表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/259

前方後円の夜

 ひさしぶりのジョギングだった。実の日常(じつのにちじょう)でもここ10年ジョギングはしたことないから、夢の中でも久しぶりの感じがした。歩くよりは早いが歩くのと同じに同じペースでひたひたと進んでいく。

 真夜中なのか真っ暗闇だった。

 夜のジョギングのように瞬く(またたく)灯りの中に生活のひだが続いている処でなく、平たくなった暗闇だけが層をなして次々に目の前を立ちんぼしてくる真っ暗闇だった。

 

 その層をかいくぐるように真っ直ぐに進んで行くと、そこから急に(ふち)に変わっていって、120度右にそれなければいけなくなっているのが分かった。分かっていたから、走りを止めずに沿って続けることができる。

 分かっていくには灯りは必要だ。実の明るく照らすものでなくても、先の見える灯りが。

 灯りは、自分さえ見えてればいいのだから、本物でなくても、いい。300メートル上空まで俯瞰して、そこからいままでの足取りとこれからの足取りをちまちま貯金するように緑色した蛍光塗料でなぞっていく。

 

 120度右(120どみぎ)にそれた辺りから、経路は丸くなる。

 (ふち)だと思っていた丸みは案外に大きく(あんがいにおおきく)、直線を凌いだ円周(しのいだえんしゅう)で、倍近くを丸く進んでいったら、もう一つの120度右が現れ、直線へと続き、方であるそれ(ほうであるそれ)を描くように、80度した角(80どしたかど)を二回繰り返したあと、始めた地点に戻っていく。

 

 前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)で最大の仁徳(にんとく)天皇陵(てんのうりょう)だった。

 そこのいまは井戸水を張って、濠になった底を延々と進んでいる。3周までも回ったのだから、形も大きさも仁徳天皇陵なのは間違いない。水を張った濠の底を走ったことはないけれど、この形と大きさなのは仁徳天皇陵だけだから、間違いない。


 これだけ広いのを3周も回ったからか、中が開ける(なかがひらける)

 中といっても前方後円墳の中ではないらしい。街中の、店ではないが不特定多数が深夜に関わらず大勢が屯する()()()()()()()()だ。

 真っ暗闇と正反対の白熱灯(はくねつとう)煌々(こうこう)と差している。これだけ(まばゆ)いのに熱さの方はぜんぜんだから、LEDを使ってなのか、此方までには皮膚感覚(ひふかんかく)は派生して呉れないのかのどちらかだ。

 眩いのには理由(わけ)がある。無駄に此処だけ明るくしてるわけでない。

 作業に集中しすぎて男女(なんにょ)老若(ろうにゃく)も見分けがつかくなったような人たちが、懸命に作業している。やってるのは皆んな一緒だ。少し厚みのある10センチ幅のテープから予め(あらかじめ)点線の施されてる前方後円(ぜんぽうこうえん)(ほう)(えん)を傷つけないようにくり抜く作業をひたすら延々と続けているのだ。


 楽しみでない。しかし、給金をもらってするようなワークでもない。文句をいわず、ただただ延々ひたすらやっている。こんな真っ白白(まっしろしろ)に明るくされては終わりは来ないだろうと、そうそうわたしは此処を切り上げる。

 おなじ前方後円なら、仁徳天皇陵の濠を走ってる方がましだ。真っ暗闇だから、いずれそちらは終わりがあると、わたしはまだ夜の方についていく。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