欠片5.『いまはただ』
欠片5.『いまはただ』です!
サーチたちが鉄屑要塞に辿り着くと門兵に止められていた。
「オマエ達、そこで止まれ!」
「何者だ!」
「何しにここへ来た?」
門兵が槍の破片ノ武器を構えながら尋ねると、アストラは丁寧な受け答えで返答をする。
「訳あって旅をしている」
「水や食料などを
補給したいのだが。
入れてはもらえない
だろうか」
「…そうか。」
「だが、すまないが
今は入れられない」
「なぜだ?」
「大要塞でもないのに、
ここまで検問を
行なっているのは
不自然だが。」
「何か理由でもあるのか?」
「二ヶ月以上前に起きた……
あの大災害の影響で、
機屑物達の活動が
活発化しているんだ」
「それとなんの関係があるんだ?」
サーチが質問すると門兵は再び話し出す。
「それが……
大型の機屑物を前々から、
要塞近くの森の中で
見かけていてな」
「つい先日──
ソイツが西側の外壁に
大穴を開け暴れたんだ」
「幸い──
見張り兵の報告のおかげで、
死者は出なかったが…」
「それでもケガ人は出た。」
「そんなことがあったのか……」
「ああ、その後もヤツは
街の加工場もいくつか
破壊していってな。
その復興作業で忙しいんだ」
「それで今は
よそ者に対して
この要塞に
あまり立ち寄らない
ようにする目的と」
「この機を狙って
やってくる盗賊達の警戒で
呼び止めてるってわけだ」
「なるほど。」
「師匠」
サーチがアストラの方を見ると頷いていた。
そして、サーチは自信満々に門兵へと話しかける。
「なぁ、その機屑物を倒すからさ!
中に入れてもらえないか?」
「なんだと!?」
「アレを倒せる
ヤツなんて……
いるわけがない」
門兵が怯えるように自問自答をする中、アストラは門兵の所に行き何かを見せていた。
(なんだ?)
(師匠は何を見せてるんだ?)
しばらくすると門兵の態度が変わり門が開き出した。
「先ほどは大変失礼いたしました!!」
「どうぞ!お通り下さい!!」
「感謝する。」
「な、なあ師匠。
いったい何をしたんだ…?」
「まさか……脅したり
してないよな?」
──"ギロッ"。
サーチの言葉を聞いて鋭く睨みつけるアストラは歩き出しながら答える。
「そんなことはしていない」
「紋章を見せただけだ。」
「紋章?」
「気にするな」
「子爵に会わせてもらえる
ようだから行くぞ」
「うん」
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─────────────────────────
『ようこそいらっしゃった』
『歓迎するぞい!!』
┏───────────────┓
| 鉄屑要塞 子爵 |
| |
| [イアン・ブラック(260)] |
| [種族:ハーフドワーフ] |
┗───────────────┛
「いえ、旅の途中ですので
お気遣いなく。」
『ホホゥッ。まあまあ、
貴女様に
お会いできるとは
ワシも光栄ですなぁ〜!』
「ありがとうございます。
それで──」
「先日暴れたという
機屑物について
知りたいのですが。」
『お、オオ!そうじゃったな!』
『ヤツの名は──
『鉄大猩久屑』。』
『大型の人型機屑物じゃよ。』
話を聞いていたサーチが質問する。
「どんな見た目なんだ?」
『体長は十二メートル
ほどかのぅ……。
上半身の背中や肩甲骨辺りが
ものすごく大きくて太い
それに腕もかなりの
太さじゃった』
「デケェッ……ゴクリ。」
『確か……在機物の
『草果大猩久』と
骨格はおおかた
似ておったのぅ』
(なら、図鑑でみた「ゴリラ」って
生き物みたいなもんか)
『ヤツの握力と
パンチの力は
凄まじいぞい』
『まあ、貴女であれば
大丈夫だと思うが!
ホッホッ!』
『くれぐれも気をつけてくれ!』
「はい。」
『それから、この街に
滞在するなら
街の者達に
話は通しておこう!』
『大したもんはないが、
武器の加工場で
武器の手入れでも
してもらうとよい!』
「マジか!ありがとう!
ブラックのおやっさん!」
『ホホゥッ!!
おやっさんか!』
「あっ!……ごめん。
知り合いのドワーフと
雰囲気が似てたから
ついっ……」
『ホホッ、よいよい!』
『ワシもそういうのは
苦手だしのぅ!
気にするな!』
『みな堅苦しくてな〜
困っておる。ホホゥッホ!!』
「ほんとか!ありがとう!」
『ちなみにワシは
ドワーフじゃなくて、
ヒトとドワーフの間に
産まれた
ハーフドワーフじゃよ』
『だから背も少し高かろう?
ホホゥッ』
「ほんとだ、耳も普通なんだな!」
『そうじゃのぅ!
