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───"──"ゾクゥゥゥ"──"───

     挿絵の解像度はサイトの関係で

     元の絵をスクショしてるので荒いです。

  (あと、一部髪色を塗り忘れてる箇所がありました)





          「──!!」

         (この気配《オーラ》は…!)



          「まさか……」


       「……扱えるというのか。」

          (ありえない。)



        (話には聞いて

        いたが……

        ワタシ以外に

        他の星屑《せいせつ》の力を

        扱えるなんて……)



        (この子は、本当に──)



   挿絵(By みてみん)



大きな瓦礫の上に仰向けになる白髪の女性は、頭部から血を流しながら目の前の光景を見つめていた。



       「……ハァ……ゼェ……

        アンタ、いったよな……」



          ……ググッ……


         ……ググググ……。



表面がざらついた白い大剣を小さな体で持ち上げようと、片手が折れたまま左手で柄《つか》を掴む少年。

その少年は、頭部から血が垂れながら吐血しながら喋る。



      「……何者にすらなれないって

       ……ハァ……ゲホッ…!」


         「……ヴゥ"……」



       「よせッ……!ッ…。

        オマエにアイツは──」



紺色の瞳で見つめる少年の先には、大きな「ワイバーン」の見た目をした機械生命体が迫ってきていた。



      『……グルルルルルッ……!』



   挿絵(By みてみん)



     「……答えはまだわかんねぇけど」



    「何も"なかったオレを………ヒュー…」


       「育ててくれた……ハァ…

        おやっさんにィ"……!!」



           グググ……


      「"認められるためにィ"…

       ……ヴゥ"ァ"……ァ"ア"ッ!」



血で濡れた手で重たい大剣を持ち上げる少年は、目の前の怪物に向かって叫ぶ。




     「"オレはァ"ァ"ァ"ァ"──"!!!」




   挿絵(By みてみん)




         ……ポタ…ポタタ。



         ググググッ………


         ──"ガチャリ"!!




 「"こんな"ところで死ね"ねェんだよッ"!!!!!」




  欠片(ピース)1.『何者にもなれなかったあの日の少年』



   挿絵(By みてみん)



────────────────────────➖



   【スペース2688年──惑星 オリジン】


    【窪地隕孔《タマモツキ》の玉藻月面要塞《リムクレータフォートレス》 龍星街《リュウセイガイ》】



周辺は何もない広大な大地に、湖面に薄く円を描いたような大地があった。

中心に向かって緩やかに陥没しているその中心地には、荒れ果て荒廃したような薄汚いボロボロの街が立ち並んでいた。



      "カァァァン"──"カァァァン"。



金槌を振るう音が鍛冶場内に響く中、屈強な体格をした背の低いドワーフは答える。



     『新しい破片ノ武器(ウェード)を造るだァ?』


      ┏─────────────┓

      |    機巧技師(きこうぎし)     |

      |             |

      |  [ツベチカ(56)]   |

      |  [種族:ドワーフ]   |

      ┗─────────────┛




     「うん!今考えてんのはコレだ!」


      ┏─────────────┓

      |   機巧技師見習い   |

      |             |

      |   [サーチ(15)]   |

      ┗─────────────┛



黄緑色の髪色に、オレンジ色のハイライトが入った少年が元気よく答える。

金槌を振るう手を止めた赤茶髪のドワーフは、一枚の薄汚れた紙に描かれた図を眺めていた。



         《ホォウ……。》


    《しっかり考えられてんじゃねーか。》



          《た、だ……》

       『連結部分が弱ぇなぁ。』



      『そんなんだと、振った瞬間に

       刀身部分が折れちまうぞ』


      『もっと接続箇所を増やしてみろ』



『んっ』と、手に持っていた武器の設計図をサーチに返すツベチカ。



         「……たしかに。」


          「そうか……」


     「もっと実戦した時のことを……」



      「ありがとう!おやっさん!」



設計図を見ながら口元に指を当てて"ブツブツ"と呟くサーチは、元気よくツベチカに礼を言って自室へと去っていった。



─────────────────────────



自室に戻ったサーチは、自身が描いた設計図を見直しながら頭を悩ませていた。



      「オレは、筋肉もねぇから……」


    「……重量も見直しが必要か。

     ……いや、でもそれだと材料が……」


      「う〜ん。でも……

       やっぱり外せないよな〜。

       ソレがこの武器の強みだ…」



      「んん〜〜………だぁ〜!!」


          「くそっ…」



ひとしきり悩んだサーチは、冷たく薄暗い部屋の中で天井を眺めていた。




    「………あれから、十年も経ったのか。」




サーチは天井を真っ直ぐに見つめたまま、昔の記憶を思い返していた。



          (あの時……。)


   (おやっさんがオレを拾ってくれなかったら。)


     (オレはいま、どうなってたんだろ。)



➖───────────────────────



     『──の野郎……なんてことを…』



     『……ハァ……ハァ…。……あぁ!?

