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星屑の機巧技師(せいせつのきこうぎし)  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
第三章─樹中海要塞〜月下に流れる希望の光〜─
304/312

欠片302.『星海に届いた少女の願い』





一夜が明け、負傷が完治したラタトクスは元気になっていた。

そして、オルテと共に地上へと戻っている時にそれは起きた──



      『よかったね!ラタトクス!』


      『にぎゃっはっは!せやなぁ!』




         『え?』『え?』




オルテの言葉に対して、肩に乗っている小さなリスは人間の言葉を話していた。



     『え…?いまの、ラタトクス……?』



オルテが驚いた顔で見つめていると、ラタトクス自身も驚いたように自分の手足、周りの景色を見渡しながら呟いていた。



      『……コレ、ほんまかいな……』


          『オイラ…』



       『やっと……。ウソやん…』


       ……ポロ。  ポロロ……。



小さな体から流す大きな涙に、オルテは目を大きく開けて静かに見つめていた。



         『……ずっと。』


      『ずっと、話したかってん。』



   『オルテと出会ったあの日から…ずっと!』



涙をぬぐうラタトクスを見ていたオルテの瞳もうるうると視界がぼやけ始めると、大粒の涙を流していた。



      『…ふぐっ。わたしも…。』



     『…うぅ……ぅわぁぁぁ〜〜ん。』



溢れ出す感情とは裏腹に、言葉が出てこないオルテはただひたすらに泣き続けていた。



    『そうや。はは……オイラ。

     ずっと言いたかったことがあってん。』



      『…ぅぅ。…ふぐっ。…ぅえ?』



涙を拭うオルテの目元と鼻は赤く染まり、鼻水を垂らしながらラタトクスを見つめていた。



          『オルテ』


      『オマエはひとりやない。』



       ───"ブワッ"──ゾクク



      『……!!……ふぐぅぅ……。』



体を襲う鳥肌を感じながらも、オルテは眉をひそめ、口元に力を入れて涙を堪えていた。



   『オマエの家族がどこにおるんか知らんけど。』



         『これからは……』



      『オ"イラが家族にな"ったるぅ!』



       『オマエはひとりやな"い!』

        『生きててええんや。』



      『オマエは、生きててええんや。』



       『オイラはラタトクス

        オルテのとうちゃんや!』



       ──ガバッ!!ギュっ!!



         『う"ん"っ!!!』


ラタトクスを抱きしめるオルテは、疲れ果てるまで泣き続けた。



     『うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ん』



─────────────────────────

─────────────────────────



日も暮れ始めた頃、洞窟の中で眠っているオルテを見つめながら、ラタトクスは考え事をしていた。



   《でも、なんでいきなり……

    ヒトの言葉を喋れるようになったんや?》



     《そねぇなことがありえるんか?》


        《生まれて四年……》

   《ニンゲンとの会話なんてできひんかった。》




   《あの水……地下の水にヒミツがあるんか…?》



頭を悩ませるラタトクスだったが、考えるだけ無駄だと気付きオルテの頬に手を当てて撫でていた。



     『えへ…へへへ。くすぐったいよ〜』


    『ラタトクス〜。

     ずっ〜と、ずっといっしよだよぉ。』


      『…へへへ…むにゃむにゃぁ。』



寝言を喋るオルテを見てラタトクスは笑顔で見つめていた。



 《まっ!なんでもええか!この笑顔が見れたんなら》


    《そうや!今度、友達紹介したらな!》

          『にひひ!』



─────────────────────────



          【2週間後】



ラタトクスが喋れるようになって2週間が経った頃、ラタトクスがオルテの元へ数匹の在屑物アニマを連れてきていた。



       『オルテー!紹介するでー!』

         『オイラの友達や!』



        『パパー!おかえりー!』

          『そのこたちが?』


     『みんな、ごっつうまい木の実を

           分けてくれるんやで!』



          『チチチチっ!』

          『クルッポー!』

         『フブゥーブゥー!』


        

