寄生する神
亡くなった妻の両親だった。
ふたり揃って、これから亡くなることの片鱗など片時も見せないような溌剌さで何事か告げようとしていた。妻は先っきまでわたしの傍らにいたようなのに、ふたりの告げる何事かを知ってるらしく、消えている。
それでもふたりはそんなことはお構いなしに、わたしらに告げる。
わたしは、妻の消えたのを知ってるふたりに勘づかれないよう消えた妻を隠しながら、二人分の耳でふたりが告げる何事かを聞いた。
養子をとるのだという。
長女の妻も妻の代わりに結婚してから隣りに住むようになった妹のやっ子ちゃんも苗字は男の方に移ってしまったから、元の安部を継いでくれるのがいなくなったので養子をもらい繋げていくのだという。
男か女のどちらか一人を貰うのでなく、夫婦養子を貰うのだという。
繋げていくための養子だから二人の子がはじめっから居てもいいのだが、はじめっから居るとわたしら二人のところにいきなり3人4人の他人が増えて、なんだか面食らってしまうから、養子になった女の胎から次の次の安部が現れてくれる方が滑らかだなと、それを頭に安部と描かれた赤子をあやすように云うから、ざわざわが起きる。
実はもう入ってるのだ・・・
と、お義父さんがわたしに耳打ちする。それは確からしい。養子にしたあとでそれがないとなれば、ふたたび同じことで骨を折らねばならないからなと、最後を繋いだ。
骨を折るの声までは聞きたくなかったのか、二人の娘は消えている。わたしは、なんだか自分が夫婦養子となる二人とその女の胎児の側にいるような気がして、消えた実の娘をどかし、そこに夫婦養子の二人を置いて、系図を伸ばすように新たな一本線を引いて、のっぺらぼうの顔に安部と描かれた胎児を記す。
顔が見えないからか、安部とだけののっぺらぼうその子の丸ぁるい顔に実生が浮かんだ。
何の植物のどの種がどうしたというでなく、すべての植物の発芽したばかりの種を指す実生である。浮かんだら、あたり一面、ひとは消えて、緑色した新芽ばかりの一群となった。
むろん、わたしも緑の新芽に変わっている。
ときは春だから、新芽も出れば、小鹿も生まれる。キラキラした瞳を持つ小鹿の群が、乳の香のする実生の群に降り立ってくる。
二人娘の長女を貰い娘を親不孝にさせたわたしなぞ、すぐにそれを見つけた小鹿に喰まれてしまんだろう。そして、きっと、夫婦養子から生まれたその子は、毎年冬に表皮を変え3千年の生死を繰り返すセコイアのように、ひとつ処に命を託し続けるのだろう。
寄生する神を常に内包するように。