まあ、何か困った
ことがあれば
いつでも聞きに
くりゃあええぞ!』
「おう!」
そうして二人は子爵の元を後にし、武器加工場へと向かった。
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【鉄屑要塞 加工場】
施設の大きさは高さ10メートル、一片の長さが40メートルほどの正方形をした灰色の加工場が全部で10ヶ所あり様々な加工用途で使用される。
8ヶ所は武器の加工場となっており、残りの2ヶ所は加工場だった場所がいつの間にか倉庫となった。
現在はその内2ヶ所の加工場が『鉄大猩久屑』によって破壊されている。
加工場の前に着いた2人の前には白髪の老人が立っており、筆先みたいな形をした大きな白い両ヒゲを生やした案内役の人物が待っていた。
「お待ちしておりました。」
┏─────────────┓
| 子爵 執事 |
| |
| [クロガネ(62)] |
| [種族:ヒト] |
┗─────────────┛
二人は軽く会釈を返すと、サーチは興奮を抑えきれないように話し始めた。
「なぁなぁ!」
「これぜんぶ加工場なのかー!!」
「全てではないですが。
ほとんどが加工場に
なりますね」
「まじかー!!
それでもすごい
大きさと数だなー!」
「いいえ。」
「コレでもまだ
小さい方なのですよ?」
「え?」
「数は多いのですが、
大きさに関しましては」
「極子水星要塞と
比べると小さいのです」
「極子水星要塞には
ここよりデッカい
加工場があるのか!!」
輝くサーチの表情を見て、クロガネも笑顔で答える。
「ええ
それはとても。
大きなものが
ございますよ」
「中を見てもいいの?」
「ええ。もちろんかまいません」
「うっふぉおおお〜〜〜!!!
スッゲェー!!!」
「色んな機屑物達の
破片があるぞ!」
「工房もデケェー!!」
「なんだこれ!見たことねぇ!!」
「これなんかは……これとかも……」
「なんだこの夢の空間はー!!」
大はしゃぎするサーチを遠くで見守るアストラの元へクロガネが近寄ると小言のように話しかけていた。
「貴女があの。
伝説のお方の一人とは
驚きました」
「このような場所に
何のご用が?」
「……」
「昔のことだ」
「え?……それは一体?」
「いまはただの旅人だよ。」
「それに──」
「あの子の師だ。」
「……」
「フフ。そうでしたか。」
「詮索は──
野暮でしたね。」
「フッ」
「感謝する」
クロガネの言葉に少しだけ微笑むアストラだった。
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『ん?何だオメェ?』
『新入りか?』
┏──────────────┓
| 機巧技師 |
| |
| [テツゴウ(126)] |
| [種族:ドワーフ] |
┗──────────────┛
サーチが工房の中を覗いていると、ずんぐりむっくりとした体型で銀髪のオールバックのドワーフが作業の合間に話しかけていた。
「いや!」
「オレは旅をしててさ、
今日ここに
着いたところなんだ」
「ここの破片ノ武器の製作に
興味があってさ!
よかったら見学させてくれよ!」
「オレも自分で造ったり
してるんだ!」
『何だ。よそ者か』
その人物は2秒ほど"ジッ"とサーチの背中にある破片ノ武器を見つめると言葉を放った。
『……』
『ほぅ。』
『その背中の破片ノ武器が
オメェさんが造ったやつか』
『ちょっと見せてみろ』
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『フム……。よく出来てるな』
『ガキンチョ。
オメェ……
トシはいくつだ?』
「十五だけど」
『ほーぅ……。』
《そのトシで
ここまでのもんが
造れるタァな。
大したヤツだ。》
『ヒヒッ!気に入った!』
『いいぜ!』
『この破片ノ武器の
手入れをしてやる!!』
『ついでに他のもんも
見ていきな!』
「ほんとか──!!」
「おっさんいいやつだなー!!」
『おっ…オレまだ
おっさんじゃねぇ!
……いや
…ヒト族から見れば
おっさんだが。
そうじゃなくて…』
『まあいい。
オレの名は"テツゴウ"だ!』
『よろしくなッ!えーと…』
「サーチ!オレはサーチだ!!」
「こちらこそよろしく頼む!
テツゴウのおっちゃん!」
『……まあいい!
