吉田屋
前の夢がそんなだったから、口直しに紅茶入りのシフォンケーキみたいのが出てきたんだろう。
吉田屋だと聞いてきた。以前にも使った処だから近くまで行けば当たりがつくだろうと、そこの横丁に入ったのだが、当たりの感じがするする抜けていく。
根が方向音痴なのを忘れ、以前で当たりを付けるからこうなるのだ。
そんなブツブツを繰り返してるのが察せられたか、吉田屋の人の方で零してるたわたしを見つけ招き入れて呉れる。
元の屋は乾物屋だった。
それの二間の戸口を真ん中に分けて、そちらの一方を今夜の会場に充ててるらしい。半分で狭くなったが、そこは上手に間口をコの字に仕切って、先ほどの人がひとりで両方の仕込みをしている。
「面の感じ、変わったからね」と、手を休ませず迷ってたわたしのフォローまでして呉れる。
さすがに商売人だ。夜っぴて待ってるとだんだんにメンバーが集まってくる。大きなのに小さなの各々の好みに合わせた大小のギターが持ち込まれる。各々の好みだから、ギターが身体に合ってるとは限らない。小人がコントラバスのように縦弾きの大きなのを持ち込むことだってあり得る。それでも夜明け前には片が付き、一曲弾いて皆んなすたこら帰っていく。
「あなたは帰らなくていいの」と、始まる前から仕舞いになっても居続けてるわたしに聞いてくる。今日は休みを取ってるんですと、既に今朝に変わった今日今日を使って説明する。
「あらっ、いいご身分ねぇ」と、少し小馬鹿にした声が今日の仕込みに振り替わったその女の背中から聞こえる。
まだまだ昨晩を一人で続けてなさいと聞こえる。
それを潮にわたしも引き上げる。久しぶりに朝帰りの匂いがする。それでも今日は休みなのだと自覚し、嬉しかった。




