欠片307.『アレ』
欠片307.『蛇』です!
【コウハVSアグハット・バハラト】
『アハァン!バハラトさまぁ!』
『もっと踏んで……踏みつけてくださいまし〜』
男の純獣人の師団員が四つん這いになっているその背中の上に、アグハット・バハラトは足を組んで座っていた。
『黙れブタが。』
『オレがいつ喋っていいと言った?』
『す、すみませんッ!』
──パァァン!
『あひぃっ!』
師団員のお尻を勢いよく叩くバハラト。
『黙れと言っているだろうッ!』
その目の前にはダイオウサソリの獣人のコウハが、片手を腰に当てながら眉間にシワを寄せ、険しい表情で見つめていた。
『……。』
《姐さんや他のみんなが気になるが…》
《かと言って男共がアレじゃあな。》
『……チィ。情けねぇ。』
──ザッ──ゴドッ、ゴドッ!
シュビッ!!
勢いよく走り出すコウハは、太いヒールの音を鳴らしながら、バハラト目掛けて大きな尻尾を突き出していた。
『オレより上に立つなよ。』
『──"跪"──』
──ピッ。
座ったままのバハラトは、右手の人差し指を下に向ける。
その瞬間───コウハは足を止めると、そのまま膝を地に着けていた。
──ガクッ…!
『なっ…!』
──スッ、スタッ、スタッ……
クイッ。
立ち上がったバハラトは跪くコウハの元へ歩いていくと、コウハの顎を持ち上げていた。
『ふ〜ん。』
《け、結構かっこいいじゃん。》
《あれ……なんか見つめれば見つめるほど…
キュンキュンしてくる。》
『………アンタ。』
《言え!言うんだ私!チャンスだろ!》
バハラトは横目で、頬をポリポリと人差し指でかきながら呟く。
『ど、どう?オレの仲間にならない?』
『は?』
『そ、その。だから…。
アンタがオレの配下にならないかって。』
『……ねぇ…。』
『ん?なに?』
『……ふざけてんじゃねぇって
言ったんだよクソガキッ…!!』
"シュビッ"──!!
コウハは尻尾を振り回すも、バハラトは後ろに跳躍してかわしていた。
『……!』
《……動ける!なぜだ?》
《動けなくなる条件があるみたいだな。》
『……せっかく誘ってやったのに。』
《あぁ〜ん。カッコいいのに…残念すぎる。》
『殺すしかねぇんだぞ。』
《やだやだ。殺したくない……》
『こちとらハナからそのつもりだよ。』
『……。』
《うぐぅ……こんなイケメンから
私が狙われてたっ?まさか…!》
《私のことを…》
『……い、いつからだよ。』
内股になって顔を逸らすバハラトの頬は赤く染まっていた。
手を前に出しながら慌てるバハラトは、コウハに対してチラチラ横目を動かしながら見つめていた。
『あぁん?』
『テメェらが来た時からだろ。』
『……!!?』
《き、き、き、来た時から〜〜〜!?》
《そ、それちぶゅ…だだだだって…》
《ふ、フゥー…おち、おちちゅけ。》
『さ、最初から……なのか?』
指と指を当てながら体を左右に振り、モジモジしながら上目遣いでコウハを見つめるバハラトは問いかける。
《それって〜……ひ、ひ、》
『当たり前だろ。』
>───"ズッキュゥゥゥゥゥンッ"───♡
《一目惚れってことぉ〜〜〜〜〜!!?》
『……ぁあ…ィグッ…!』
──〜〜ビクビク〜〜……〜〜ビクク。
痙攣したかのように体を振るわせるバハラトの黒い短パンの裾からは、太ももを伝うように透明な液体が流れていた。
『……フフッ。アンタは連れていく。』
『魔王城でたっぷり…。
オレとの愛を育もう……♡』
『……イカれてんのかテメェ!』
『地獄でもどこでも……』
『一人で行きやがれ!ビッチが!!』
──シュ──ババッ!!
コウハの前から一瞬の跳躍により移動したバハラトは、コウハの背後から両手を目の前に覆っていた。
『──!!』
《速いッ!ヤツはどこだ──》
『ダァ〜リン。
こ〜こ♡』
そして、そのまま両目に指を突っ込むと、コウハの両目をくり抜いていた。
──バッ!!"ジュボグッ"!!
"ズブブブ"……ボギュギュッ!!