      なんだってこんな場所にガキが…』



          『──!!』



燃えしきる街並みの中──


ツベチカは、灰で服や体が黒く汚れ、顔は痩せこけ、髪の毛は白いボロボロの姿をしたサーチを見つけていた。



          『………。』



       『おいッ……ガキぃ!!』


     『死にたくなきゃあ!

      オレと一緒に来やがれッ!!』



          「………。」



何も喋らないサーチは、ただ燃える街と巨大な生物の姿を光の無い虚な瞳で見つめていた。

少しの間、その様子をツベチカは何かを思うように見つめていた。



          『………』



    『……来いってんだッ!バカヤロウ!』



       ──パシッ───ガバッ!!



ツベチカはサーチの細い腕を掴んで引っ張ると、

そのまま抱き抱え、燃え盛る街の中を駆け抜けていった。



────────────────────────➖



          「………」



天井を見つめていたサーチは勢いよく起き上がる。



          「よーっし!」


      「ぜってぇ完成させてやるぜ!」



素材となる鉱石を掘るために部屋を出たサーチは、街の地下採掘場へと向かっていった。



─────────────────────────



道中、サーチが小さなポーチの中を探りながら走っていると、薄い紺色のコートを着た白髪の女性にぶつかっていた。



          「いてっ…!」


           ──ドサッ。



       「………。大丈夫か、少年。」



          「う、うん!」


    「ごめん。前見てなかった。へへへっ!」


        (見たことない人だ……

         王国の人かな?)



      「そうか。気を付けるといい。」


          「ではな。」



          「おうっ!」



挨拶を交わした女性は、サーチが走ってきた方向へと去って行く。

そして、サーチもまた地下の鉱脈へと向かって行った。


長いポニーテールが夕日に照らされる中──


白髪の女性は振り返ると、小さくなる少年の背を見つめていた。



           ──ピタ。


         クルッ──ザリ……



           「……。」



─────────────────────────



          【3日後】




     ───ゴロゴロ……ガララッ!



石でできた細長のテーブルにたくさんの鉱石や木材を広げるサーチは、ツベチカの工房を訪れていた。

手際よく鍛冶場の竈門《かまど》に火を灯すサーチを見ながらツベチカは質問する。



       『なんだ、木もあんのか?』

    『軽屑《ケイセツ》と破片《クズ》で造るんじゃなかったのか』



           「うん。」


    「やっぱり、重量感を考えてみたときに

     オレの腕じゃあ持てないと思ったんだ」


      「でも、ある程度重さがないと

       実戦ですぐ壊れちまうだろ?」



       《それはそうだが。

        鉄でもいい気もするがな。》


     『まぁてめぇの破片ノ武器(ウェード)だ。

      好きにしな。オレァ手伝わねぇぞ?』



         「えぇぇ〜〜!?」


    「ちょっとくらいは手伝ってくれよ〜!」

        「おやっさん暇だろー?」



    『あぁ…?んなわけねぇってんだろっ!』



         ──ゴチンっ!!



大きな拳でサーチの頭に拳骨するツベチカ。



        「いってぇえええ〜!!」


     「いつも暇そうにしてんだろーが!

      たいして繁盛してねぇくせに!」



       『なっ!ばぁかやろぅッ!!』


       『オレは特注品を

        拵《こしら》えてんだっつーの……。』


      『てめぇの作るおもちゃとは

       ワケが違うんだな〜コレが!

       ────ガッハッハッハ!』



        「なんだとぉ〜〜!!」


          「ハンッ!」


       「オレだって、いつか。」



     「ぜってー星屑《せいせつ》を作ってやるんだ!!」



太々(ふてぶて)しい表情をしながら鉱石の大きさを分別するサーチに、ツベチカは思い出したかのように声をかける。



           『サーチ』


     『そういやぁ、オメェ

      九天星《くてんせい》を見てぇっつってたか?』



          「えっ?」



       「おう!みたい!みたい!」


      「王国の聖騎士《パラディン》たちだろっ!!」


          「もしかして」

     「王国につれてってくれんのか!?」



     『いや、王国にゃあ行かねぇが……』

      『信頼できるヤツが来てるぜ。』



          「きてる…?」


        「ここにきてんのかー!