        『わぁ〜!かわいい〜!』



オルテが見ていたのは、ラタトクスの隣に小さな白いモモンガ、灰色の毛並みをしたハト、小さな白いウサギが横に立っていた。



         『キュキュウ!』



ラタトクスが鳴き声を出すと、3匹はオルテに向かって鳴いていた。



         『チチチチっ!』

         『クルッポー!』

        『フブゥーブゥー!』



       『うふふ、よろしくねぇ!』


       『あ、えっと〜…うーん。』



        『ねぇ、ラタトクス。』


         『ん?なんや?』


    『このこたち、おなまえはあるの?』


      『そういえばないなぁ〜

       オマエら、名前欲しいか?』



         『チチチチっ!』

         『クルッポー!』

        『フブゥーブゥー!』



     『ふふっ、かんがえてあげるね!』



呼び方に悩むオルテは、唇に人差し指を当てながら3匹を見つめていた。



        『あなたは〜モモカ!』

    『モモみたいにほっぺがかわいいから!』


         『キュキュウ〜!』



モモカと名付けられたモモンガの在屑物アニマは、ぴょんびょんと飛び跳ねながら喜んでいた。



     『あなたは、ハト、ハト〜う〜ん。』


          『ポー?』


         『パトちゃん!』

         『どうかなぁ?』


         『クルッポー!』



パトと名付けられたハトの在屑物アニマは、両翼を上に広げて鳴き叫ぶ。



        『そして、あなたは……』


    『あのひとから、きいたことがあるんだ。

        うそかほんとかわからないけど。』


    『おそらにうかぶおつきさまには──

     おっきなうさぎさんがいるんだって。』



  『そのうさぎさんはギョクトってよばれてたの』



       『フブゥー!フブゥー!』



鼻から音を鳴らすウサギの座屑物アニマは、オルテに近寄ると頬を手に擦り当てていた。



    『うふふ!やわらかくてふわふわだ〜』

      『よろしくね、ギョクト!』


         『フブゥー!』



ギョクトと呼ばれたウサギの在屑物アニマは、オルテの顔を見上げながら鳴いていた。


そして、笑顔で応えるオルテと4匹の動物達は太陽が真上に上がる頃まで戯れていた。

そして、ラタトクスの提案で、森の中で木の実探しをすることになっていた。



       『せや!木の実探ししよか!』

     『誰がごっつとれるか勝負やでー!』



          『うんー!』

         『キュキュー!』

         『クルッポー!』

         『フブゥー!』



─────────────────────────



     ──ドサドサドサッ…ゴロゴロ。



それぞれたくさんの木の実を地面に置くオルテと、ギョクト、パト、モモカの3匹。

ラタトクスの姿が見えない中、オルテ達はしばらくの間待ち続けていた。



         『パパおそいね。』

       『なにかあったのかなぁ。』



         『ワンワンっ!』



         ──バサバサッ!


          『ポー!』



モモカが別の鳴き声で鳴く中、ギョクトは仁王立ちで背を伸ばしながら周囲を見渡し、パトは空へと飛び上がっていた。



       『わたしたちもさがそう』


         『キュキュ!』

         『フブゥー!』



そして、オルテと共にモモカとギョクトも森の中を探し始めていた。



─────────────────────────



その頃、ラタトクスはケガを負っているオウギワシとニシキヘビの在屑物アニマを見つけていた。



      『おい!大丈夫か!オマエら!』



       『……キュルル…キキィ。』

       『…シャ……シャァァ…。』



弱々しい声で鳴く2匹を見つめながら、ラタトクスは焦っていた。



      《どないしよ……このキズ…》

 《このままやと間違いなくふたりとも死んでまう》


     《オルテがくれたあの水があれば…》



    『でも、どないしたらオルテを呼べる?』


  《みんなの場所も分からん…!

   オイラじゃふたりは運べへん…。クソォ…!》


   『なにか…伝える方法…

    オイラの声を届けるほうほうがあれば…』



 《どんなところにいても。声が届く力があれば…!》



     『何か、何かないんかぁぁぁぁ!!』



          ───ポゥ。



ラタトクスが叫んだその時──

ラタトクスの体のお腹辺りが青緑に光り始めると、魔力が発現し宿っていた。



     『なんや……これ…あったかい。』


   『感覚的に分かる。これはオイラの……』

       《オイラが望んだ力。》



         《今なら…》


     《オイラの声が届く気がする!》



    ─────"ピィィィン"─────




       {{オルテッ!聞こえるか!}}


     {{ギョクト!パトやん!モモカ!}}

         {{誰でもええ……}}



   {{聞こえとるんなら返事してくれぇー!!}}



ラタトクスは脳内から念話を発信していた。

そして、その声はオルテやギョクト達にも届いていた。



         {{ラタ…トクス?}}


    {{きこえるよ?あたまのなかに

     こえがひびいてる…ラタトクスなの?}}


        {{いま、どこにいるの!}}



      {{ば、ばしょ…せや!ここは……}}



        {{この前の洞窟の近くや!}}


    {{そばに、ギョクトやモモカがおるなら

     匂いでオイラの場所がわかるハズや!}}


      {{ケガしとるヤツらがおんねん!}}



      {{わ、わかった!すぐいくから!}}



           {{たのむ!}}



      『もうちょいまっててくれや。』


     『きばりぃや、オマエら!

