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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第一章─極子水星要塞〜演劇の始まり〜─
9/324

欠片4.『大切なモノ。』


      欠片《ピース》4.『大切なモノ。』です!



   ※コッキング

    スライドを引いてバネを縮《ちぢ》め

    弾を装填する動作のこと。






        【白岩草減《ホワイトロックリース》から

         ──南東14km】


      (進行38Km 残り2691km)


       【巨岩洞要塞《ロッグロットフォートレス》 子爵部屋】



2人は子爵の暮らす部屋へと訪れていた。



     「この要塞の子爵を任されてる。

      オルニス・モアだよ」


         「よろしくね」


    ┏───────────────┓

    |   巨岩洞要塞《ロッグロットフォートレス》 子爵《ししゃく》   |

    |               |

    |  [オルニス・モア(36)]  |

    |    [種族:ヒト]    |

    ┗───────────────┛



その人物の目はほぼ開いておらず、輪郭はエラが広く細長い顔をしていた。

頬は痩せ細っているためシワが目立っており、白髪混じりの髪は黒色で短髪、身なりは庶民的な服装をしており、とても子爵であるとサーチは思わなかった。



         「オレはサーチ!

          よろしく!」


      (なんか、故郷の町民みたいだ。)



         「アストラだ。

          よろしく頼む」



挨拶を交《か》わした二人はそのまま子爵の話を聞いていた。



        「こんな辺境にある

         町の要塞まで、

         ご苦労だったねぇ」


        「めったに人も

         立ち寄らないから

         びっくりしたよ〜

         ハハハッ」



モアの話を聞くサーチは、苦笑いをしながらなんともいえない表情をしていた。



       (あんまり人こないんだ…)


      (まぁ……オレの故郷と同じで

      周りが岩ばっかだもんなぁ…)



      「着いたばっかりだろうけど

       今日はもう日が暮れる。」


     「何か食べてってかまわないよ」

       「ゆっくりしてってね」



      「ほんとかー!ありがとう!」


         「感謝する。」



とても良い笑顔で迎えてくれたモアに、サーチとアストラはお礼を言い、その夜は町民《ちょうみん》から料理のおもてなしを受け眠りについた。



─────────────────────────

─────────────────────────



翌朝になり、二人は再び子爵の元を訪ねていた。



         「白岩屑鳥《ロックチョウ》?」



サーチが尋ねるとオルニス・モアは頷きながら細い目を開いて答える。



          「うん。」


        「この要塞の上に

         住んでいてね」


       「鳥翼型《ちょうよくがた》の在機屑《アニマ》なんだ」


        「鳥翼型《ちょうよくがた》といっても。

         翼はあまり発達は

         してなくてね」


        「その代わり

         足が発達してるから

         ──移動が速い」



       「へぇ〜!

        そんな在機屑《アニマ》もいるのか!」



           「うん」

          「それでね。」


        「ここ最近、この付近に

         住み着いた群れの中に

         極《きわ》めて大きな

         個体がいて」


       「ソイツがこの辺りの作物を

        荒らして困ってるんだ」



       「対策とかはしてないの?」



       「本来──白岩屑鳥《ロックチョウ》は

        人が住む場所には

        近寄って来ないんだよ」



          「どうして?」



       「彼らは気配《けはい》に敏感でね。

        生物の気配を感じたら

        すぐに逃げてしまうんだ」


       「食性《しょくせい》も草食で、

        普段は野草を食べてる」


       「けど、その大きな個体は

        かなり気性が荒いんだ。」


       「より栄養を補給しようと

        してなのか…。

        畑の作物を荒らしてる

        ってわけさ」


        「今までにも

         対策はしたんだけど

         意味がなくてねぇ…」



        「そうだったんだ…。」



       「そこで、もし良ければ

        白岩屑鳥《ロックチョウ》の退治を

        お願いできないかな?」


       「報酬は少ないけど、

        旅に必要な資金《シリカ》や食料とか

        必要なものを持ってって

        かまわないよ」



          「ほんとか!」


      「師匠!やろうぜ!!

       子爵様も困ってるし!