         どんなヤツなんだ!」



      『オレの、弟子だったヤツだ』



           「はっ?」


     「おやっさんの……でしぃぃ〜〜!?」



       ──ブツブツ。ブツブツ。


   「……となると…機巧技師なのか…?

    いや、そんな話きいたこともなかったのに。

    おやっさんはたたかえないし。

    それなのに騎士で……天星…?」




        「ワタシに何か用か?」


    ┏───────────────┓

    |    九天星(くてんせい) 宵月(よいづき)     |

    |   [アストラ(33)]    |

    |    [種族:ヒト]    |

    ┗───────────────┛



サーチが小声でブツブツと喋っていると、背後から女性の声が聞こえてきていた。



          「おわっ!!」


     「びっくりしたぁ……、って…ん?」



       「"あ──"!!オマエ!」



          『んだぁ?』


    『なんだ、オメェらもう会ってたのか。』



   「いや、この前コイツとぶつかったんだよ!

    オマエが……王国の聖騎士《パラディン》なのか!?」



           「ああ。」



        「こんなヤツがぁ〜〜?」



ジロジロと全身を見つめるサーチに、アストラが一蹴する。



           「少年。」


     「人を見た目で判断しないことだ。」


    「どんな人物かを決めるには

     己《おのれ》の目で確かめた後に決めるものだ。」


     「それは、道具や物も同じだろう?

      まだ、見習いと聞いていたが……

      機巧技師を名乗る者として──」



      「己の人格を下げないように

       気を付けることだな。」



           「むっ。」


    「そんな体で、騎士がつとまんのかよ。」



サーチはアストラの白くて細い腕を見て答える。



         「試してみるか?」



─────────────────────────



        ──ドサッ。ガバッ─!



         「……くそッ…!」



サーチは床に這いつくばっており、背中の上にアストラが膝を乗せ押さえ込んでいた。



       「口だけは達者なようだな。」


          「いいか──」



   「力を持たない者は、何者にすらなれない。」


         「よく覚えておけ。」



   『アストラァ〜。その辺にしといてやりな。』


     『バカなガキ(そんなん)でもオレの愛弟子(バカ息子)だ。』


         『すまなかったな。』



       「なんでっ!

        おやっさんがあやまっ……」



          ──ゴチンっ!!



          「いてぇ!」



          『るっせぇ!』


      『オメェはちゃんと謝りやがれ。

       ったく……』



サーチの頭に拳骨を入れるツベチカは、アストラの方を見てため息をついていた。



         「その子が例の」



          『…ああ』

         『頼めるか?』



     「……彼との約束もある。

      それに、貴方の頼みは断れない」



      『フッハッハ!オレァ

       いい弟子達をもったもん……』



        ……グラグラグラ……



      ───"ズズゥゥン"!!!!



       『だ……』    「──!」

      《まさか……》   (なんだ?)

           


     ───"ズゴゴゴゴゴゴゴゴ"ッ!!!



    ────"ドガァァァァァンッ"───!!!




アストラとツベチカがいち早く異変に反応する中──


街の外では、大きな地震と共に500メートルを超える「カメ」に似た機屑物《ガーベマジル》が現れていた。

さらに、小型から大型までの機屑物《ガーベマジル》も現れており、『龍星街《リュウセイガイ》』にいる住民はパニックに陥《おちい》っていた。



          「なんだ!?」



     『……。』


      ──コクッ。  「……。」


               ──コクッ。



サーチが驚く中、ツベチカとアストラはお互い頷くと、アストラはサーチの腰を掴み、そのまま抱き抱える。



         ───ガバッ!



      「…はっ!?──お、おいっ!」


         「なにすんだよ!」



      「キミを連れてこの場を去る。」



           「は?」


       「なにいってんだオマエ」



   「みんなは……オマエは天星なんだろ!?」


       「なんで逃げるんだよ!!」


      「機屑物《ガーベマジル》も倒せるんだろ!!」



           「………」


    「それがツベチカとの約束だからだ。」

       「後は彼がなんとかする。」



         「なにいって……」

    「"おやっさんはたたかえねぇだろ"!」


     「"オレたちは機巧技師だぞッ"!?

