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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第三章─樹中海要塞〜月下に流れる希望の光〜─
308/312

欠片306.『紅蓮咲く四季の秋鹿』


    欠片ピース306.『紅蓮ぐれん咲く四季しき秋鹿あきじか』です!





ナウマと交戦するベニグモは、木の上からナウマに向かって5本の脚を広げて飛びかかる。

そして、足先に付いた『足蹴粧ペェディスキュア』を向けていた。



     ──バッ!──ヒュゥゥゥゥ……


        "ズドォォォォン"!!!



勢いよく砂煙が舞い上がり、鮮やかな落ち葉が地面から吹き飛ぶ中──


ベニグモの下には誰もおらず、地面に突き刺さった足を引き抜くベニグモ。

その背後の砂煙からゆらゆらと現れるナウマは、右手の五本爪で引き裂こうとしていた。



        ──"ブワンッ"!!


         "ガキィィイン"!!



背中に2本の手足を回すベニグモは、手先を前に覆うように重ね合わせると、『足蹴粧ペェディスキュア』でナウマの爪を受け止めていた。



         ギリギリギリリ……



      『その重たそうな体……ヒック。』

   『すぐに振り向くのは大変でしょう?ふふ。』


       『あなたは七本。でも──』



     『わたくしは十本よ。じゅっぽん〜』



          ジ───……。



    『おっきくて、おまんじゅうみたぁい〜』



      ──ブンッ!──"ザクゥッ"!!



ナウマは体の向きを変えると、左手の爪でベニグモのお尻の上部を切り裂いていた。



        『ァアッ!……ッく…』


         ──"ビュワッ"!!


           ──スカ


        『おそいおそ〜い。』


     『めっ!そんなんだとぉ〜〜……

      ママには追いつけやしないぞ〜!』



腕を伸ばした突きをかわしたナウマは距離をとっていた。

体の向きを変えたベニグモは、7本の腕と脚をクネクネ動かしながら連続する突きを行っていた。



       『── "八爪刃指ヤツハシ"──!!』



           『むっ!』

    《手足だけなら速さはそれなりだなぁ〜》


          《でも───》



まるで、酔っ払いのようにふらふら動くナウマだが、ベニグモの攻撃を全てかわしていた。



        《当たればだけどね〜》


      『ほんっとうに手つきの悪い女…』



    『そんなに多くてはお邪魔でしょうッ!!』



         ──"ザンッ"!!!


          ブシュシュッ!!


         ──ボトボト……。



        『ィギャァァァ……!!』



ベニグモの悲鳴が森に響く中──



   『グゥゥゥ……!ワタクシの脚をよくも…!』

     


新たに2本の脚がナウマによって切断されていた。

左後足が1本、右後脚が2本──計3本の脚で体を支えるベニグモ。



       『うふっ。いい悲鳴〜〜♡』


         『いたいのぉ〜?』

     『よちよちしてあげよっかぁ〜?』


    『ママが傷口を

     チュパチュパしてあげましょうね〜♡』


   

欠損した足先から紫色の血が垂れる中、ベニグモはお尻から束になった糸を噴射していた。



      ──"ビュヤッ"!!


           ビュ───!!!



       『そんな糸、効くわけ……』


          『──!!』

      《糸の先端が膨らんでる…?》


    《さっきは細い糸だったのに…どうして》



ナウマに向けられた糸は、先端に向かうにつれて徐々に膨らみを増していた。

そして、糸の先が開いた瞬間───


紫色の毒液がナウマに向けて発射されていた。



       ──グググッ……ブビャッ!!



          『これは──』

       《……毒!間に合わな──》


           バッ──!


       ビチャチャ……ジュゥゥゥ…。



顔目掛けて放ったベニグモの毒は、ナウマの咄嗟に構えた左腕に塞がれるもの直撃していた。



        『……ぅぅ…ぅぐっ…』


    ──"ビリビリ"……"ジンジンジン"…。


       《これは……神経毒ね…。》


    《直接感染したわけじゃないのに……

     皮膚に触れただけで体が動かない!》


       ……ピチャン。ピチャン。



焼けただれるように皮膚が赤くなり、垂れ下がった腕から毒液が流れ落ちる中、ナウマは体が痺れて動けなくなっていた。



         《今が好機──》


      カササササッ──"ビュヤッ"!!



ベニグモは左前足を使って、4本の足で素早く移動しながら残った右前足でナウマに向けて突き刺そうとしていた。



         《決まっ──》


       ───"パシィッ"───。


          『なっ!』



       『お母様ぁ〜大丈夫〜?』



ナウマに向けて伸ばされたベニグモの腕は、リリルが掴んで止めていた。



        『ありがとう…リリル。

         助かったわ〜〜。』


      『そのむらさきのな〜に〜?』


       『毒よ。受けたらダメよ。』



        グリンッ──"ビュヤッ"!!