      死んだらあかん!オイラの前で…』


     『誰か死ぬんは許さへんぞッ!!』



ラタトクスは、血を流して倒れている小さめのオウギワシとニシキヘビを見つめていた。



─────────────────────────

─────────────────────────



    『……ハァッ、ハァッ!ラタトクスッ!』



       『オルテッ!こっちや!』

   『たのむ!泉のとこまで連れてってくれ!』



         『うんッ!!』


息を切らしながらラタトクスの前に現れるオルテと、その後ろから走ってきたギョクト達は、すぐに目の前の事態を把握すると、オルテは両手でオウギワシとニシキヘビを抱えて走り出した。



      『……ハァッ──ハァッ!』

    《はやく、このこたちをたすけたい!》



       『……ハァッ、ハァッ!』

   《出血してかなり時間も経っとるハズや。》

     《時間がない。頼むで、オルテ。》



洞窟を走るオルテは、転けないようにかつ急いで走り抜けていた。



     ──ダッ─ダッ──"ガリッ"!!



        『……ッうぐ…!』


      『……ハァッ!……ハァッ!』

     《あとすこし、あとすこしだ!》



突起していた石が足の裏に刺さり、肉が抉れようともオルテは走り続けた。

その後ろ姿をラタトクス達は見つめながら、必死に後を追いかけていった。



      『………ハァッ。ハァッ。』



       『ついた…!水を……!』



       ──ザッ──ススッ。



     ──スクゥ──チャプン……スッ。



2匹を地面に横たわらせたオルテは、すぐに水溜りの水をすくって飲ませると、オウギワシとニシキヘビの欠損部位は回復し始めていった。


その様子を見たオルテ達は安堵の様子で見守っていた。



     『ふぅわぁ〜〜、つかれたぁ〜』

     『でも、まにあってよかったぁ』



       『ほんまありがとう!』


  『オルテがおらんかったら……

   オイラじゃ。コイツら助けられへんかった。』


    『ほんま良かった…。良かったぁ。』



ラタトクスは、力が抜けたように足を前に出して座っていた。

その様子を見たオルテは優しくそっと頭を撫でていた。



        『パパのおかげだよ』


    『パパがおしえてくれなかったら

     みつけることもできなかったもん』


  『だから、パパがふたりをたすけたんだよ?』


    『えへへっ!それに…

     みんなもはしりまわってくれたんだ!』



立ち上がったラタトクスは、オルテが振り返る方を見ると、ギョクト、パト、モモカが笑顔でふたりを見つめていた。




    『……はは。にぎゃっはっはっは!』


  『せやろせやろ〜!オイラのおかげやなぁ〜!』


         『でも……』



     『『『『──?──』』』』



      『みんながおったからやな。』



       『オイラたちは家族や!』


   『誰かが困ってたら、助け合う。

    この森に住むみんなを守るために

    いつか、おっきな木のテーブルの上で』


  『みんなで囲って美味しいもん食べんねんっ!』



ラタトクスの言葉に驚くように瞳を開けるオルテは、顔を下げ目をつむった後に、微笑みながら見つめていた。



        《あっ!……ふふ。》



そして、ラタトクスは両手に腰に当てながら、威張るようにそっぽを向いて横目で全員を確認しながら話を続ける。



  『そ、そんときは、特別やけど。

   まぁ。オイラの好物のキノコも分けたるわ!』



          『うんっー!』

         『キュキュー!』

         『クルッポー!』

          『フブゥー!』


      『にぎゃっはっはっは〜〜!』



翡翠色の光に包まれながら、オルテやラタトクス達の笑い声は洞窟内に響き渡っていた。




    欠片302.『星海に届いた少女の願い』


                   ーmmm∫1.


         『これは……』



       『興味深いね。フフ。』



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