      なぁ!おやっさんッ!!」


   「おやっさんからもなんとかいってくれよ!」



       「コイツが戦えばいいっ……」



         ──"ギロッ"!!



         「て……うっ…。」



          『サーチ』


     『いいからオメェは黙ってろぃ……』



初めてみるツベチカの形相《ぎょうそう》にサーチは驚いていた。

それでも、サーチは負けずに言葉を発しようとした時──



         「でも──!」


          ──トンっ。


        「──うっ……。」



手刀によってサーチを気絶させたアストラは、サーチを抱えたままツベチカを見つめていた。



    「これで……本当によかったんですか」



          『……ああ。』


     『いつかは来ると思ってたからな』


      『…むしろおせぇくらいだな』


   『あの野郎のことだ。

    何してくるか分んねぇぞ。きぃつけろ』



           「……。」


           ──コク。



何も言わずに頷くアストラ。



         『………………。』



サーチを見つめるツベチカは、視線をアストラの瞳に戻すと呟いた。



          『頼んだぞ』


          「……はい」



そうして、アストラが街から離れ始めるのと同時に、ツベチカは巨大な斧を構えながら大勢の機屑物《ガーベマジル》の中へと向かって行った。



─────────────────────────

─────────────────────────



サーチが目を覚ますと、アストラが街の中を移動している途中だった。



        「──ん……んん。

         あ!おいっ!」



         「はなせよっ!」



暴れるサーチを離すと、アストラに向かってサーチは睨みつけていた。



    「……悪いが、このまま来てもらうぞ。」



         「……オマエ。」



        「ふざけてんのか。」


          ……"ガシッ"!



アストラのコートの一部を力強く掴むと、サーチは叫んでいた。



      「"ここはオレの故郷だ"!!」


      「おやっさんと、

       街のみんなと一緒に

       暮らして来た場所だぞッ!」



   「"王国の騎士なら逃げずに戦えよッ"!!」



          「………。」



サーチの言葉に、アストラは無表情で見つめていた。



         「オレは……」


    「アイツらからみんなを救ってくれる。

      アンタら騎士達を尊敬してた……。」


     「そんなアンタらのために

      破片ノ武器(ウェード)を造る

      おやっさんの姿に憧れたから……」




   「オレは──"機巧技師《きこうぎし》になったんだッ"!!!」




歯を食いしばりながら頬と鼻筋を赤らめるサーチは、力いっぱいにアストラの服を握っていた。



         「………。」



  「戦えるオマエが、逃げてどうすんだよ……。」


      「オレにも……力があれば。」




          「………。」



         「いいか少年。」


      「力を持っていようと──

       救える命には限りがある。」


   「みなを救いたいのはワタシだってそうだ。」


          「だが……」



         「もういいよ。」



  「…オレは、オレがしたいと思ったことをする。」


     「まもる、まもれねぇじゃねぇ。」




      「──"まもりたいか"だろ。」




まっすぐに見つめるサーチの表情に、アストラは目を見開く。



          「──!」



         「それは……」


          ググッ…。



アストラが力強く拳を握る中、サーチは元の場所へと走っていった。

その姿を見つめるアストラは、首にかけた白と黒の『太陰太極図《たいいんたいきょくず》』の模様が入った──


太陽の形をしたネックレスを取り出して見つめていた。



         「………。」

       (守りたいか……か。)



─────────────────────────



迫り来る機屑物《ガーベマジル》から、人々が逃げていく街中をサーチは逆走していた。

そして、道中《みちなか》に怪我をして座り込む少女の存在に気付く。



          (あれは……)



          「──!!」

      (やべぇ!奥から機屑物《ガーベマジル》が……!)



       「……あぁぁあ〜!くそっ!」



         ………タダッ──!!



       (オレだって……こえーよ。)


           (でも──)



          ──バッ!!



          「ッ──!」

       (やるしかねぇだろ…!!)



         ──"パシッ"──!!



走り出したサーチは、通路の店先に置いてあった武器庫箱から小さな手斧を取り出していた。


数メートル先に見える「オオカミ」のような機屑物《ガーベマジル》は、少女に襲い掛かろうとしていた。



        『……グルルルッ!!』



        「……うぅ…ぁあぁ…」



飛び掛かろうとした寸前、サーチが斧の持ち手を機屑物の口元に抑えて止めていた。



       ──"ガキィィィン"!!!