好きに呼べや!ヒヒッ!!』
『サーチよう、よろしくなッ!』
サーチとテツゴウが意気投合した所にアストラがやって来て声をかける。
「サーチ。
オマエはこれから
どうする?」
「ここで見学すると
言っていたが。」
「んー……鉄大猩久屑の
退治も見てみたいけど」
「オレは工房の
作業の方が
見てみたい!」
「そうか、分かった」
「ではまた後で合流しよう」
「うん!気をつけてな師匠!」
「フッ。ワタシを
誰だと思っている」
「心配するな」
そうしてお互いがやるべき目標を決めた後、サーチに別れを告げたアストラは西門の方へ歩いて行った。
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【PM2:00〜 アストラサイド】
「さて、痕跡を辿ろうか」
西門があった外壁の外へと出たアストラは周りを見渡していた。
「……。」
(西側と南西方向の木が
倒れているな)
(地面に大きな足跡も
残っている。)
「これならすぐに
見つかりそうだな」
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【PM2:04〜 サーチサイド】
『いいか、まず鉄を
溶かすには
千五百℃以上の
熱が必要だ』
『これは知ってるか?』
「うん!」
「故郷の機巧技師に
教えてもらったからな!」
『そうか、そいでだ』
『サーチよぅ。
オメェさんは
機屑物らの外殻や
装甲の溶ける温度は
知ってるか?』
「オレが故郷でやってた時は、
鉄の二倍の温度くらいで
やってた気がする!!」
『正確には分かんねぇってことか』
『まあ、造るときは
感覚も大事だ。
その辺はかまわねぇ』
『だがまぁ、自然と分かる
ヤツァもいるもんだ』
『それに優秀な師がいたとみえる。』
「ヘヘヘッ」
ツベチカのことを褒められ、思わず嬉しくてにやけるサーチにテツゴウは説明を続ける。
『でだ、実際は『甲鎧型』以外の
外殻は二千六百℃くらいで溶ける。
だが『甲鎧型』の装甲はもっとかてぇ…
だいたい三千二百℃以上はする。』
『が………だ!』
『『純資源型』や『資源型』の
鉱物の中には
もっとかてぇもんがある。』
『それは──』
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【PM2:24〜 アストラサイド】
森の中を進むアストラは周囲から聞こえる轟音を目指していた。
"ドゴォォン"!!!
"バキバキ"………ズズゥン…!
(近いな。この音の数……)
「交戦中か」
『"ウガァァアアア"!!!』
『"キシャアァァァァァ"!!!』
2匹分の鳴き声が聞こえてきた方向へ進み、少し遠方の木の上に止まって様子を見るアストラ。
(あれは──)
「菱苦土屑蛇か」
(普通なら菱苦土屑蛇が
捕食する側だが……)
(それは小型の
草果大猩久の場合だ。)
(しかし、あの大きさの
鉄大猩久屑となると──)
「拮抗しているな」
その時──木の上から見ていたアストラは何かに気付いていた。
「──ッ!……アレは!!」
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【PM2:05〜 サーチサイド】
『これが『純資源型』の
『ミスリル』の欠片だ。』
「コレって……確か
歴史本『リングストーリー』に
載ってた伝説の鉱石の
ひとつじゃんか!!
スゲェー!!!」
『ほぅ。あの本を
読んだことあんのか!』
『オメェさんも
なかなかのマニアだな
ヒヒッ!!』
「実物なんて見れねぇと
思ってたけど
ほんとに存在してたんだ……!!」
『まあ、欠片だがな』
『ほんの"五グラム"しかねぇ』
『それでもコイツの価値ァ…
とんでもねぇもんさ』
『いくらしたと思う?ヒヒッ!』
テツゴウは"ニヤリ"と口角を上げながらサーチを見つめていた。
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【PM2:25 〜 アストラサイド】
アストラは菱苦土屑蛇と鉄大猩久屑の近くの木の影に幼い少女が隠れている姿を視界に捉えていた。
「マズいッ…!!」
"バッ"──!!
勢いよく少女の前に飛び出すアストラ。
そのタイミングで鉄大猩久屑によって投げ飛ばされた菱苦土屑蛇は、少女がいる場所目掛けて飛んできていた。
スチャ──。
「『龍屑・孔』。」
──"ビュッン"!!!
"シュパパパパッ"!!!
その瞬間──少女の目の前で、巨大な大蛇の体がバラバラになり崩れ落ちていった。
「きゃあぁぁ〜〜!!」
「無事か?」
その場に膝を着いてうずくまる少女に、アストラは穏やかな声で問いかける。
その声に少女は涙を浮かべながら頷いていた。
「そのままそこにいてくれ」
「後はワタシが何とかする」
その言葉を聞いた少女は再び頷いていた。
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【PM2:07〜 サーチサイド】
「んん〜〜〜……
百万シリカ!!」
『残念!!ヒヒッ…なんと──』
『一千万シリカだ!!!』
「うへぇぇぇええ〜〜〜!!!
たっけぇ……!!」
『オレの貯金が
すっからかんに
なっちまったけどな。
ヒヒヒッ』
『けど、コイツで破片ノ武器を
造ってみたかったんだ。』
「ワクワクするな!
おっちゃん!!」
「どんな破片ノ武器を
造りたいんだ?」
『……。』
サーチを見つめたまましばらく黙るテツゴウだったが、ようやく開いた口から出た言葉は衝撃的なものだった。
『サーチ。』
『コイツで、オメェの破片ノ武器を
造らせてはくれねぇか』
「え?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!