お尻を下から突き出すベニグモは、毒液を直接噴射していた。



         サッ──!ギュムッ。



リリルは毒液をかわすと、すぐさまベニグモの腕を掴み直す。



         『んん〜〜!!』


          "グググッ"!!


        《くっ…なんて力…!》



   『リリルちゃん〜〜〜スペシャル〜〜〜!!』

  


そして、そのままベニグモを持ち上げると、遠心力を利用しながら回転した後──巨木へとベニグモをぶん投げていた。



       グルグル…グルグルグルグル……



      『パワッ────!!!!!』


  

         ──ブゥゥンッ!!



          『くっ……!』

         《受け身を………》



     ──"バガァァァン"!!…パラパララ。



        『いっいぇ〜〜いっ!』



       『ねぇねぇ!みたみたー?』


    『今のリリルちゃんすごかったよねー!』

      『お母様〜!ほめてほめて〜!』



        『うふふ。すごいわぁ〜!

         さすがリリルねぇ〜』



上空で両手の拳を上げるリリルは、足をばたつかせながらはしゃぐと、ナウマの方を見て満面の笑みでピースサインを送っていた。



          『むふふ〜!』


           『あっ!』


       『さっきのきもちわるいの〜

        ……しんじゃったかなぁ?』



           スゥッ──



リリルが口元に指を当てながら困った表情をしていると、背後から夕日を遮るように影が出来ていた。



           『──!』


           バッ──!



リリルも気配に気付いた瞬間に振り返ると、そこには夕日に照らされるエゾジカが、口に赤やオレンジなど暖色系の色をした太刀を咥えていた。



     『アンタらッ!好き勝手ェし過ぎや。』



       『ええ加減にしときぃ!!』



    『ヒィヤァッ!怒られちゃったけど…』


        『だれ〜〜〜〜!?』



        ──シュバッ!!


          パシィッ──!!



リリルが刀を横向きに白刃どりした瞬間──

エゾジカが口にしていた刀は消え、すれ違いざまにリリルの左横腹に再び太刀を口に咥えて突き刺していた。



    『へっへへ〜ん!つかまえたもんねー!』


       ──フッ


          『ほんまか?』



         『えっ?あれ…?』


              "ドシュ"──!!



        『うぅっ…イタっ!!』



       ──ズボッ、"ドガガッ"!!



再び太刀が消えると、エゾジカは後脚で背中に蹴りを喰らわせながら地面に着地していた。



          パカカッ──。



          『リリルっ!』


      『あなたは…… 鹿王季士(ヴァルギュリアス)の…』



リリルは地面に叩きつけられ砂煙が舞う中──

ナウマは、焼けただれ痺れた腕を支えながらエゾジカと対面していた。



     『ウチは法軍ドゥーネイルッ!!』


  ┏────────────────────┓

  |  根踏する馬達(ユグズアース) 第四師団アースガルズ |

  |    鹿王季士(ヴァルギュリアス) 秋鹿(しゅんろく) 紅蓮大公(ぐれんたいこう)    | 

  |                    |

  |   [ドゥーネイル(4)(2561)]    | 

  |      [種族:古獣こじゅう]       |

  |      (モデル:エゾシカ)      |

  ┗────────────────────┛


        『森も、家族も……』

    『めちゃくちゃにしたんやからなぁ…』



   『アンタらは絶対に、許さへんでぇッ!!』



ドゥーネイルがナウマと見合っていると、ナウマの後ろからリリルが起き上がっていた。



    『……よくも…リリルちゃんのお腹を』

       『傷モノにしたなぁ……』


   『お母様〜。このおにくはリリルに任せて。』



    『あとでいっしょにたべちゃおっか。』




       『やってみぃやタコ!』


    『燃ゆる黄河のように真っ赤に茹でて』

  『紅ショウガと一緒にタコ焼きにしたるわ!!』



      『はぁ?いみわかんないし。』


         『食べ物が……』



      『しゃべるなっ───!!!』



       ──バッ!  バッ──!



リリルとドゥーネイルはお互いに跳躍すると、ドゥーネイルは『魔力刀まりょくとう』を口元に出現させる。

赤、オレンジ、ピンクのグラデーションをした半透明の太刀を構えて振りかざす。


──対してリリルは、自身の右拳に魔力強化で覆い殴りつける。




              『ミラクルゥゥゥ〜』

 『紅葉コウハ紅蓮グレンッ!!!』 『パァ〜〜ンチっ!!!』



      ──〜〜"ガキィィン"〜〜──!!



           グググッ……


     《コイツ…魔力強化しとるとはいえ

      素の力がバケモンみたいに高いんか》


           『むむっ』

      《折れるとおもったのに

       おもったよりかたいなぁ〜。》



ドゥーネイルの太刀とリリルの拳が力の押し合いに拮抗する中──

再び太刀を消したドゥーネイルの右横を通り、勢いよく拳を振りかざすリリル。



          《ほな──》


    ──フッ


『なんもおらんとこ殴っときーや』  ──ブンッ!!