        「はやくにげろッ!」



        「……あ、あしが…」



サーチが少女の足元を見ると、震えており立たない様子だった。



       『…グルルルッガァッ……!』



          「……くっ…」


          「くそ……!」

      (このままじゃ……押し切られ──)



大きな鋭い牙がサーチの顔に噛みつこうとした瞬間──


周囲の叫び声や雑音を置き去りにして、冷たく淡々とした声が──



      その一瞬。 その空間を支配した。




   スゥ───〜〜────〜〜────……




    「『龍屑・孔(リュウセツ・ポア)』─────」





   ─────   ""ボッ""   ─────




              「『針《スティング》』。」




サーチは目を閉じていたが──


しばらくして瞳を開けると、オオカミの機屑物《ガーベマジル》の口内から、奥に存在する景色が見えていた。



          「……な…!」

      (なんだ、いきなり顔に穴が…)



       ───"ドガシャァァァ"……


         ……バチ…バチチ。



地面に倒れたオオカミの機屑物《ガーベマジル》の顔には、大きな孔《あな》が空いていた。



          「なんで」


         「オマエ………」



サーチが振り返って見た先には、アストラが細長い真っ白なレイピアを突き出して構えていた。



     「キミに死なれると困るのでな。」



       「それに、ワタシは──

        誰かを守りたい

        気持ちがないとは

        言っていない。」


     「救おうとする気持ちは

      称賛に値するが、

      ただがむしゃらに

      行動するのは無謀なだけだ。」



そして、数メートル離れた場所からゆっくりとサーチの元へと歩みを進めるアストラ。



          「……でも…」


    「オレが来てなかったら

     この子は死んでたかもしれねぇだろ。」



        「結果論に過ぎない。」



   「現に、ワタシが来なければ

    キミも死んでいたかもしれないだろう。」



           グググ……


  「……"理想を語るのがそんなにダメかよッ"!」



迫り来るアストラに、拳を握りながら叫ぶサーチ。

その言葉を聞いたアストラは、サーチの目の前に辿り着くと数秒ほど目を瞑っていた。

そして、再び目を開けると淡々とした声で答える。



           「……。」


     「理想だけでは

      この世界では生きていけない。」


      「現実があるから

       人々は今を生きているんだ。」



アストラの言葉にサーチは拳を握り続けたまま言葉を返す。



      「……夢も理想もない人生に

       意味なんて…あんのかよ。」


      「ただ生きるだけの人生に

       何の意味があんだよッ!!」



アストラは一瞬だけ感情を表に出しながら答えるも、すぐに無表情へと変え答える。



     「力を持たない者はッ──

      …選ぶ権利すら許されない。」



      「何者にすらなれないんだ。」



     「それすら決めれていない子供《オマエ》は

      ただ守られていればいい。」



そして、声の大きさが小さくなりながら呟くアストラ。



      「………力を持った者ですら

       何者にもなれないのだから。」



視線を下げるアストラに、サーチは真剣な顔で話し始める。



          「……オレは」


      「八〇〇年前に力を持った……

       アンタみたいに、

       力を持つ騎士に

       夢を見たんだッ!」


     「人類の希望を…夢に見たんだよ。」



      「それなのに……

       そんな力を持ってんのに。」


   「"勝手にあきらめてんじゃねェよッ"!!」



         「オレは──」



サーチが背後に何かがいる気配に気付いた瞬間──



         「───!!」



それよりも早くアストラは動き出していた。

片手に構えるレイピアではなく、背中に背負った骨のような質感をした刃先が平らな大剣を片手で掴むと、受け身を取るように構える。


一方で、サーチの瞳には──

振り返った先に見える巨大な影と、目の前に移動したアストラの姿を捉えていた。



         ──"ガバッ"!!!



         ──"ドゴッ"──



巨大な生物による手によって体勢を整える時間がなかったアストラは、背中に持つ真っ白な大剣で受け身をとろうとするも、体の側面を強く打ち付けられた衝撃で大剣を手放しまう。



         「……グッ──」


     ……バッ……"ゴドッ"──"ドスン"。



そして、そのまま遠くの建物へと吹き飛ばされた。



         ──"ブンッ"!!


     ヒュゥゥゥ───"バガァァァァン"!!