       物資ももらえていいじゃん!」



          「そうだな」

      「分かった。引き受けよう。」



      「ほんとかい!ありがとう!」


        「白岩屑鳥《ロックチョウ》は、

         谷の上の端《はし》の方に

         住処《すみか》がある。

         頼んだよ。」


       「上までは

        洞窟の階段から

        行けるから、

        あとで案内役をつけるね」


       「それじゃあ、任せたよ」



       「分かった!ありがとう!」



─────────────────────────



          「ここです。」


       「この先を真っ直ぐ進み、

        斜面に差し掛かる

        辺りまでいけば

        見えてくると思います。」



        「案内ありがとう!」



       「いえ、どうか…。

        よろしくお願いします。」



        「おう!任せてくれ!」



上に扉を開き外に出ると快晴の空の下、聳《そび》え立つ峡谷の岩の上にサーチとアストラは立っていた。


谷の高さは300メートルもあり、奥行きは400メートル、横の長さは1メートルをも超える長さで、その左右に続いて伸びる横岩は、しばらく進むと途中から地上に向かってゆるやかな斜面となっている。


その岩の上を歩いて行くサーチとアストラ。



        「サーチ。

         白岩屑鳥《ロックチョウ》との戦いは、

         お前に任せる」



           「え?」

       「今のオレでも勝てるの?」



       「子爵の話を聞く限りでは

        ギリギリだな」


        「まあ、ヤツらは本来

         交戦的ではない

         在機物《アニマ》だからな」


        「適切な距離さえ

         保《たも》っていれば

         勝てるだろう」


        「それから──

         近距離だと爪が

         発達しているから

         気をつけろ」


       「油断していたら

        簡単に切り裂かれるぞ」



          「まじかよ。」



       「ワタシが教えたことを

        守っていれば大丈夫だ」


        「あとは戦闘の数を

         こなして慣れろ」


       「数をこなせば

        恐怖心も減るだろう」



        「日々の鍛錬は

         欠かさずやるんだ」



       「うん。分かってるよ」



広大《こうだい》な岩の上で、二人は景色を眺めながら歩き続けていた。



         「天気も快晴!

          空気もうまいッ!」


         「さいっこうー!!」


        「ふぅおおお〜〜!!」


       「太陽の光が岩に反射して、

        キラキラしてるぞ!」



アストラはサーチを見たあと周りを見渡した。



       (この岩も星屑《ホシクズ》の影響が

        あるみたいだな。)

      (全面白色(はくしょく)なのにも納得がいく)



       「師匠!みてみろよほら!

        スゲーキレイだぞ!!」



       「ああ、そうだな。フッ」



微笑むアストラだったが、何かの気配に気づく。



           「──!」


         「止まれ。サーチ」



         「え?どうしたんだ」



          「……何か来る」



      「何かって、何もいないけど?」

           「どこだ?」



キョロキョロしながら前方を眺めていたサーチにアストラは答える。



          「前じゃない」



          「"上だ"!!」



          「───!!」



ハッとしたように驚くサーチが上を見上げると、二人の前に「ワシ」のような見た目をした鎧翼型《がいよくがた》の機屑物《ガーベマジル》が現れていた。



       『キィィィイィ──!!!』



       「アレが白岩屑鳥《ロックチョウ》か!?」



         「いや、違う。」

       「アレは、白銀屑鷲《シルバーイーグル》だ」


        「鎧翼型《がいよくがた》の機屑物《ガーベマジル》だ」

         「襲ってくるぞ」



白銀屑鷲《シルバーイーグル》は勢いよく翼を羽ばたかせると急降下して迫り来る。

白い装甲の翼に太陽の光が反射し、銀色に輝いた光景にサーチは動きを止める。



       「……あんなキレイな

        機屑物《ガーベマジル》もいるのか」



          「サーチ!!」



思わず見惚れてしまっていたサーチの反応が遅れる中、アストラの声で我に帰るサーチは前方に腕を覆って瞳を閉じる。



         「しまっ……!!」



         「『針《スティング》』ッ!!」



攻撃が当たるギリギリの所でアストラの突きによって白銀屑鷲《シルバーイーグル》の体に孔《あな》が空いていた。



         ───"ボッ"───



         『キュェイィ………!』


          ……ガシャァン…!



