賜物
「そこで俺は言ってやったんですよ! 安心しろ、ここから先は俺に任せなってね!」
「そんなこと、言ってましたっけ……?」
「あらあら、そうしたら全部マスキュラーさんのおかげなんですねぇ」
「まさにその通り! シズカさん、おかわり!」
「はいはい。もう、買ってきたパンで足りるかしら……?」
全身をズタボロにしたグレンとナージャを抱え、俺は空を駆けながらグレン家へと帰宅した。
速攻での帰還になったが、シズカさんは変わらずにこにことした態度で俺達のことを出迎えてくれる。さすがシズカママ。
そこから少し真面目に俺が目を離した隙にグレンがボコられたことを話しても、シズカさんは特に俺を叱ったりすることもなく全てを受け入れてくれた。
やはりママ力は全てを解決する……ッ!
「ふぅ、腹いっぱいだ……」
全力フルスロットルでシータ村まで戻ってきたエネルギーがしっかりとチャージできたところで、俺は早速本題に入ることにした。
シズカママと、その旦那さん(名前は忘れた)に直角に頭を下げながら、
「グレンのこと、俺に預からせてくれませんか?」
と告げる。
――今回のグレンがボコられたのは、間違いなく俺の不手際だ。
グレンは間違いなく、魔王軍に狙われているところとなっている。
おそらくなんらかの形で、彼が未来の勇者であることを既に魔王に知られている、と考えた方が無難だろう。
襲撃を乗り越えたことを知られれば、彼はまた狙われることになるのは間違いない。
今回来た魔物達はそこまで強い魔物じゃないからよかったが……下手をすれば今度はジャビエルクラスの化け物が来てもおかしくない。
「グレンには才能がある。そしてその才能故に、彼は現在魔物達に狙われています。今回はなんとか間に合ったから良かったですが……多分二度あることは三度あるって考えた方が無難でしょう」
化け物揃いの魔王軍に狙われてもグレンが死なないようにするには、やはり直接目の届くところにいてもらうのが一番だ。
グレン単体じゃないと上手いこと成長しないかもとか、俺がゲーム知識あるのさすがに隠しきれなくなりそうとか懸念もあるが、いろいろと考えた結果一緒に行動するのが一番良いだろうという結論になったのだ。
「心配する気持ちはわかります。俺がこいつのことをいっぱしの男にしてきますんで安心して下さい。帰ってきたらムキムキになっててびっくりすると思いますよ」
「いいですよ、グレンのこと、よろしくお願い致します」
「……ははっ、即決っすか。さすがシズカさんだ」
彼女はただ優しいママではなく毅然とした母としての側面も持っている。
いざという時にはグレンのケツを叩き、一部のバッドエンドルートでは自分の命すらも省みずにグレンに勝つことを求めることもある。
その強さに惚れたプレイヤーは多い、かくいう俺もその一人だ。
シズカさんのママ力が留まるところをしらない。
「そこで一つ、お願いがあるんですが……」
そんなママとして大変魅力的な彼女にやってもらうのは大変心苦しいのだが、俺は彼女に一芝居打ってもらうことにした。
ナージャの両親に関しても、俺から直接言うより彼女に手を回してもらった方が上手いこと運ぶだろう。
俺の提案を聞いたシズカママはジッとこちらを見てから、こくりと頷いた。
なるほど、こういう人が勇者の母になれるんだなと改めて思った。
グレン、ひょっとしたらお前が勇者になるのは、彼女の教育の賜物なのかもしれないぜ。