『あがぁぁぁぁぁ〜〜!!!』
『目が……アタシの目がぁぁぁ…!!』
……ポタ…ポタタ……ピチャン。
レロォ〜〜〜……
ジュルルルッ──ジュポンっ。
コウハの目玉の視神経を持って振り子のようにぶら下げるバハラトは、手を高く持ち上げながら片方の目玉を舐め取りながら口の中に入れて舐め回していた。
『…フフ。美味しい…♡』
『アンタはオレのそばに居ればいいんだから』
『ソレはもういらないだろう?』
『オレのそばにおいで。』
《──"惹技擦離"──》
───グワッ!!
『──!?』
《ハサミか!》
《いや、それより…
なんで私の位置が分かった?》
"ガキィンッ"!!
両目を閉じたコウハは、流血しながらもバハラトに向けて大きなハサミを向けていた。
『……ぅぐ…くそ…!』
《中眼が潰された…でも。まだ側眼がある!》
コウハの目元の横には、左右対称に3つずつ小さな黒点のような目が付いていた。
《側眼の視野は中眼に比べて悪い。》
《視界がボンヤリする……
泉を飲む隙さえあれば。》
──サッ!
『アンタ、なんでオレの位置が分かる?』
大きなハサミをかわしたバハラトは、コウハから7メートル以上の距離をとり様子を伺っていた。
『……さぁね。』
《このまま油断させた所に
『蟹鋏』で掴んでやる。》
┏─────── 破片ノ武器『蟹鋏』───────┓
|光沢がある黒色のハイヒール。 |
|しかし、踵と靴の裏側がギザギザな形になっており|
|足の甲に力を加えることで相手を掴むことが可能。|
| |
|また、交互にガッチリとハマる設計となっている為|
|無理に抜け出そうとすると肉が引き裂かれる。 |
┗───────────────────────┛
──ガチ、ガチガチ
コウハは片膝を上げ足を浮かせると、足の甲をクイクイッっとしなやかせて『蟹鋏』を鳴らしていた。
『フム。』
《もしかして……私の匂いに気付いて…》
《ふぎゅうっ〜。ぁ…ぁあ…!》
《臭くないかな。もっと嗅がせて反応を見る?》
《でも…どこを嗅いでもらえばいいんだ》
《ワキか?それとも……》
『……フ、フフフ。』
気持ち悪そうに顔を赤面させながら笑うバハラトに、コウハは尻尾を上に曲げながら走り出す。
──ゴドッ、ゴドッ──ババッ!
《何考えてるのか分からないけど》
『抉るッ!!!』
跳躍したコウハは、バハラト目掛けて踵落としを繰り出す。
バッ──!!ドゴッ!!
しかし、バハラトは真横に一歩避けて半身を傾けると、コウハの右肩に右肘を置いて囁く。
──スッ、──ピタ。
『ど、どこが嗅ぎたい?』
『ハァ!?』
『何言ってんだテメェ!!』
《──"刺愚弄締"──》
──シュビッ!!
大きな尻尾を伸ばしバハラトの体を締め上げると、尻尾の先にある毒針を刺そうとしていた。
──"ブワッ"
『そんなに"キツく"されたら…』
《はぁ……はぁ…。ぎゅ……》
『は、恥ずかしいだろ。』
《ギュンギュンに締め付けられてりゅぅぅ〜!!》
バハラトの匂いが魔力によって散布されたことで、毒針が刺さる寸前でコウハの動きが止まる。
──ピタッ。
《まただ!体が動かない…!》
『はぁ〜……メロいなぁ。
罪な女だな、アンタ。』
《いただき……》
──スッ
そして、お互いの顔が斜め横に向いた状態でバハラトはコウハに口付けを交わしていた。
『美魔女の口付け♡』
《……ます…ぅ》
──チュッ♡
──シュルルルンっ。
『んっ…んふ。んんっ。』 『…くっ、んん…はぁ』
『…んん〜はぁ…ぇろんっ』『……むぅ〜んんん…。』
『おい、抵抗するな♡』
『……んん〜…!!』
《くそッ!体が動かない!》
『これでオマエは、オレのも…』
モゴモゴ……──カプっ。
『ッ──!!?』
バハラトが勝利を確信したその時、ソレは地中から姿を現していた。
《これは!ヘビッ!?》
──ピリ…。
『毒か──!!』
──ブンッ!! カパッ
『シャァァー!!』