         ……ガラガラ……


        ……パラパラ…パラ。



砂煙が立ち上がり、アストラの安否が分からない状況の中サーチは叫んでいた。



        「アストラァッ!!」



    『グルルルッ……"ギャァォォッ"!!!』



重低音の鳴き声を鳴らす巨大な生物を見るサーチは、唾を飲み込みながら瞳を大きく開く。



        「…こ、コイツは……」



目の前に現れていたのは、「ワイバーン」の姿をした機屑物《ガーベマジル》だった。



     「……ぅぅぅ…。パパ…ママぁ〜…。」



          「──!」

     (オレがここで逃げたら、この子は…)



          ……ググッ。



横目で背後で泣く少女を見るサーチは、小さな斧を力強く握りしめる。



        ……ポタ。……ポタ。



         (………なんだ…?)



ワイバーンの顔を見上げるサーチの瞳は、眉間にシワを寄せながら"それ"を見つめていた。



       (ヤツの口から何か垂れて…)



          ──ボトッ。



          「──!!」



       「オマエ、………それ…。」



       "ザワザワ"──"ビキキ"。



目を見開いて、こめかみにシワが寄るサーチの目には赤い脈が血走り、息遣いも次第に荒くなり始める。



         「その腕当ては…」

         (おやっさんの──)



ワイバーンの口元からは真っ赤な血液が垂れており、地面に落ちていたのは──



        "ツベチカの腕"だった。



そして、怒りに満ちた表情のサーチは小さな声で呟く。



         「……ウソだ…」



      「おやっさんが……死ぬなんて…

       そんなわげぇ"ッ───」



         ──"バゴッ"──!!


         …ミシ……ミシシ…



    「──ボッォ"アッ……!!がふっ──」



サーチが怒りに満ちた表情で睨みつけた瞬間──


サーチの体の真横にはワイバーンの尻尾が振り払われており、そのまま奥の建物へと吹き飛ばされていた。




    ──ヒュゥゥゥ──"ドゴォォン"!!!




           「え」




少女が目の前を見上げると、そこにはサーチの姿は居らず、少女はただ──自身に向けられた鋭い銀色の牙が並ぶ口を眺めていた。




        「……ぁあ……

         う…あぁ……ぁ…」



      『"ギャォォォォオォッ"!!!』




        ──"ガキィンン"──!!




        ヒュンヒュンヒュン──


             ──ガララ……



高い金属音が鳴り響く中、ワイバーンの顔に投げつけられたのはサーチが持っていた斧だった。

光によって銀色のように輝く白い金属の装甲に反射された斧が地面へと落ちる。



         『…ゴァァ!?』



機屑物《ガーベマジル》がその方向を見ると、砂煙の中にサーチの影が見えていた。

砂煙が晴れるとサーチの頭部は出血しており、口からも吐血の跡が見えていた。

さらに、右腕は一度大きく曲がったように関節がおかしくなっており、震える足に力を入れたサーチは、かろうじて立つのがやっとだった。



     「……ゼェ…、ヒュゥ"ー……

      ハァ…どご…みてんだ……ゴフッ…」



    「テメ"ェの相手は"……オ"レ"、だろ」



    「…ヒュー……。ケホッ…ゴホァッ…!」



         ──ビチャチャ。



地面に吐血するサーチは、おぼつきながら前へと歩き出していた。



        (コイツは"……オレが…)



    『……オ"レがァ"……"ブッ壊す"…!!!』




          ──チラッ。


         『……ハァ……』



サーチは、アストラが持っていた大きな大剣を視界に入れていた。



─────────────────────────



その様子を見るアストラは、思うように動けずにいた。



          「くっ……」

    (魔力による防御が間に合わなかった。)



           (体が…)



        「逃げろ……少年…」

     (キミはここで死んではならない。)




─────────────────────────



        ……ザリ…ザリリ……



足を引きづりながらワイバーンに近づいて行くサーチ。



          「………!」

       (これは、アストラの……)



        ──スッ……ピタッ──



サーチが大剣に触れた瞬間──

サーチの背中に衝撃が走る。



         ──"ジリッ"──



       ──"バチバチチチッ"──!!!




        「……グァッ…ッう!!」

        (……背中に、痛みが…!)



         「…ハァッ、ハッ…」

        (でも……。なんだろう。)



       (すっげー力がわいてくる…)



         ………"ガチャリ"…。



サーチが柄を握ると、アストラは目を見開きながら背筋に強烈な気配《オーラ》を感じ取っていた。




     ───"──"ゾクゥゥゥ"──"───



          「──!!」

         (この気配《オーラ》は…!)



