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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第三章─樹中海要塞〜月下に流れる希望の光〜─
305/313

欠片303.『蛇の望み』


       欠片ピース303. 『ヘビの望み』






  【オリジン107年──アース・オルテ 6歳】



     【その年に古獣ラタトクスが誕生】



   【同年 フレーズヴェルグとニーズヘッグが

       ─────────古獣へと至る】




   【その翌年──オリジン108年に

    ギョクト・パト・モモカが古獣へと至り】


   【同年ヘル・リーパーとシビア・ペインが

    誰にも知られることなく古獣へと至った】



          【そして──】


  【オリジン113年──アース・オルテ 12歳】


   【現在までに生存している古獣全ての者達が

    アース・オルテの家族となり──

    本来尽きるハズだった寿命を超越した

    ──────古獣として生まれ変わった】


【そのどのもの達もが口にしていたのは──

 地下の泉水──"咲夜心月サクヤシンゲツ泉水イズミ"の水を口にしていた】



─────────────────────────



        【オリジン2651年】


     【天対魔(てんたいま)戦争 樹中海要塞オルガズムフォートレス防衛戦】




   【大魔族ストラスの配下による侵攻によって

    アース・オルテ率いる『根踏する馬達(ユグズアース)』と

    九天星くてんせいメリウス・マーキュリによる

    ─────────共同防衛戦が行われる】



   【戦争は防衛側が有利のまま終戦を遂げた】


  【その大きな要因は──"命の契約"により

   大魔族ストラス本人が不在によるものとされた】


   【戦況が一変する流れもない戦争だったが

    その場にて"唯一"───】


   【『根踏する馬達(ユグズアース)』の団員にして

    戦いに参加していない者が存在していた】



─────────────────────────



     【それは 防衛戦初日に起きていた】


         【古樹いにしえ竜湖洞リュウコドウ




     ──……ピチャン。……ピチャン。



暗闇の中──水滴が水面へと落ちる音と共に、大きな黄色い瞳が見開いていた。



          『………。』



    ───シュルルル…。ゴゴゴゴ……。



轟音と地響きと共に何かが擦れる音が鳴り響く中、洞窟の入り口に1人の人物が現れていた。



         『暗いわねぇ〜』


  『ジメジメするし。

   あの頃よりも陰気臭い場所になったかしら?』


     『ねぇ、ニーズヘッグ。いや……』



     『"キシャァァアア"ッ───!!!』



大きな鳴き声を放つ影は、女性の声を放つ人物の前に近寄っていた。



       『……何者だ。キサマ……』

     


    『…フフ。主人を忘れるとは、全く。』


    『何年振りかしらね。

     ああ、あの時は男のエルフだったか。』



      『……何を言っている…キサマ

       何者だ?何故ここに現れた。』



大きな黄色い目が睨みつける中、女性の発した名前にニーズヘッグは驚いていた。




          『──ミトス』




         『────!!!』



       『聞き覚えはあるでしょう?』



        『……今更何しに来た。』



      『久しぶりに来てあげたってのに

          歓迎してくれないのね。』



         『約束は守っている。』


       『あれから、誰一人として

        あの場所へは通しておらぬ。』



       『ええ、それはもちろん。

        やってもらわなきゃ困るわ。』


   『当たり前のことをやってこその力ですもの。』

   ・・・

  『それも大事だけれど。アナタには

   やってもらわなきゃいけないことが出来たの。』



    ──シュルルル……"ゴゴゴゴ"ッ!!



       『キサマとの約束は……』



   ビリビリリ……!──"ゴゴゴゴ"ッ……!!




  『──"あの場所を守ることのハズだッ"!!!!!』




洞窟内の空気が揺れ、地面に振動が起きるほどの怒鳴り声を出したニーズヘッグ。



         『……へぇ。』


    『ずいぶん言うようになったものね。』



苛立ちを見せるニーズヘッグの言葉に対して、女性の声色が低くなると脅すように言葉を発していた。



        『アナタにとって……』



       ・・・・・・

      『オルテが全てなんでしょう?』




        『──ッ……!!』



      シュルルル───スススゥ……。



大人しくなるニーズヘッグに、女性は淡々と語りだす。



     『これから魔族との戦争が起こる』


    『それも、次第に大きな戦争へとね。』



      『でも、今はチャンスなの。』


 『魔女の契約によって、魔王や幹部達は参戦出来ない

  つまり、これから五十年は負けることが無いのよ』



     『その間に……必ず誕生させる。』



          ・・

    『そのための役目をオマエも果たせ。』



    『オマエの"望みを叶えたい"のなら──』



─────────────────────────



     『……本当に現れるのだろうな。』



     『調整も良くなってきているわ。

         でも、まだまだかかる。』



       『どんな見た目なのだ…』



          『さぁ?』


  『どれが成功するかはワタシにも分からないわ』


  『まぁ、でも…後から静死シシが来るから

   念には念を。結界を張らせてもらうわ〜。』


    『キミも通ることは出来るけど……』


     『オススメはしない。フフフ。』



     『その結界を解くためのピースだ。』



   『せいぜいその時が来るまで待つことね。』



   『そうそう、ワタシは忙しいから

    もう、来ることはないかもしれないわね。』


 『あ、この戦争のことなら心配しなくていいわよ。』

   『どうせ負けることのない戦争だから。』



           『でも──』


    『約束を破った時は……分かってるな?』




       『……ああ。分かっている。』


               


