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3月26日でなくて3月27日の方だった
早起きは慣れてるはずなのに、暦の上でも春が始まったからか、まだ日中の9時が始まったばかりに寝落ちした。
瞬きの一瞬だが、海が現れた。
わたしが住んでる北の海でなく、朧が温かなまま水を湛えたような南国の海だ。その海を見つめるオッサンがふたり。海を見てるというより、そのオッサンを見ていた。
兵隊ではないが、沖縄まで国防は充満してきたから、エイサーの顔した彼もカーキ色の上下を着させら、あたまには下士官帽を被っている。
その芯のない下士官帽に、たった今ふたつ折りした紙を汗止めように中に縁どりしたビン皮に入れる。3月26日と3月27日の両方の日付を描いて、多分どちらか一方が自分たちの死んでしまう日だから、骸になって分からなくなる前に記しておいたのだという。
どっちかだろうけど、どっちかまでは決められないからな
あーそうか、そのどっちかかと、となりの相棒が2Bの鉛筆のどちらも濃く映ってる3月26日と3月27日をしみじみ眺めたのを確かめてからビン皮に仕舞ったのだ。
相棒は確かめたけど、そのどっちかかまでを零したのはわたしの口だったような気がする。
1945年3月27日はアメリカ軍が渡嘉敷島に上陸した日である。