          「まさか……」


       「……扱えるというのか。」

          (ありえない。)



        (話には聞いて

        いたが……

        ワタシ以外に

        他の星屑《せいせつ》の力を

        扱えるなんて……)



        (この子は、本当に──)



大きな瓦礫の上に仰向けになっていたアストラは、頭部から血を流しながら目の前の光景を見つめていた。



       「……ハァ……ゼェ……

        アンタ、いったよな……」



          ……ググッ……


         ……ググググ……。



表面が骨のような質感をした白い大剣を持ち上げようと、片腕が折れたまま左手で柄《つか》を掴むサーチ。



      「……何者にすらなれないって

       ……ハァ……ゲホッ…!」


         「……ヴゥ"……」



       「よせッ……!ッ…。

        オマエにアイツは──」



アストラが肘に力を入れようとするも、ワイバーンの機屑物《ガーベマジル》はサーチに攻撃を仕掛けようとしていた。


紺色の瞳で見つめる少年の先には、大きな「ワイバーン」の見た目をした機械生命体が迫ってきていた。



      『……グルルルルルッ……!』




     「……答えはまだわかんねぇけど」



    「何も"なかったオレを………ヒュー…」


       「育ててくれた……ハァ…

        おやっさんにィ"……!!」



           グググ……


     「"認められるためにィ"…

      ……ヴゥ"ァ"………ァ"ア"ッ!」



血で濡れた手で重たい大剣を持ち上げる少年は、目の前の怪物に向かって叫んでいた。



     「"オレはァ"ァ"ァ"ァ"──"!!!」




        ……ポタ…ポタタ。



         ググググッ………


        ──"ガチャリ"!!




 「"こんな"ところで死ね"ねェんだよッ"!!!!!」




血で濡れた手で大剣を握りしめたサーチは、全身が白い魔力によって覆われていた。

そして、目の前のワイバーンに向かって叫ぶと、ワイバーンは口を大きく開きながら迫り来る。



     『"ギャォォォォオォッ"──!!!』



       ───"ガバァッ"───!!!



サーチの元へと迫り来る中──

サーチはただ一点を見つめ、怒りに燃えるその瞳にはワイバーンの姿が映っていた。



          「…………」



        ……グググゥッ……!!



ワイバーンの鋭い牙が迫り届きそうになった時、サーチはワイバーンの口に向かって水平に大剣を振り切った。




     ───"ザン───ッ"───!!!



        ……ゴドッ…ガランッ…



大剣がサーチの手から地面へ落ちる中──


周囲に機械が壊れる音が鳴り響くと、巨大なワイバーンの機屑物《ガーベマジル》の体が上下半分に切断されていた。

そして、サーチが膝を着くと同時に、機屑物《ガーベマジル》の上半部が地面へとずり落ちていった。




       ……バチ……バチチチ……


      ───"ズシャァァァァァン"。



       「……ゼェ……ハァ……」



     「……まだ…おやっさん…を……」


              ──ドサッ。



そして、その場に倒れるサーチの姿を、アストラは驚いた表情で見つめていた。



          「………。」

        (この子は、本当に……)



─────────────────────────

─────────────────────────



サーチが目を覚ますと、隣には瓦礫の上に座るアストラの姿があった。

周囲はまだ夕暮れで、大きな物音が鳴り響く中──

サーチはアストラに問いかける。



          「……ッ…!!」



      「まだ起きないほうがいい。」


       「辺りの機屑物《ガーベマジル》は

        ワタシが倒しておいた。」


        「あの少女も無事だ。」



          「よかった…」


         「──そうだ!」


      「……おやっさんは…!

       おやっさんはどこなんだよ!?

       ……ッ…!」



サーチの質問にアストラは淡々と答える。



       「……ツベチカは死んだ。」



           「は?」



    「…まだわかんねぇ…ッ…だろうが!」

       「ちゃんと探したのかよ!!」



   「彼の片足が向こうの瓦礫に埋まっている。」


   「ワタシが見つけた時──

    そこに、あの巨大な機屑物《ガーベマジル》によって

    その地もろとも踏み潰されたのを見た。」



           スッ──

           