足元に噛みついた1メートルほどの白蛇は、毒液をバハラトに注入していた。
体に痺れを感じたバハラトは、すぐに足を振り払って白蛇を蹴飛ばす。
モゴ……モゴモゴゴ……
地面から無数に這い出てくる白蛇。
『……ぅう…。これは…』
《ニーズヘッグ様の…》
コウハが動こうと目線を下げると、無数の白蛇がバハラトに視線を集めていた。
『『『キシャァァアアー!!!』』』
体が麻痺しているバハラトは怒りに満ちた表情で、涎を垂らしながら叫ぶ。
『オレの婚約者だぞォ!!』
『"ヘビごときが私の邪魔をするなァアッ"!!!』
─────────────────────────
【アレクサンドラVSエイシュト・ゼヌノム】
地面には、色鮮やかな緑や青色をした大きな翅が横たわっていた。
──カツ、カツ、コッ。
黄色の8ホールブーツが目線の先に近づいてくる中、アレクサンドラは顔が腫れ上がりその側は緑の血が飛び散っていた。
『……ぅ…ッ…。』
『んっふふ〜ん♩おっきくて〜♫』
『キレイなチョウチョの羽〜♩』
──バッ、スッ。
アレクサンドラの視界には、しゃがみこんで顔を覗かせるゼヌノムの顔が見えていた。
『な〜んだ。まだ生きてたんだ〜』
『あんなにボコボコに殴ってあげたのに。』
『……ええ。言ったでしょう…』
『負けるわけにはいかないと。』
《わたくしがたとえ勝てないとしても》
《せめて、他の誰かが倒せるように
わたくしに出来ることをしなくては》
頬に両手の拳をつくゼヌノムは、光のない真っ暗な紫色の瞳で見つめていた。
『ふーん。』
『あっそ。』
『じゃあ、しねよ。』
しゃがんだまま魔力で出来た大きな拳を振り上げるゼヌノムだったが、足元への異変に気付く。
……ジジジジ…ボコ、ボコモゴモゴ
『………?』
《なんだ。振動?》
ボコ…ボコボコッ!!
『キシャァア!!』
『──!!』
『ヒィヤッ!へ、ヘビー!?』
──ババッ!
その場から距離を離すゼヌノムの周囲からは、白蛇が次々に地中から這い出てきていた。
『……。』
《これは…ニーズヘッグ様の配下のヘビさん。》
《援軍はありがたいですね。》
《ですが──》
…ググ……ググゥッ……バサァ───!!
『わたくしも……まだ…やれる…!』
起き上がったアレクサンドラは、力いっぱい大きな翅を広げていた。
『トシをとるって、つらいよねぇ。』
『ムリすんなよ。ババア。』
『"魔法呑手"』
自身の両手に魔力を纏い、さらに背中から4本の魔力の拳を作り出したゼヌノムは、襲いかかる白ヘビを殴り続けていた。
───"ドドドドドドドドッ"!!!
『ムシにヘビにって、ワラワラワラワラ』
『わいてきやがって……』
『キメェんだよ!オラァ!!』
────ピィィィィン────
アレクサンドラが攻撃の機会を伺っていると、師団員全員に『交信』が鳴り響いていた。
{{皆……聞こえておるか。}}
『──!!』
《ニーズヘッグ様ッ!?》
{{ワレへの返事は良い。}}
{{アレらにはヤツらとヘル達のみに
攻撃するように命令しておる。}}
{{アレらに命の価値はない。
アレらごと攻撃して良い。}}
{{その代わり、敵を殲滅しろ。}}
『……仕方ありませんね。』
《心苦しいですが、これは戦争──》
《時には非情にならなくては》
《しかし、今は好機。》
『───── "光星鱗粉"─────』
〜〜"ブワァァァァァァァァアア"〜〜
キラキラ……
キラキラキララ
『なんだこれ!まぶい〜!』
アレクサンドラが上空に飛び、4枚の翅を大きく広げた瞬間──夕焼けに煌めくように小さな光の粒がゼヌノムを包んでいた。
『あなたはもう─』
『わたくしの姿を見ることはできませんよ。』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
[今回の一言♩]
夏は粉タイプのコーヒーより、液体で割る方がラクだなぁと買ってから気付いた今日この頃。