        『そっ。ならいいわ。』



話を終え、洞窟の入り口へと戻る女性は足を止めると振り返って呟いていた。



         『それから〜』


    『"猶予"は、どのくらいあるのかは

           彼次第だけれど……』


      ・・・

     『その時は静死シシの為に

      死んでちょうだいね〜ウフフ。』




          『………。』




    『悔しい?何か言いたげな目つきね。』


          『でも──』


   『アナタが拒もうと、結末は変わらない。』


         『それまでの間』

    『オルテが死なないことを祈ることね。』



      ──カツ、コツ、カツ──……




      ……ピチャン。……ピチャン。




          『………。』

        《ワシの願いは……》



      ───シュルルル───スッ。



その場から女性が立ち去った後──

滴る水の音と共に、ニーズヘッグは静かに瞳を閉じた。



────────────────────────➖




     【オリジン2688年──現在】




瞳を瞑るフロデューテは、翡翠色の魔力を全開にして体から放出していた。



          『………。』



         『……ゴクっ。』

    《すごい集中。それに、魔力の量も…》



その様子を見守るオルテは、白い水が入った水球をいくつか浮かべていた。

フロデューテは額や頬に汗をかく中、『大庭園だいていえん箱庭ハコニワ』にて話した鳳凰フィーニクスとの会話の内容を思い出していた。



➖───────────────────────



    《我が愛しの子。フロデューテよ。

            聞こえておるか?》



         『──!!』

      《えっ?フィーニクス様!?

             どうして──》



      《時間が惜しい。いか。》


      《ワタシがこれから言うことを

          オルテ様に伝えるのだ。》



     《これは……彼女にとっても──

           決断の時でもある。》



        《……分かりました。》



    《オヌシの中から感じ取っていたが

     この事態を解決する方法ならある。》



         《ほんとですか!》



   《ああ。だが……

    それをするにはソナタの魔力が足りぬ。》


  《だが。オルテ様の犠牲があれば……可能だ。》



          《犠牲…?》


     《ちょ、ちょっと待って下さい!

         命に関わるんですか!?》



   《ワタシにも

    どの程度の影響があるのかは分からぬ。》


          《だが……》

 《オルテ様の命を縮めることにはなるであろうな。》



   《それ以外に救う方法はないんですか!?》



          《ない。》



  《例え、ソナタが数名を回復させたとて

   このままだと、それ以外の者は死ぬであろう。》



         《そんな……》



     《よく聞くのだ。フロデューテ。》


 《咲夜深月さくやしんげつの水を長年飲んできたオルテ様の血液は

  世界樹の水と共に混ざり合い、"一つ"となった。》


         《そして──》



     《"生命の泉"へと変化するのだ。》

     


   《その水は魔力を回復することも出来る。》

         《ただし──》


  《泉は使用すればするほどオルテ様をむしばみ…

          オルテ様の命を削るのだ。》



   《普段なら。

    センジョ殿がオルテ様に許可を得た時のみ

           ──その使用が許される。》


   《それほどのリスクを背負っているのが

          ──"生命の泉"なのだ。》



          《………。》


   《ワタシの力は

    世界樹ユグドラシルの地脈とオルテ様の泉の繋がりを通して

    本来の効力も届けることが出来るハズだ。》

 

   《オルテ様がそこにいらっしゃるからこそ

    ソナタがオルテ様の血を摂取することで》


      《その道は繋がるハズだ。》


    《そして、地脈を通して──

     ソナタの魔力を皆へ届けるのだ。》



     《それ以外にみなを救うすべはない。》


   《ソナタの体に何が起こるのかも分からぬ。

    そして、その判断を下されるのは

    オルテ様の合意の元でなければなるまい。》



鳳凰フィーニクスとの会話を終えたフロデューテは、オルテに向かって話しかけた。



    《そんな……これをするなら

          彼女はどれだけの……》



    《それは、ソナタも同じであろう。

     伝えるかの判断は、ソナタにゆだねる》



       《……分かりました。》



フィーニクスの言葉を聞いて目を瞑ったフロデューテは、数秒して目を開いていた。



          『………』


   『オルテ様。アタシにも繋いでくれる?』



         『………うん。』


フロデューテはオルテに頼むと、参謀部屋の団員との交信を開始していた。



       {{あの、聞こえてますか?}}



フロデューテの声にズクが答える。



        {{どちら様でしょう?}}



     {{急いでるから手短に話します。}}


       {{アタシはフロデューテ}}

  {{鳳凰フィーニクス様の加護の力を持つ鬼人オーガです}}



       {{その痛みなんだけど──}}

 {{アタシが持つフィーニクス様の力で回復出来たの}}



        {{……ホホゥッ!