        「なんだよ…あれ……」



アストラの視線の先を見たサーチは、踏み潰されて地平線となった街と、そのまま真っ直ぐに進む巨大な「カメ」の機屑物《ガーベマジル》の姿を視界に捉えていた。

その大きさは500メートルを優《ゆう》に超えており、山々さえ潰す勢いで『ルインルーナ王国』を目指して歩いていた。



    「あれも……同じ機屑物《ガーベマジル》、なのかよ…」



          「そうだ。」


      「ツベチカはヤツに殺された。」



        「……アイツが……

         おやっさんを……」



唇を噛み締めるサーチは拳を力強く握りしめると、巨大な機屑物を見つめていた。



       「"ぶっ殺してやるッ"!!」


           ガバッ──


      「まってろ…!ハァ、今すぐ

       オレがッ…────」


           ──ドサッ…



立ち上がろうとした体はよろけ、地面に腕を着くサーチのまえにアストラは立ちはだかると、夕陽に照らされながらサーチに告げる。



       「その体では無理だ。

        それに、今のオマエに

        アレは倒せない。」



       「"なんだと"…ォ……!」



         「選べ──少年。」



   「力を持たない者は、何者にすらなれない。」



       「だが、選ぶのは自由だ。」



       「キミ自身が選択しろ。」




          「オレが……」



サーチはツベチカとの記憶を思い返していた。



➖───────────────────────



         ──"カァァァン"!


         ──"カァァァン"!



熱が籠る火事場にて、ツベチカはサーチに語る。



       『知ってるか、サーチィ』


     『800年前の、

      伝説の技巧技師たちはなぁ〜

      機屑物《ガーベマジル》に対抗するだけじゃねぇ。』


    『特攻するための武具を作ったんだぜぇ?』



          「とっこう?」


      『極《きわめ》て有効な打撃を

       与えることが出来る武具だな!』



        「そんなのがあんのか!」



        『ああ、その名は──


          ──"星屑《せいせつ》"──


         って呼ばれてんだ。』




          「せいせつ……」


      「オレもいつか作ってみてぇ!!」



     『気持ちは分かるが〜……

      それは、無理かもしんねぇなぁ。』



口元に手袋を嵌めた指を当てながら呟くツベチカ。



        「え〜〜なんで〜?」



      『今じゃあもう……

       作れなくなっちまったのさ。』



     「え?技巧技師はたくさんいるだろ?

      なんで作れなくなっちゃったんだよ」



         『"素材"がねぇのさ』


   『800年前に、空から降り注いだとされる』



        『──『星屑《ホシクズ》』がな。』




       「じゃあさ!じゃあさ!」



           『ん?』



ツベチカがサーチの顔を見ると、満面の笑みで答えていた。



        「いつかオレが──」



────────────────────────➖



         「──オレが……」



         「見つけてやる。」



サーチが小さな声で呟くと、アストラは立ちあがろうとするサーチを見つめる。



       「この世界のどっかにある

        ホシクズを探して───」



          「オレが…」



立ち上がったサーチは、アストラと向き合うと力強い声で宣言していた。




   「"星屑《せいせつ》の技巧技師《きこうぎし》になってやるッ"!!!」




アストラが見つめる先には、涙の跡が夕陽に照らされ、決意に満ちた表情をしたサーチがいた。



          「………。」


     (似てますよ、あなたに。

      ツベチカさん、この子の道は……)



         (ワタシが必ず。)



しばらくして、アストラはサーチに声をかける。




    「力を持たない者は生きてはいけない。」


         「ワタシはキミを

          彼から頼まれた。」


       「キミの故郷は半壊し

        今や育ての親も失った。」


     「ワタシがキミの面倒を見てやる。

      今日からキミは、ワタシの弟子だ。」




      「オレが……アンタの弟子に?」



           「ああ。」


          「キミは弱い」


       「今のままでは────

        その辺の機屑物《ガーベマジル》にも

        やられてしまうだろう。」




         「……オレは弱い…」


           (そうだ。)


       (アイツをぶっ壊すためには

        ──力がいる!)



      「オレは、力が欲しい……

       おやっさんの仇を取るために」



        (だから、おやっさん。)


       (待っててくれよ。

        必ず、ホシクズを

        見つけ出してやるッ!!)



拳を握るサーチに、アストラは力強く言葉を放った。




       「そして……いつか──

        あの機屑物《ガーベマジル》をも倒せる力を

        手に入れてみせろ!!」



        「──"おうッ"!!」



2人が見つめる先には、空高く聳《そび》え立つ巨大な機屑物《ガーベマジル》が地平線の彼方へ歩き続けていた。




     この後は欠片2へと繋がります。

    [次へ]を押されると

     他の分岐エピソードへと移行します。


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