僕は頭を振って

ペダルを踏む足に力を込めた。


しばらくすると、

迷路のように入り組んだ路地に入った。

電柱の街区表示板に

「新川1丁目」

の文字がぼんやりと見えた。

僕は新旧の家々が混在する迷路の中を

当てもなく彷徨った。

気が付けば視線の先に

『大黒神社』の鳥居が見えてきた。

毘沙門川の河口付近にあるその神社は、

敷地もそれほど広くはない。

近くにはマンションが1棟建つだけで、

この時間ともなれば周囲は真っ暗だ。

道路を挟んだ向かいの

『新川公園』から漏れる

ポールライトの僅かな灯りだけが、

闇の中にぼんやりと浮かんでいた。

その時。

『大黒神社』の敷地内から、

コンコンコンと何かを叩く音が聞こえた。

僕は咄嗟にブレーキをかけた。

そして路肩に自転車をとめてから、

玉垣の影からそっと中を覗き込んだ。


敷地内にある1本の大きな御神木の前に

人影が見えた。

人影は御神木に向かって

必死に何かを打ち付けていた。

手に持った金槌が何度も振り下ろされ、

そのたびにコーンコーンという音が、

静まり返った境内に木霊した。

その背中からは鬼気迫る狂気を感じた。

ふいに人影がその場に屈み込んで、

足元に落ちていた何かを拾い上げた。

人影はしばらくの間、

動かなかった。

まるで精魂尽き果てたかのように、

肩で大きく息をしていた。

次の瞬間。

人影がこちらを振り向いた。

その顔を見て僕はハッと息を呑んだ。

それは肇だった。

肇は僕の存在に

気付いていないようだった。

周囲をキョロキョロと窺って、

やがて足早に神社から出ていった。

僕は息を殺したまま、

その場にしゃがみ込んでいた。


しばらくして。

僕は誰もいなくなった神社の中へ入った。

そして肇がいた御神木へ近付いた。

人型に切られた3枚の厚紙が

釘で打ち付けられていた。

その中央に記された名前を目にした瞬間、

背筋に冷たいものが走った。

岩倉亮。

西陣大作。

そして。

上京英雄。

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