地面に落ちた白銀屑鷲《シルバーイーグル》を見て、地べたに腰を着くサーチは息をはいた。



         「ッハァ〜……

          ……危なかった。」


         「助かったよ…

          ありがとう師匠!」



        「いつも気を抜くなと

         言っているハズだ。」


         「集中を絶やすな。」



少しだけ険しい表情をするアストラは、取り出していた『龍屑《リュウセツ》・ 孔《ポア》』を腰に戻す。



        「………。ごめん。」



サーチは俯《うつむ》きショックを受けていたが、すぐに気を持ち直した。



         (確かに…ヤツらは

          オレの倒すべき

          敵なのに…)


          (何やってんだ……

           クソッ…。)


        「アストラ……ごめん。」

        「もっと気をつけるよ。」



         「分かったらいい」

          「先へ進もう」



           「うん。」



─────────────────────────

─────────────────────────



歩みを進めていると150メートルほど先に、枯れ草で作られた鳥の巣のような物がたくさん現れた。

その周辺には多くの白岩屑鳥《ロックチョウ》が群れを成していた。



       「アレが白岩屑鳥《ロックチョウ》か!」


        (図鑑で見た

        「ダチョウ」ってヤツ

         に似てるな)



その群れの中に、一際《ひときわ》大きな個体を見つけサーチが"小声"で話しかける。



         「アイツだな。」


           「ああ。」

           「……。」



         「よし、やるぞ。」



二人は距離を縮《ちぢ》めるように前進していく、その間にサーチは『破片ノ銃剣(ベネシオッド)』を取り出し銃剣を構えて標的を覗き込んだ。



       (距離は百メートルくらいか)

         (……風もあるな。)



       ※

分析が終わり、コッキングをした瞬間──



           カチッ。



一斉に白岩屑鳥《ロックチョウ》が振り向いた。


そして、逃げ出す小型の白岩屑鳥とは違い大型の白岩屑鳥はこちらに向かって来ており、その大きさは小型の3倍ほどになる3メートルを超えるほどの大きさだった。


その大きな白岩屑鳥が50メートルを進む時間は2秒たらずで、あっという間にサーチの目の前にまで迫っていた。


迫り来る白岩屑鳥《ロックチョウ》の迫力は凄まじかったがサーチは冷静だった。



       ドッドッドッド─────



       『キュイィィィィィ!!!』



          (まだだ……。)


         (まだ引きつけろ)



サーチとの距離が8メートルを切ろうとした時──


白岩屑鳥《ロックチョウ》は高高く跳躍しながら鋭い爪を伸ばして構える。

その瞬間、サーチは前方に素早く走り出した。


そして、スライディングしながら白岩屑鳥《ロックチョウ》の下に潜り込み、頭上に向けて引き金を引いた。



       ダッ───ズザァァァァ──


          ──ガチャリ。



         "パパァァンッ"!!!



          "バキバキッ"!!!


         ──"ボジュッ"──!!



         『キュィッ…ィィ…』


        バガァァン……ドシャ…!!