                  『あれっ?』



       "ヴヴ"…タンッ──タンッ



ドゥーネイルは空中に魔力を展開して駆け上がると、そのまま太刀を真正面に咥えて真下に急降下していた。



         『終わりやッ!!』



          ギュワッ──!



リリルの背中目掛けて太刀を向けるドゥーネイルだったが、リリルは前屈みの状態から側面に回転するように翼を回した。

そして、その遠心力によりドゥーネイルの太刀を回避しながら左足による蹴りを背中に当てていた。



       ──グググ……グルンッ!!


           ドカッ!!



          『うぐっ!!』



斜めに急降下するドゥーネイルに対して、リリルはすぐにその後を追いかける。

そしてドゥーネイルの首を両手で掴むと、そのまま勢いよく地面に背負い投げのように叩きつけた。



        『ほぉ〜〜〜〜!!!』


          ──ガシッ。


      《あかん……振り解けへん!!》



          『よいっ………』


    "ブンッ"───!!



       《なんちゅーバカ力や!!》



     『しょお〜〜〜〜〜〜!!!!!』


           ───"ドゴォォォン"!!!



         『ガハァッ……!!』



背中から地面に叩きつけられたドゥーネイルは、口から勢いよく吐血して吹き出していた。



         ──パン、パンっ!



手をはたくリリルは、『にこっ』っと、口角を上げると、両手の甲を腰につけながらドヤ顔で立っていた。



      『リリルちゃんの〜〜〜!!』


       『勝っ〜〜〜利っ!!!』



         『……ゴフ…』



横たわるドゥーネイルは肺に肋骨が刺さっていたが、荒い呼吸をしながらも立ちあがろうとしていた。



         『あっれれ〜?』


     『まだ立てるんだ〜。うーむむ。』

     『硬そうなおにくは、きらいっ!』



    ……ポタ…ポタタ。


     『…ヒュー……ハァ、舐めんな。』


            ゴプッ──ボタタタ。


    『こちとら"、死ぬ気で戦ってんねん。』


     『まだまだ、こっからや"ろォッ…!』



立ち上がったドゥーネイルの、燃えるような瞳を見たリリルは不気味な笑みで微笑んでいた。



    『あはっ// いいねぇ〜!いいねぇ!』


    『もっと激しいのヤろうっ!!ヒヒッ!』



      ───ビュュュ────ッ!!



           『──!』


         『リリル!よけて!』



ナウマが叫ぶ中──リリルの側面にある木々の合間から、細長い糸の束が伸びていた。



       ──ザッ、ズザザァァ──。



       『……リリルちゃんはね。』


     『しんけんしょうぶがすきなの。』



木々の合間から現れたのは脚が生え揃ったベニグモの姿だった。



     『じゃますんなよ!クソムシッ!!』



     『なら、始めの妨害は

      真剣勝負のお邪魔事ではなくって?』


         シュルルル……ススス。



           『それは…』

        『たすけただけだもん。』



    『それはまあ〜……

     都合のいい言い訳ですこと。プフッ。』


            ススス……

     


       『……オマエはムシだから

        ただただ潰していいよね。』



   『先ほどの方の方が厄介でしたが…

    あなたなら大したことなさそうですわ〜』


    《子供っぽい単調な性格。

     怒らせればさらに動きは単調となる。》


        《それに…すでに──》



     『リリル!挑発に乗ってはダメよ!』



ナウマが叫ぶ中──

素早く低めに跳躍したドゥーネイルが、ナウマの腹部を魔力刀で切り裂いていた。



         『──"紅葉コウハ紅蓮グレン"』



       ────"ザシュンッ"──!!



       『…ウグッ…!どうし…て…』

        《──!!……傷が…!》



        シュゥゥゥ───ゥ……



傷口が治っていくドゥーネイルの姿を横目で見ながらナウマはその場に倒れていった。



         『……リリ…ル。』



         『ごめん…な…


           ──ドサ。


             さい…。』



        『お母様ッ──!!!』



        『──"八本締女ハガイジメ"──』


        ──ガババババッ!!!



          『───!!』


          ──シュバッ!



リリルの背後から、8本の手脚で包み込むように掴みかかるベニグモの攻撃を素早くかわすリリル。

2対1となった状況で、ドゥーネイルとベニグモは合流してリリルと対面していた。



      『助かったわ〜ベニグモちゃん』



   『いえ。ワタクシの方こそ

    時間を頂いたおかげで回復できましたので。』



         『な、なんで!?』

        『ケガしてたのに!!』



リリルが慌てる中、ベニグモはお尻の先に伸びた糸を前足で持ち上げると微笑み答える。



   『毒液とは別に、糸を分けていましたの。』


      ・・・・・

     『おかげさまで…

      気付かれずに泉を渡せましたわ。』


      ・・・・・

     『おバカさんでよかった。フフ。』



 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


         [今回の一言♩]

      蚊が多くて、梅雨も始まりつつ。

         蚊はやめてほしい。



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