         それは本当ですか!?}}



      {{ええ、そして……

       全ての話を聞いた上で。

       あなた達が決断して欲しいの。}}



フロデューテはオルテの顔を真剣に見つめながら話し続けていた。



    {{アタシが森のみんなに炎を届けるのか}}


      {{直接術者を倒すのかを──}}



フロデューテの視線はオルテを捉えており、オルテは理解したように頷いていた。



     {{ホホゥッ?そのお話とは…?}}



  {{アタシがみんなに炎を渡す為には

   世界樹の地脈と魔力を繋げなくちゃいけないの}}


   {{でも、その為には膨大な魔力が必要で

    オルテ様の協力が必要不可欠になるわ。}}



     {{では、オルテ様にご協力を──}}



   {{でも、その代償として……

    オルテ様の命を削らなくちゃならないの。}}



   {{ホッ!?フロデューテさん。

    いま……なんとおっしゃったのですか?}}



ズクの質問に、オルテが話し始める。



        {{ワタシから話すよ。}}



    {{みんなも知ってる"生命の泉"は──}}


   {{ワタシの血液が混ざった

    世界樹から滲み出た水から作られてるの。}}



  {{その泉の力の源は──ワタシ自身の生命力。}}



   {{センジョに頼んで許可をとらせていたのは

        全部──古獣達とパパの提案よ。}}


   {{心配してくれる家族みんなや師団長達が

    あまり使わないようにしてくれてたの。}}


 

    {{ホホゥ…それでは、その方法だと…。

            オルテ様のお命が…。}}



沈黙がその場を包む中、フロデューテが再び話し始める。



   {{それか、アタシは無効化できるから

    直接術者を倒しに行くことが出来ます。}}


  {{そしたら、みんなの症状も治るかもしれない!}}



フロデューテの言葉に、リーブスが呟く。



    {{フロデューテ様。よろしいでしょうか?}}



          {{え、ええ。}}

        《幼い声。誰だろう?》



     {{わたしは参謀班のリーブスと申します。}}

    {{我々の方でも一度は考えたのですが。}}


           {{仮に──}}


  {{術者を倒しても

   効力が残り続けてしまう場合を考えた時。

   現状での対策として

   いま動くのは、あまり得策とは言えません。}}



       {{オルテ様。ご判断を。}}



リーブスの言葉に、オルテは初めから決めていたかのように答える。



         {{家族を守る。}}



     {{ワタシのことはいい。絶対に……}}



     {{森のみんなは死なせないッ!!!}}




ズクが心配する中、オルテはズクとリーブスに指示を出していた。


         {{オルテ様……}}



   {{このことを知ってるのはワタシ達だけ。}}


 {{でも、フロデューテちゃんが魔力を渡す為には

        みんなの位置を知る必要がある。}}



 {{戦いに参加するみんなに動揺させたくないから。}}


  {{このことは、みんなには知られないように

         第三師団(パパ達)の力を借りてほしい。}}



   {{リーブス。ズクさん。お願い出来るかな。}}



オルテの弱々しくも優しい声色で発せられた言葉に、リーブスとズクはお互いが顔を見合うと静かに目を瞑り受け答えていた。



       {{{{かしこまりました。}}}}



 {{じゃあ、ワタシはフロデューテちゃんを連れて…}}

   《でも、ニーズヘッグのいる所はいま…》


  《しかない。簡易的な場所でするしかない。》



       {{神秘の花園に向かうわ。}}



 {{では、ワタクシとリーブスさんは

     ラタトクス様率いる第三師団と

     フギン様、ム二ン様にご連絡を行います。}}


    {{位置が分かり次第──

     ムニン様の遣いを向かわせましょう。}}



        {{ええ。お願いね。}}



交信キューソー』を終えたオルテとフロデューテは、『世界樹ユグドラシル』の根本の幹に空いた洞窟──『神秘の花園』を目指して移動し始めていた。


それと同時に、参謀部屋『木陰コカゲ』にて、ズクとリーブスの指揮下の元──

第三師団員と第一師団員フギンとムニンによる森全域にいる人員全ての位置を把握する方針で動き始めたのであった。


そして、その間も戦地の動きは激しさを増していく。

ネビュロスによる『苦痛(トーチィヤ』と『中毒メトゥルターム』が森全域を対象に『根踏する馬達(ユグズアース)』と住民全てにかかる中──



───アウスラストが動き始める。




 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


         [今回の一言♩]

 一応、290話の時点から、現在まで時系列的には少し前の出来事を書いてます。

 なので、290話のサーチの話に戻って来た時が、現在軸の最新の時間と思ってもらえればなと思います!



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