そのまま滑りながら体勢を整えたサーチが白岩屑鳥《ロックチョウ》の方を見ると、白岩屑鳥《ロックチョウ》の胴体には20センチほどの穴が空いて倒れていた。


その周辺には肉片や装甲が砕けて飛び散っており、白い破片《はへん》は赤く染まっていた。



      「……やった!やったぞー!!」

        「みたかー!師匠!!」



           「……。」


         「よくやった。」



アストラは地面に横たわる白岩屑鳥《ロックチョウ》を見つめ、何かを思ったままサーチを褒めた。



     「これで町のみんなも安心だな!!」



           「あぁ。」



その様子にサーチは不思議そうに問いかける。



        「なんだよ師匠。

         どうかしたのか?」



アストラは少し考えた後サーチに話しかけた。



       「巣があった所へ行くぞ」



           「え?」



─────────────────────────

─────────────────────────



          「これって……」



       「ああ。彼らの卵だろう」



        「もしかして……

         コレを守ってたのか?」



          「おそらくな」



        「じ、じゃあ…オレは。」


           「サーチ。」


        「これは自然の摂理(せつり)だ。」


     「オマエがやらなければ、

      ワタシが代わりにやっていた。」



           「……。」

          「それでも…」


         「もしかしたら……

          何かいい方法が

          あったかも

          しれないだろ!」


        「師匠は、最初から

         分かってたのか…?」



         「巣を見た時にな」



➖───────────────────────



         「アイツだな。」


           「ああ。」

           「……。」



         「よし、やるぞ。」



────────────────────────➖



       「なら、なんで止《と》めて

        くれなかったんだよ。」



      「止めたら──

       あの町の人々はどうなる?」



        「一度町に戻って、

         話しができたかも

         しれないだろ!!」



        「解決策はあるのか?」



          「──ッう…」


        「オマエは

         白岩屑鳥《ロックチョウ》を

         あのままにして、

         そのあと町人に

         何かが起こらないなんて

         保証ができるのか?」


        「自分のとった行動の

         "責任"をとることが

         できるのか?」



真っ直ぐサーチを見つめながら問いかけるアストラ。



          「それは…」



顔を逸《そ》らし、アストラは町の方へと歩み出す。



        「分からない。

         出来ないなら、

         そんな考えは持つな」


       「二度と……、

        後悔したくないならな。」



➖───────────────────────



      「おまえだけでも…逃げろ……」



         「いやだっ!!」


      「セーブスを置いていく

       ことなんて出来ないッ!!」


       「ワタシは……貴方の…」



────────────────────────➖



昔の記憶を思いしたアストラは、いつもより歩く速度が速くなっていた。

そして、二人は無言のまま帰路に着いた。


巨岩洞要塞《ロッグロットフォートレス》へと帰還したサーチたちは子爵と会話をしていた。



       「ただいま戻りました。」


           「……。」



アストラとは対象に、サーチは黙ったままだった。



       「無事でよかったよ〜〜

        本当にありがとう!」


       「お礼に、約束してた

        キミ達に必要な物を

        用意しよう!」



           「……。」



           「おや?」


        「サーチくん。

         どうしたんだい?」



         「あっ…いや……」



        「なにかあったのなら

         話してごらん。」



優しい口調で話しかけてきたオルニス・モアに、サーチは先程の出来事を打ち明けた。



       「倒した白岩屑鳥《ロックチョウ》の巣に

        ……卵があったんだ。」


      「その…あの白岩屑鳥は……。

       ただ、卵を守りたかった

       だけだったのかなって。」


       「卵を守る力がいるから、

        畑を荒らして

        栄養をとってたんだと

        ……思う。」



            「……」



その話を聞いて、モアはサーチの目を見て力強くも優しい口調で話し始めた。



          「確かに。」


       「彼らも生物だから

        繁殖や子育てのために

        栄養を蓄え……

        守ろうとするだろうね。」



       「でもね。サーチくん。」


        「私にもここの住民《みんな》を

         守る義務がある。」



        「キミの言うことも

         理解できるよ。」


          「でも──」


      「そのことと、住民を守れる。

       ということはまた

       話しが違ってくる。」


      「私には他の子爵や

       公爵様みたいな力はない。」


        「だからこそ……」


       「住民を危険な目には

        合わせられなかった。」


        「それが私に出来る

         "守る戦いの術《すべ》"だ。」


       「そうしなければ……

        我々が死んでしまう。」



      「非常だとは分かってるさ。

       でも、そのことだけは

       理解してもらえないかな。」



     「救える命なら、当然救いたい。」


      「でも、辛い思いをさせたね。

       ごめんね。」



その言葉を聞いたサーチは歯を食いしばり、地面には涙の跡が付いていた。



        「うん。分かってる。」


       「さっき師匠から、

        甘くない世界だって。

        教えてもらったから。」



        「いや、いいんだ。

         キミはまだ若い」


      「これから先、もっともっ〜と

       色々なことを学ぶだろう」



      「大切なモノを見失わずに。

       頑張ってね。」



涙を堪えるように流すサーチに、オルニス・モアは微笑みながら答えていた。



       「……へへっ…!

        モアさん、ありがとう!」



その言葉を忘れないように、サーチは再び前を向き旅の続きへと戻った。




     【それから2週間以上が経ち

      野宿をしながら鍛錬も続けた】


     【道中──険《けわ》しい道や

      在屑物《アニマ》などにも

      出会いながら進み続けること】


        【巨岩洞要塞《ロックロットフォートレス》より──

         南東503km付近】


     (進行541Km 残り2188km)



         【鉄屑要塞《スクラアイフォートレス》】


4つの門がある四角形の薄めの壁に覆《おお》われた要塞の中にある地面には、鉄と破片《クズ》を合わせて作られたゴミの山が何ヶ所もできており、住民は地面の地下にある部屋に住んでいた。


また、武器の加工場《かこうば》は外にあり、その施設の大きさは高さ10メートル、一片の長さが40メートルほどの正方形の形をした灰色の加工場が10ヶ所あった。




          「ここか。」


         「ああ。行くぞ」



門の前に立ったアストラとサーチの二人は、門兵によって止められていた。




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